むにみずべ 海外編04 パリのサンマルタン運河クルーズ
怒涛のフランス編クライマックス。舞台はセーヌ川から分かれるこの運河。時空を超えたパリの裏側への船旅です。これ知っていますか?
どんな鼻をもひん曲げた 鼻の都
パリは汚かったというのは、時々聞くことがあるかも知れません。それが話題になるのも、今や全世界から憧れの眼差しを向けられる華の都だからこそです。
とはいえ、19世紀前半までのパリは、本当に汚かったようです。少しだけその片鱗をご紹介します。こんなパリは嫌だ、どんなパリ?
窓から汚物を捨てる、時々通行人にも当たる
(え、どういうこと…)市民の反対に遭い、公衆トイレの設置を断念。結果引き続き道端に汚物が散乱する
(え、どういうこと…)散乱する汚物で服の裾が汚れないようにハイヒールが登場
(改めてどういうこと…)
ちなみに、そんな出自のハイヒールも、生涯2度しかお風呂に入らなかったという逸話のある、
太陽王ルイ14世が履いたことで、高身長コーデとして貴族の間で大流行、ルイヒールとも呼ばれました。
さて、パリが鼻の都になってしまった主たる要因は、水不足です。
水探しのパリジャン
セーヌ川はゆったりと流れる美しい川ですが、だからこそ、100万を越える人々がその水を飲み、かつそこに下水を流せば、無論コレラの流行は止まりませんでした。
かくしてパリジャンのあくなき水探しが始まります。
過去何代もの王たちがパリの北や南の水源から水を引いては足らず、セーヌ川から引いても足らず、
遂にあのナポレオンにより、貨物輸送を兼ねた北方のウルク川とセーヌ川をつなぐ運河の開削が行われました。
水の確保と貨物輸送のため、サンマルタン運河がここに誕生した訳です。
今では2回目のパリにお勧めと称される裏のパリを感じられるサンマルタン運河クルーズ、ムニは堂々のパリ1回目ですが、水辺を愛するものとして、ここを素通りなんてできません。
ルーブル美術館も、エッフェル塔も入場を諦め、カフェでの食事も、パッサージュでのお買い物にも目もくれず、
一路目指すは出発の地、オルセー美術館前です。
クルーズスタート
では乗り込んで行きましょう。
しばらくして見えてきたのは、サンマルタン運河の入り口。さぁここからはまだ見ぬパリの始まりです。
初っ端に船のエレベーター、閘門があります。
最初は屋上テラスに座っていましたが、閘門の面白さをもっと間近で見たいなぁと思っていたところ、突然ムニフレンドがこっち来て、と手をこまねいています。
なにごとかと付いていくと、向かう先は、船1階の先端。最高の特等席です。
(でも入れる人数は限りがありますね)
特等席で閘門を抜けると。
広がっていたのはボートに住むパリジャン、ペニッシュの楽園。美しくも騒がしいセーヌ川から一転、とてものんびりと思い思いの時間を過ごしています。住みた過ぎる…
監獄と軍需工場に挟まれる、魅惑のまったりマリーナ
ここはアルスナル港という、内陸ながらかつてフランス第二の貨物取扱量を誇った港ですが、今ではまったりのんびりマリーナです。
アルスナルの名は、近くにあった軍需工場(アルスナル)から来ています。
アルスナル、アースナル、アーセナル…
実はサッカーの世界的強豪、冨安選手の活躍するイギリスのアーセナルは、元は軍需工場の労働者チームだったわけです。
はてさて、アルスナル港の少し先に目をやると一本の塔が聳え立ちます。
かのフランス革命の最初の事件、バスティーユ監獄襲撃のあったバスティーユ広場です。
(ちなみに国王による圧政の象徴ではあったものの、襲撃時には政治犯はおらず、7名の素行の悪いご老人がいらしただけでした。)
その広場の前あたり、水路は行き止まりのようにも見えますが、ここから本当のサンマルタン運河クルーズが始まります。
もはやタイムトンネル
サンマルタン運河は、元々オープンな運河だったものが、地上に道路を作るべく蓋をされました。そこはまだ電力やら設備が現代ほど発達していない時代。換気や照明代わりに蓋には穴が開けられました。
これがまた、とても幻想的で、さながらドラえもんのタイムトンネルを通っているかのような気持ちになります。
少し前にトンネルの中を船で行けるのは唯一無二だっ!と琵琶湖疏水船の記事で豪語したあと、このサンマルタン運河クルーズを見つけた時はバツが悪いような気持ちになりましたが、
サンマルタン運河はあくまで蓋をしただけですのでね。良しとしましょう。
さて、時空を超えた先には、幾重にも連なる閘門が立ちはだかります。
まさかの9連閘門
このクルーズ、本当に何度も閘門を通り抜けます。しかも一つ3mほどの高低差をつなぐので、日本では安全面などから禁止されそうなほど間近で見る滝のような閘門は、このクルーズの大きな見せ場です。
(それも9個もあるとなると、さすがに飽きてくるのですが…)
そんな閘門の合間には、パリの下町が垣間見えます。運河沿いにはセーヌ川に勝るとも劣らない大量のパリジャンが発生し、ぬくぬくとくつろいでいます。
そしていよいよ最後の閘門を抜けると、
終着、ラヴィレット貯水池です。
これよ、これぞ水辺と一体の広場
ようやく辿り着いたラヴィレット貯水池には、非常に素敵な水辺がありました。
このボートは水上映画館に客席になることも…
この取り組みはぜひ日本でもやりたいですね。
こんな素敵な水辺にいるので、
調子に乗ってパリジャン気分を味わうことにしました。
運河に足を投げ出し本場のピクニック
セーヌ川にも、サンマルタン運河にも、そこかしこにいるピクニッカーに憧れていたところ、フランス住まいのムニフレンドが突如、昼はガレットをテイクアウトしようと言い出しました。
え、まさか、、それって…
はい。そうなんです。この度、皆さんが羨望の眼差しを向けるパリのピクニックを体験してしまいました。
なんでも、ピクニックの語源はフランス語、pique-niqueから来ていました。やはりフランス人の遺伝子には外で食べることが深く刻まれているわけです。
そしてこのガレットが上手いのなんの。りんごと胡桃とブルーチーズと蜂蜜。その並びだけでいかに美味いか、想像に難くはないでしょう。
ちなみに、あまり交通の便が良くないこのラヴィレット公園。帰りのおすすめは、Velib’です。
今では日本でも一般的になった乗り捨て自由の自転車ネットワーク。ここパリは2007年からある歴史あるサービスです。市内の自転車道も整備され、とても快適で便利で、さらに己のパリジャンに磨きをかけることができます。
以上、サンマルタン運河クルーズでした。
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