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むにみずべ 海外編03 パリセーヌ川のバトームーシュ

五輪に向け沸き立つ、フランスの首都パリ。
過去何度も世界史の舞台となったこの街の、
セーヌ川クルーズもまた、歴史そのものです。
こちら、知っていますか?

パリシイ族の住むシテ島だから、
パリのシティ

有名ですが、パリはセーヌ川の中洲、シテ島から始まった街です。
なぜここから始まったのか。

セーヌ川の中洲 シテ島

古代ローマが攻めて来た時、抵抗したパリシイ族が住んでいた場所でした。守りやすく水も手に入りますからね。
その後、パリ・・シイ族の住む場所なので、パリと呼ばれます。

さらにそのシテ島は、狭い島の中で肩身寄せ合って住む、まさに都市ということで、
地名のシテ(cité)が都市という意味の単語になり、英語のシティ(city)にもなりました。
これぞ都市オブ都市。

島の先っちょは憩いの場。狭いシテ島ですからね、皆肩寄せ合ってます。

ともかく、そのようにしてできたパリは、当然セーヌ川沿いこそ最重要な場所であり続け、果てしなく積み重なる歴史が今もそこに建ち並びます。

その中でも誰もが知るのはエッフェル塔でしょう。


万博を飾る 鉄の魔術師

パリオリンピック仕様のエッフェル塔

大阪万博に向け様々なニュースが飛び交っていますが、
パリは過去6回もの万博を開催し、その度に都市を作り上げてきました。

中でも有名どころは、エッフェル塔。
1889年、フランス革命から100年後という節目の万博で目玉となる国家プロジェクトを、
フランスがアメリカに贈った自由の女神像や、数ある鉄橋を手掛けていた鉄の魔術師エッフェルさんが、半ば自腹を切って完成させた、世界で最も有名な建物の一つです。

対岸からみたエッフェル塔
シャンドマルス公園の中央にあり、
周辺に高い建物がない

このエッフェル塔が立つシャンドマルス公園は、「軍神マルスの野」の意味です。
ちなみに、素敵過ぎて歌にもなっちゃうシャンゼリゼ通りのシャン(Champs)も同じ野の意味のフランス語。

凱旋門の上から
お〜シャンゼリゼ〜お〜シャンゼリゼ〜
凱旋門はカッコ良すぎ
フランスは国旗掲げがち

名前の通り、シャンドマルスは練兵場として使われてきましたが、都心から少し西にあるその広大な広場は、万博会場として5回に渡り使用されてきました。

そしてこのちょっとした距離のある会場と都心とを繋いだのは何か。
もちろん、船です。


蒸気全盛の時代を彩るバトームーシュ

尾瀬の帰りに見かけた蒸気機関車D51

初めてシャンドマルスが会場となった、2回目のパリ万博が開催されたのは、1867年。
日本は江戸時代が終わった年ですね。

さてこの時代、
世界を席巻していたのは、蒸気の力
日本は泰平の眠りを黒い蒸気船に叩き起こされ、イギリスに始まる蒸気機関車は欧州中を駆け巡り、2年後にはアメリカ大陸横断鉄道が開通しようという時期です。
そんなこの万博で導入されたのが、会場とパリ市内を結んだ蒸気船バトームーシュでした。

実は蒸気を船に積んだのはフランスが始まり。パリに先立ちフランスのリヨンでは既に蒸気船による水上バスが実用化されており、パリの船もリヨンで造られました。

バトームーシュ(Bateaux Mouches)
バトーは船、ムーシュはハエ。
船が造られたリヨンのムーシュ地区は都心から少し外れた川沿いで、きっと造船所ができる前は、ハエがいっぱい居たのかも。

セーヌ川は当時川沿いに人が住み、渡し舟が行き交う場所でしたが、このような蒸気による水上交通が確立されたのは、この万博がきっかけでした。

ちなみに、3回目~6回目に開かれた万博は、いずれもセーヌ川沿いに各国パビリオンを並べるようになります。そして当然のように船による会場間の行き来ができました。(最高すぎる…)

Pavilions of Foreign Nations on the Banks of the Seine at the Exposition Universelle 1900,
Georges Felix Garen

エッフェル塔を臨んで、ソ連館とドイツ館が双璧のように聳え立ち、数年後に迫った第二次世界大戦前夜の不穏な香りが漂う1937年のパリ万博でも、川沿いにはパビリオンが並び、船が導入されています。

1937年パリ万博の会場鳥観図
セーヌ川沿いに各国パビリオンが並び船でつながっています

このように万博を契機にセーヌ川に根付いたバトームーシュは一度消えるも、1950年代に過去万博で使われた蒸気船を使い、名前そのままバトームーシュとして復活を遂げました。


いざ、セーヌ川クルーズへ

それではクルーズスタートです。

船がいっぱいの川は見ているだけで幸せです

「パリのセーヌ河岸」として川の周辺が丸ごと世界遺産になっているこの場所。シテ島から始まり、積み重ねられた世界史そのものの風景は、唯一無二の景観です。

シテ島から引っ越してきた後、
あのヴェルサイユ宮殿に引っ越すまでの約500年近く国王が住んだルーブル宮殿。
今はモナリザが住む美術館。
空腹時ケーキを食べれば良いと思っていた
マリーアントワネットが収監された元牢獄、
コンシュルジュリー
1900年万博に合わせてできたオルセー駅。巨大なホームの空間そのままに、今ではモネ、セザンヌ、ドガ、印象派の集まる美術館。印象派の描く水辺、最高。
ナポレオンが皇帝に即位する
戴冠式を行ったノートルダム大聖堂
レミゼラブルを書いた
ヴィクトルユゴーも会員だったフランス学士院
そして言わずもがなのエッフェル塔

けれども。
この止まらない世界史絵巻に負けず劣らず、何より素敵な景観は、このセーヌ川を使いこなす、パリジャン、パリジェンヌ達。

橋の向こうのパリジャン
階段下のパリジェンヌ
みんなの見つめるセーヌ川

最高です。


パリオリンピック開会式

船着場横にカウントダウンモニュメント
開催まで寸分の誤差も許されませんからね、
時計はオメガ製です

さて、あと1か月ほどに迫ったパリオリンピック。その開会式がセーヌ川で行われるというニュースは、日本でも大々的に報道されていると思います。

なんで東京オリンピックの時にそのアイデアが出せなかったのか。
演出統括でもなんでもないですが、水辺好きとして吹聴しているのに、その発想を出せなかったことがとても悔しかったのを覚えています。

けれどもパリに来てみると、このセーヌ川は、これまでずっとそうした世界の祭典で晴れ舞台となってきたことが分かります。

史上初の川を使った開会式。水質やら天候やら費用やら。ネガティブな発言も見られますが、世界を揺るがす大成功を収め、全世界の水辺がより面白くなっていくことを、心から願っています。

以上、パリのバトームーシュでした。

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