『川柳EXPO 2025』2冊同時発売への思い
「投稿連作川柳アンソロジー誌『川柳EXPO 2025』のお知らせ」に書いた通り、今回、『川柳EXPO 2025』を2冊に分けます。
この「2冊に分ける」ということについて、少し書いてみようと思います。
1.なぜそう考えたのか?
『川柳EXPO』が52名1,040句、『川柳EXPO 2024』が68名1,360句となり、個人的には、川柳のアンソロジーとして順調に育ってきていることを率直に喜んでいます。
2024では、より多くの方にいろんな川柳作品があることを知ってほしいという思いから、初心者にも親しみやすいよう、様々な読み物のコーナーを増やしたり、文字ばかりにならないよう、公式キャラクターの「川ずきんちゃん」のイラストを入れてみたりと、いろいろ工夫をしてみました。
しかし、そのせいで、結果的に2024がそれなりの分厚さとなり、気軽に手にとっていただくには、やや威圧感のある(笑)佇まいになってしまいました。
(ポジティブに想像すると)このまま順調にいけば『川柳EXPO 2025』は、ちょっとした辞書のような存在感を放つことになるでしょう(文芸書と考えれば、硬派なイメージもあり、それはそれで、悪くないかもしれません)。
ただ、ふと、「あれ、それでいいんだっけ?」と思うのです。
自分がそうだったように、「へぇ、川柳って、サラリーマン川柳やシルバー川柳みたいなのばかりだと思ってたけど、いろんなタイプの川柳があるんだ。知らなかったなぁ」という方にこそ届いてほしいのが『川柳EXPO』で、そういう本(というか川柳との出会い)が少ないから自分で作った…というところから始まったはずです。
もちろん、川柳作家のみなさまに読んでいただく喜びはあります。内容が濃くなっていくことで、既に川柳を楽しまれている方々のご期待に応えられているとすれば、正直うれしいです。しかし、『川柳EXPO』は出来るだけ敷居の下い本でありたいと、個人的には思っています。
また、お金の話をすれば、これ以上のボリュームになると値上げしないと厳しくなってきますし、商業出版でもない文芸書1冊にお支払いいただく金額としては、かなりハードルの高い部類の本になってしまいます。
「それでも川柳の発展のためにやるんだよ!」というご意見もあるかと思いますが、全財産を投げ売ってまでやるほど、私は使命感の強い人間ではありません(笑)
また、「作家を絞るのはどうか」というご意見もありましたが、これも私が『川柳EXPO』でやりたいこととは異なります。
もちろん、ある程度のキャリアの方に絞れば、一定のクオリティが担保された川柳の本となるでしょう。特定の考え方に沿った編集をすれば、文学的で情感や詩情のあふれる川柳表現や、既存の表現を更新するような前衛的・実験的な川柳表現など、本のカラーをはっきりさせることも出来るでしょう。
しかし、どんな柳歴でも、どんな柳観でも掲載する「川柳のお祭り」みたいな本にしたかったわけで、その「なんでもあり」の川柳エネルギー(笑)こそが、自分が最も感じたいものなのだと、(三度目となる今でも)強く思っています。
投稿数が増えていく嬉しい現実と自分のやりたいことのバランスを考えた時、どちらか一方を犠牲にすることなく、両方を成立させる方法として、2冊に分ける、そして、2冊同時発売にする、というアイデアに繋がっていったわけです。
2.どう分けるのか?
さて、そうなると、この2冊、どう分けるかという話になります。
前述の通り、何となく柳観によって分けるなら、『川柳EXPO』である必要はありません。すでに世の中には、川柳の様々な結社誌、柳誌、同人誌があり、自分にあったところに参加・投句すれば良いだけです。
しかし、それは限られた川柳の世界の中での話で、実際は、それすら一般に知られておらず、その中で、様々な川柳作家が様々な川柳表現をされているのです。
なんか勿体ないですよね。
いろんな川柳が昔からあるのに、あまりよく知られていないって。
(昨日今日の私ですらそう思うわけですから、長年川柳をされている方々には、様々な思いがあることでしょう)
だから、それを外に向けて発信する、川柳=属性川柳という先入観を持たれている方、いろんな川柳表現を知らない方々に川柳を「再発見」してもらう…そのきっかけが、『川柳EXPO』であってほしいなぁと。
また、柳歴についても同様です。キャリアのある方々の作品には安定感があり、20句の連作・群作でもまとまった作品として楽しむことができます。
では、歴の浅い方は未熟な作品ばかりかと言われれば、そうでもないと思っています。
(もちろん、「川柳の歴史や先人・先輩たちの仕事を踏まえた上で」がベストだと思いますが、何も知らず最近たまたま川柳を始めた方が、偶然スゴい作品を生み出すこともあるでしょう)
川柳の世界に限らず、表現活動というものは、受け手側がどう受け取るか、それは本当に様々で、そこに作り手がとやかく言うのは傲慢というものだと思っています。
だから、2冊に分けるものの、どちらを手に取っていただいても、様々な川柳に触れられる編集にしたいと考えました。おそらく、これまでの『川柳EXPO』を読まれた方にはご理解いただけると思いますが、これまで同様、様々な川柳の掲載されたものが2冊同時発売されるとお考え下さい。
なお、一応、単純に2冊に分けるのでは面白くないので、両方読むことで楽しめるような仕掛けは考えるつもりです。
(ネタバレになってしまうのでナイショです。完成をお楽しみに!)
ただ、どなたの作品がどちらに掲載されるかという分け方は、もちろん私の主観になります。ここばっかりはどうしようもありません。
万が一、「お前の分け方が気に食わない!」ということがございましたら、気兼ねなくお申し付け下さい。
(とは言うものの、発売後に何が出来るわけでもないので、誠意を持って謝罪するしかないのですが…)
いろいろ課題はあるものの、何となく2冊に分けるイメージは固まってきました。これで何とかなりそうだな…と、最初は気楽に考えていたのですが、よく考えると、ちょっと重たい問題があることに気が付きました。
2冊に分けるとなると、選評も2冊分になるよなぁと(笑)
2冊に分けるアイデア、そして、そうなると選評も2冊分になるということ…それらを自分の中にこっそり秘めながら(笑)、『川柳EXPO』『川柳EXPO 2024』で選評をして下さった小池正博さんに「『川柳EXPO 2025』も選評をお願いできませんか?」と相談してみました。
すると、「誰もいなければ引き受けても良いのですが、そろそろ別の方にお願いされてはどうですか?」と。つまり、様々な川柳が売りの『川柳EXPO』に対して、選評がいつまでも自分ばかりで良いのですか、という問いかけでした。
これは目からウロコでした。そうですよね、掲載する川柳が多様なら、選評も多様でないと、勿体ないですよね。また、常に新鮮な内容でないと、既存の読者からも飽きられてしまいます。
この時は、本当に自分の視野の狭さを感じました。
※ちなみに小池さんには、これまでも『川柳EXPO』に対して、様々なアドバイスをいただいています。
そこで、もう2冊に分けようと腹を括った(実はこの時点では、まだ2冊に分けないパターンも一応想定していました)上で、選評もそれぞれにして、選評者を2名に分けることを思いつきました。
そうなると人選です。
ある程度様々な川柳(川柳史的な縦軸という意味でも、幅広い川柳という横軸という意味でも)を読まれていて、評のご経験も豊富な方…自分の中で様々な方をイメージしましたが、既報の通り、湊圭伍さんと川合大祐さんにお願いすることにしました。
依頼文の一部を公開します。選定にあたって下記のようなことを考えました。
・評の執筆やパネラー経験のある方⇒作句だけでなく、作品評が書ける
・川柳史を踏まえた上で、その先を模索されている、又は、継続的に発信されている方⇒『川柳EXPO』きっかけで、川柳が「現在進行形」だと感じてほしい
・句集を出されている方⇒『川柳EXPO』の後、句集へ誘導したい(川柳句集が商業出版されていることを知ってほしい)
お二人のご都合もお聞きし、現実的に引き受けていただくことが可能かどうか等、ご相談した上で、最終的にOKのお返事をいただきました。
それぞれの選評者のカラーが出て、さらに小池さんの選評とも異なる、新しい選評…どんな感じになるのか、今から楽しみですね(笑)
ちなみに、掲載される方々・作品が別々、選評が別々、目次も当然別々で、その他、諸々の部分で(共通部分もあるものの)細かく別々…となると、実はシンプルに編集や発行作業も2冊分、2倍になります…
さて、どうなることやら…
…と、まぁ、ダラダラと書いてしまいましたが、つまりそういうことです(笑)
今回、2冊に分けるので、両方購入する方にとっては負担が大きいと思います。どのくらいの投稿者数になるかわかりませんが、1冊あたりの金額が抑えられるといいなぁとも考えています(赤字になると続けられないので、うまくいくかどうかわかりませんが…)。
また、2冊に分けることで「ポケモンみたい」というご意見もよくいただきます。これはポケモンで育った世代の方々に『川柳EXPO』が伝わっているということで、川柳とポケモンが関連性をもって語られるなんて、なんか面白い現象ですよね(笑)
まだ2冊に分かれることをお伝えしてからそれほど時間は経っていないものの、それでも様々なご意見をいただいるのは本当にありがたいと思っています。
それは無視されるのではなく、反響があるということ。
『川柳スパイラル』誌の第22号にも寄稿させていただきましたが、感謝しかありません。こういった反響が、どんどん大きくなっていくといいなぁと願っています。
まぁ、なにはともあれ、まだ始まってもいない『川柳EXPO 2025』…まずはみなさま、投稿の方、何卒よろしくお願いいたします!
2024.12.01 まつりぺきん
#川柳EXPO2025