グレイッシュなセグロカモメがグレイッシュなエゾイワナをつつく傍らで、グレイッシュなワイマラナー犬のお兄さんに真っ黒なカラスのモノマネを見られたはなし
アオサギ、カモメ、カモが居る散歩道の川を通り過ぎたとき。
普段と違う光景が目に留まった。
川の中のブロックに佇み、水中をじっと見つめる姿しか見たことのなかったセグロカモメ が、びっくりするほど大きな魚と対峙しているではないか。
一人なのに「おぉぉぉぉー!」と声を上げてしまった。
最近、何処其処構わず声を上げたり独り言を言ってしまうのは、なんなのだろうか。
歳をとって恥ずかしさのハードルみたいなものが下がってしまったせいなのか。
まぁ、いい。感情には素直でいたい。
セグロカモメは、全長60cm、翼を広げると140cmにもなる大型のカモメである。
そう考えるとこの魚がかなり大きいことがわかるだろう。
調べると、これはエゾイワナ のようだ。
エゾイワナはアメマスのことだが、海ではなく河川残留型をそう呼ぶらしい。
まだ釣れたばかりなのか、グレイッシュにきれいな斑点がついた完全体のエゾイワナを、これまたグレイッシュなセグロカモメがつつき始めたところだった。
川と魚とカモメ。
なんともダイナミックで涼しげな風景だこと。
西日で背中と脳天が焼けるように暑かったが、なかなか見れるものではないので、しばし立ち止まり眺めていた。
エラの中に嘴を差し込み、ツンツンツンツンッしているがなかなかはかどらない。
大型のカモメといえば「海のギャング」に例えられるくらいだから、もっとワイルドに足とか嘴使って噛みちぎって食べるのかと思いきや、とてもお上品なお作法でお食事しているのが印象的だった。
この後、暑さに耐えられず完食まで見届けられなかったが、果たしてあんな大きなエゾイワナを食べられたのだろうか。
いいもの見れた、と自宅に帰り、エアコンガンガンの部屋でグーグー寝た。
〈追伸〉
カッコいいグレイッシュのワイマラナー犬を散歩中の、20年前のキムタクみたいなイケメンのお兄さんへ。
違うんです!誤解だったんです!
私だって普段はちゃんと人間のメスとして生活してるんです!
あの時はたまたま…本当にたまたまカラスとお喋りしていただけなんです!
川の柵に留まって口を開けているカラスが近距離でこっちを見ていたから。
何か用事かと思って、「なにしてるの?暑いね。一人なの?」って日本語で聞いたけど返事がなくて。
それなら、と「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ⤴!」「あ゙ぁぁわんっ」知ってる限りのカラス語でコミュニケーションを取ろうとしているところを、お兄さんはたまたま…たまったま!通り過ぎられただけなんです。
きっとビックリしましたよね。
あ…知らないふりしなきゃ…やばい奴だ…と思いましたよね。
まさかそこに、キムタクみたいにカッコいい人がいるなんて知らずに、私としたことが恥ずかしい。
誰にも言わなかったけど、私だってあんなところ見られて心にダメージを負いました。
次からは控えめに話しかけたいと思います。
またワイマラナーのお兄さんに会えますように。
〈追伸の追伸〉
こちらの記事は去年書いたものになるんですが、その後一度もセグロカモメがエゾイワナをつついているところにも、キムタク風のお兄さんがワイマラナーをお散歩しているところにも出くわすことはありませんでした。
なんのはなしですか
すべては真夏の白昼夢で、セグロカモメもエゾイワナもワイマラナーもキムタクも、実は何も見ていなかったのかもしれないはなし…
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