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タナカダイスケ

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オルカパブリッシングの写真、イラスト担当。
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記事一覧

KDPで電子書籍を作ってみよう

KDPで電子書籍を作ってみよう

 紙の本が好きだ。これはたぶん子どもの頃から触れる本は紙だったからであり、もしも接するのが羊皮紙の本だったら羊皮紙の本が好きで、紙の本には難癖をつけていたかもしれないし、竹簡の書物とともに育っていたら、読むのは竹簡でなければと紙の本の欠点をあげつらったかもしれない。それは刷り込みのようなものだ。紙の本の良い点をいくら上げようと、すべては相対的である。だからといって、紙の本が好きであるということに変

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おしいれのぼうけんの冒険 タナカダイスケ

おしいれのぼうけんの冒険 タナカダイスケ

 ぼくはこの文をきみたちに向けて書いています。「きみたち」とはだれか?それは
 ツメを切るとなんか感じがかわってイヤだからツメを切りたくないきみ
 首がチクチクするセーターをむりやり着せられてるきみ。
 はやくおふろに入りなさいといわれるきみ。
 夜、眠るとそのまま死んじゃうんじゃないかと眠るのがいやなきみ。
 そんなきみたちに、ぼくは書いています。
 ぼくはきみたちに、本をしょうかいしたいと思っ

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9年後のカンボジア旅行記 プノンペン前編スペシャルなスペシャルな。

9年後のカンボジア旅行記 プノンペン前編スペシャルなスペシャルな。

「ぜんぜんあっという間じゃないっすよ!」シェムリアップからプノンペンまでのバスによる移動、その6時間を見知らぬカンボジア人と隣り合わせで過ごした男、シュウはそう言った。それはそうだろう。単純に考えても6時間は長い。6時間バカ話をしてあっという間と感じられるのはバカだ。ダイスケと竹内。バカである。

 写真は途中休憩したところ。写っているバスがぼくらを乗せて走ったバス。見えにくいけど、登場口付近に足

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9年後のカンボジア旅行記 シェムリアップ後編  タナカダイスケ

9年後のカンボジア旅行記 シェムリアップ後編  タナカダイスケ

その朝は衝撃的な一言とともに始まった。

「遺跡とかもう飽きませんか?」

場所はカンボジアはシェムリアップ、アンコールをはじめとする遺跡の町である。

発言の主は竹内、そのカンボジア旅行の航空券を手配した男である。ぼくタナカダイスケとシュウハルヤマは耳を疑った。

「えっ?」

シェムリアップから遺跡を除いたら、何が残るだろうか。それは言い過ぎか。

時を戻そう。

話題も変わる。

三人組とい

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9年後のカンボジア旅行記 はるばる来たぜシェムリアップ前編 タナカダイスケ

9年後のカンボジア旅行記 はるばる来たぜシェムリアップ前編 タナカダイスケ

いまから遡ること9年前の5月、ぼくタナカダイスケと同人誌「無駄」のメンバーである竹内くん、シュウハヤルヤマの3人で旅行をした。行き先はカンボジア。その前年、竹内君とシュウはふたりでインド旅行に行っていた。格安航空券で行く青春的旅行である。1週間ほどの旅行のその珍道中の顛末は彼らの帰国後居酒屋で面白おかしく聞かされ、ぼくも「いいなあ」などと言ったのだろう。9年前だ、ぼくらも若かった。とはいえ、その時

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ひみつ

「誰にも言っちゃだめだからね」と彼女は言った。「二人だけのひみつだからね」
 わたしは頷いた。誓約書に署名するみたいに、確実に、丁寧に。誓いを立てる。「神に誓います」。実際はそんなことは口にしない。ただ、そういう思いを込めて頷く。すると彼女は微笑んだ。急に光が差したみたいな、何か祝福されたような、とても印象的な笑顔で。とてもきれいだった。いまでもその微笑みは瞼の裏に焼き付いている。彼女の微笑み。

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