2022年に向けたリーダーシップに関する重要な3つのトレンド
労働人口がかつてないほどに変化する中で、組織は将来に向けて優れた人材のパイプラインを確実に構築するための新たな課題に直面しています。激動の時代には大きな変化が伴いますが、それが今、明らかになりつつあります。ここでは、MSC/DDIの調査から導き出された2022年のリーダーシップに関する重要なトレンドは何か、それに対応し最大限に活用するために組織ができることは何かについて、ご紹介します。
1.トレンド1~優秀な人材の獲得競争の激化
組織にとって、人材の定着はパンデミック後の最大の課題の一つとなっています。この1年半の変化により、多くの従業員が仕事に求めるものを見直しました。その結果、組織は膨大な退職者を目の当たりにし、人材を定着させることがさらに難しくなりました。
「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト」調査の一環として、自社の離職率について人事担当者に尋ねたところ、パンデミック前に離職率が上昇したという回答は、わずか3分の1でした。
しかしその後の調査で、大半の組織が昨年の今頃よりも高い離職率に直面していることが判明しました。最近のパルス調査では、人事担当者の半数以上(53%)が離職率の上昇を報告し、そのうちの20%は離職率が大幅に上昇したと回答しています。
働き方や働く場所が大きく変化した今、「大量離職」が突然解消されることはないでしょう。むしろ、柔軟な働き方により従業員の選択肢が増え、離職率は今後も変動することが予測されます。このことは組織の知識の継承にどのような影響を及ぼすでしょうか?採用担当者はどのように対応すべきでしょうか?
これらは組織が直面している課題のほんの一部です。優秀な人材を惹きつけ定着させるには、これまでとは異なるアプローチが必要であることを、これらの問題は表しているのです。
組織が高い離職率問題を解決するために
このような新しい環境の中で、組織が高い離職率に歯止めをかけ、将来に向けて従業員を惹きつけ定着させるには、次の3つを行う必要があります。
① 目的意識の醸成
マッキンゼーの最新の調査によると、パンデミックに直面し、約3分の2の従業員が人生の目的を考えるようになったことが示されています。また、半数近くの人が自身の職種を再考しています。大多数の専門職の人(80%)は、自分の目的は仕事にあると考えています。
目的意識は、従業員に自信を与える経営幹部のような、組織のトップからもたらされるものです。経営幹部は組織文化の強化だけでなく、目的意識の基調も決定づけます。従業員が高い目的意識を持っている強い組織文化があれば、組織は従業員のエンゲージメントと定着率を向上させることができます。
② 失われたリーダーシップを充足するための支援をする
離職率の高い組織で欠員を充足する体制を迅速に整えるには、権限委譲、リモートで働くチームの主導、デジタル感覚などに優れたリーダーを備えておくことが有用です。一部の役割は代替できないかもしれませんが、自動化できる業務を検討するよい機会となります。自動化が進む中でも、リーダーは既存の業務フローやリソースを管理するために、効果的に権限を委譲しなければなりません。
③ 従業員のウェルビーイングを最優先する
従業員のウェルビーイングをサポートするリーダーの役割は、パンデミック後も引き続き重要です。リモートで働くチームを率いる心構えができているリーダーを有する組織では、90%の従業員が、上司は部下のウェルビーイングに心から配慮していると回答しています。一方で、そうでない組織では79%でした。
従業員のウェルビーイングに対するリーダーの関わり方は、チームに大きな影響を与えます。上司がウェルビーイングに配慮していることを示している組織は、従業員の過労とそれによる離職を防ぐための準備が2.3倍整っていることが明らかになっています。
2.トレンド2~闇(リモートワーク)の中でポテンシャルを特定する
労働力が不足すると、人材のパイプラインにも影響が及びます。グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト調査で示された2022年に最も懸念されるリーダーシップのトレンドの一つは、重要な役割を担うリーダーの欠如です。現在の離職率の問題を解決するには、新たなリーダーの確固たる供給体制を整える必要があります。
この1年半の間に多くの組織が後継者育成計画の取り組みを中断または延期しましたが、自社の人材プールを再構築するための最善の方法を、今改めて検討しはじめています。そして、在宅勤務者が増える中でどのようにポテンシャル人材を発掘するか、という新たな課題が生じています。ハイブリッド・ワークモデルには柔軟な働き方などの多くのメリットがありますが、一方で、対面時間の減少や人材の可視性の偏りといった問題もあります。
これは多くの組織にとって以前からの課題でしたが、その深刻さが増しています。最新のグローバル・リーダーシップ・フォーキャスト調査によると、リーダーシップ・ポテンシャルを特定するための効果的なプロセスを持っている組織は51%でした。これは、多くの組織がハイブリッド・ワークモデルに移行する前のことであり、組織はハイポテンシャル人材を見極めるための新たな難題を突き付けられているのです。
ハイブリッド型の職場でポテンシャルを表出させる方法
組織が、ハイブリッド型の職場環境においてポテンシャルをうまく表出させ、公平性を高めるには、いくつかの方法があります。
① サクセス・プロフィールを明確に定義し、特定する
優れた人材のパイプラインを構築するためには、自社における成功とは何かを定義することが重要です。自社の現在および将来の戦略を推進するのに必要なリーダーシップ・スキルは何でしょうか?将来の戦略に沿った人材を見極めるだけでなく、その能力を開発するためにもサクセス・プロフィールは重要となります。
② より早く、より広くポテンシャルを表出させる
組織には早期に成長させたい人材が広く存在します。しかし、ハイブリッド型の職場でハイポテンシャル人材を発掘するのは容易ではありません。オンライン・アセスメントは隠れたハイポテンシャル人材を特定するのに有用です。
③ リモートで働くチームを率いるリーダーのスキルを高め、人材を育成する
今回の調査において、幅広いリーダーシップ・スキルの中で、リーダーは「人材を特定し、育成するスキル」と「リモートで働くチームを率いるスキル」に最も自信がないことが示されました。また、これらの重要なスキルをリーダーに身につけさせている組織はほとんどないことも判明しています。このような分野の能力開発を受けたことがあると回答したリーダーは30%に満たず、人事部門にとっては大きなチャンスとなります。
3.トレンド~次世代リーダーのエンゲージメントを高める
組織には成長したいと願う若手リーダーが多くいます。彼らの成長を促すには、あらゆる世代の人材が活躍できるインクルーシブな(多様性を受容する)職場環境を構築する必要があります。
新任あるいは若手リーダーは、より多くのコーチングとフィードバックを求めています。どの階層のリーダーもフィードバックを求めてはいますが、新任や若手のような次世代リーダーは、上司からのコーチングやフィードバックをより必要としています。
現リーダーの4人に1人は、今以上にコーチングやフィードバックを受けたいと回答しています。一方、次世代リーダーは、3人に1人が「これは今必要なことである」と回答しており、現リーダー以上にあらゆる方向からより多くのコーチングとフィードバックを求めていることがわかります。
さらに、次世代リーダーはどの世代のリーダーよりも多様性を受容する環境が醸成されることを求めていますが、自社の偏見(バイアス)や公平性に対するアプローチに否定的でした。自社のリーダーはバイアスを排除する努力をしていると回答した現リーダーの割合は67%に対し、次世代リーダーの割合は56%でした。
彼らは自社がダイバーシティ、エクイティ(公平性)、インクルージョンに優れた職場になることを望んでいます。このことは、リーダーが成功しているかどうか、働きやすい職場であるかどうかを評価する際にも明確に表れています。
次世代リーダーを惹きつけ、定着させる方法
この1年半の職場環境の変化を考えると、次世代リーダーを惹きつけ、定着させることが組織の新たな課題となっています。ここでは、次世代リーダーを惹きつけるための3つの方法をご紹介します。
① 柔軟な働き方と成長の機会に焦点を当てる
ハイブリッド型勤務や完全な在宅勤務など、柔軟な勤務形態を作り、支援します。私たちの調査によると、次世代リーダーがリーダー職を担う準備をする際に、組織が柔軟な働き方をうまく取り入れているか否かが、大きな差別化要因となることが示されています。
さらに新進気鋭のリーダーには、日々の業務以外でスキルを向上させるために、能力開発を目的とした任務を提供します。仕事の中でストレッチ・アサインメントを与えることもできます。そうすることで、ハイポテンシャル人材にリーダーとしての経験をさせることが可能となります。
② 多様性を受容する文化を醸成する
自社の現在および将来のリーダーが、インクルーシブな環境を作るために必要なスキルを備えているかを確認します。これには共感、成長のためのコーチング、公正な対立の解消などのスキルが含まれます。
MSC/DDIのダイバーシティ&インクルージョン・レポートでは、組織がインクルーシブな文化を推進する上で有用な3つのリーダーシップの取り組みを明らかにしています。その3つとは、「個々人のニーズに合った質の高い能力開発計画をリーダーに提供する」「業績管理の話し合いで能力開発計画に重点を置く」「ハイポテンシャルリーダーを含む、組織内の全リーダーを対象とした共通のリーダーシップ・プログラムを構築する」などです。
③ 質の高い能力開発を提供する
特に若手リーダーは同僚と共に学びたいと考えており、共にライブで学習することでメリットを得ています。また、私たちの調査によると、ファシリテーターによる公式なトレーニングがいまだに新任リーダーの学習方法の上位を占めています。しかし、公式なクラスルーム・トレーニングの実施にあたり、従来の対面式に戻す必要はありません。バーチャル・クラスルームは、新任リーダーを集めてライブで対面式のトレーニングが実施できる有用な代替手段です。
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント
HP:https://www.msc-net.co.jp/