はじまりは"Too nervous to sleep”
思えば、あの夜には彼は私に目星をつけていたのかもしれない。12階の窓からは目の前の太い道路とビルに阻まれてその先の海は見えなかったけれど、確かに空とその青に続く水辺の気配は感じられた。
友人も家族もみんな離れた留学先で、試験の結果を待ちながら眠れずに窓の外を見ていた。代わり映えのない市中の景色をインスタグラムに収めて、「Too nervous to sleep」(緊張しすぎて眠れない)と言葉を添えたのだった。
彼から連絡が来た。どうしてnervous なの?
その会話のまま、ゆっくりと浸っていった。恋に堕ちたことを私はその後に自覚することになるけれど、完全に溺れるまで気づかなかった。恋は落とし穴みたいに華やかに落としてはくれずに、ただひたひたと押し寄せる静かな波のようだった。
***
私が自分でもはっきりと意識して創作を始めたのは、めちゃくちゃに寂しかったから。
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