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西加奈子著『くもをさがす』の感想

最近、西加奈子さんの著書「くもをさがす」を読んだので、思ったことや考えたことを新鮮なままに残したいなあと思いました。

この本は、わたしが今一番好きなお笑いコンビ「ラランド」のニシダさんがサーヤさんにおすすめしていたのをきっかけに知りました!

バンクーバーでの乳がんの闘病を記録したノンフィクションという形ですが、西さんの視点から情景や心情が豊かに綴られており、たくさんのインスピレーションを受けるお話でした。

個人的に、「闘病」というジャンルは気持ちが入りすぎて悲しくなったり不安になったりすることがあるので、これまではそれを覚悟の上で読む、ということを無意識にしてきました。

今回、「くもをさがす」を読んでみて、その覚悟はいい意味で裏切られたと感じています。

西さんの紡ぎ出す言葉や、見てきた景色の表現はどれも、「あなた」であるわたしを肯定的に包み込んでくれるものでした。

西さん

「くもをさがす」を読み終わってまず、西さんってどんな人なんだろう?ということに興味が湧きました。

ネットで調べてみたところ、“太陽のような方”と表現されている記事を見かけました。

あー、やっぱりそうか〜🌞

素直にそう思いました。

この本の中に数えきれないほどたくさんの人の名前が出てきたのも頷ける。

そのほとんとが、西さんを精神的に、物質的に支えている仲間たちでした。

きっと元来のお人柄によって、西さんの周りには素敵な人が集まってくるんだろうな…すごい…。

西さんによる、いつだって鮮やかな世界の描き方は、人生の歩み方や物事との向き合い方について改めて問いかけ、考えさせられるものでした。

自分は?

そして、自分はどうだろう?と考えました。

がんの闘病という経験を自分に置き換えることは失礼かもしれないけれど、そう考えずにはいられませんでした。

わたしはみんなを照らす太陽のようなタイプでは決してありません。

エネルギッシュでもないし、逆境で発揮できる強さもしなやかさもありません。

(西さんみたいに、時間ができたら走りに行こう!って思ったことは一度もないです。笑)

だからこの本を読んでいて、相容れなさというか、自分の身に起こっていたらこうはならないだろうな…と青ざめるような感覚にもなりました。

光と闇

「くもをさがす」の中で、“光と闇は共存する”という比喩を用いた表現が特に印象に残っています。

わたしは確かに、西さんの言葉や表現から滲み出る、眩しいほどの輝きを前にして、自分が闇であることを思い知りました。

ですが同時に、未完全でも「わたしはわたし」と言い切って、どんな状態でも愛せることの強さや尊さを西さんの生き方からたくさん感じ、考えました。

西さんの言葉のように、どういう時でも、未完全でも、納得できる精神と身体でなくても、自分は自分これが自分、と愛してあげたい。

わたし自身はこれまでの人生を、受験に就活、資格試験、そしてまた就活と、目まぐるしくふるいにかけられてきたと振り返っています。

そのためか、自分に対していつも「こんなんじゃだめだ」「こうならきゃだめだ」という焦りのような、何かが欠けているような感覚を抱いてきました。

うまくいくことだけを願って、うまくいかないこと=悪!出来損ない!生きてる価値なし!とすら思っていたし、その恐怖をガソリンにして努力を重ねてきました。

積年の夢だった専門職の資格を取得し、駆け抜けてきた道のりにひと息ついたこのタイミングで「くもをさがす」に出会えたことは、わたしにとってターニングポイントと言えるでしょう。

“完璧でなくても認めてみよう”という気持ちを初めて、自分に対して心から抱くことができたように思います。

うまくいかなくて自己否定的になる時も、欠けたピースの形さえも分からなくて途方に暮れる時も、そんな自分を一番近くで抱きしめて、受け入れてあげられるのは自分なんだと。

西さんの生き様を追うごとに、じんわりと温かい気持ちが湧いてくるのを感じました。

それでもいい

光と闇は絶対的なものではないと思います。

ある人にとってわたしは、彗星のような鋭い光かもしれない。

また、ある人にとってわたしは、その人を輝かせる漆黒の闇かもしれません。

これまで、キラキラしたものに憧れることや、光を掴んだら離すまいと思う気持ちは、やましいものや気恥ずかしいものに感じていましたが、「くもをさがす」を読了した今、考えは変わってきています。

それでもいいじゃない!と。

光を求める自分も、闇のように感じられる自分も、同時に愛してあげることはできるのだから。

また、それぞれにとって何が光でも闇でも、ひとりひとりの価値や尊さが変わるということはないのだと思います。

「くもをさがす」は、大きな視野を持って、何重にも客観視をして、どの角度からも、どの層からも、自分を、そして周りを大きく包み込んで大切にしたいという気持ちにさせてくれる作品でした。

自分も

西さんはその強さゆえに、のちにエッセイとなる日記を綴ることができたのかもしれません。

わたしも西さんのように、どんなに苦しい状況にあっても、自分を客観視したり振り返ったりできる強さがほしいな。

そしてそう願っている自分を今、「そっかそっか、そう思うんだね」と抱きしめてあげたい気持ちでいます。

最後に

「人生において本当に美しい瞬間はみんなに発表しないで自分だけのものにして死にたい」と語る西さんがとってもお茶目で人間味があって惹き込まれました。

もっと西さんの著書をいろいろ読んでみたいです📚

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