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第2章<目標を定める>自社のビジネス状況におけるリーダーシップの成功を規定する

この章では、「目標を定める」という必須要件において、いかに卓越した組織になるかを示す。次のような方法で実践することにより、エネルギーが生まれる。

🔶ビジネス状況とのより強い関連性:
ビジネス・ドライバーは、ビジネスおよび組織文化上の優先事項と、その実践に必要なリーダーシップとを結びつける。
 
🔶より高い有用性:
リーダーシップのいかなる階層のいかなる取り組みにも使える共通の言語。幅広いビジネス状況、コンピテンシーへの焦点、キーアクションの明確さ。

🔶能力開発のためのより詳細で正確なガイダンス:
キーアクションは、コンピテンシーをどのように実行して習熟するかを明らかにする。


1.成長に精通する~自社のビジネス状況におけるリーダーシップの成功を規定する

ガンジー、チャーチル、リンカーン、マンデラ、ジャンヌ・ダルク…何が彼らを偉大にしたのだろうか?あるいは、もしチャーチルが1930年頃のインドにいたら、ガンジーが第二次世界大戦開戦時のイギリスにいたら、彼らは同じような成功を収めただろうか?答えは誰にもわからないが、確かなことは、歴史上の偉大なリーダーによる成功のほとんどは、彼らのリーダーシップが目の前の課題に対処するのに相応しかったという点だ。実際、課題がその人を真のリーダーに育てたというケースは多い(マーティン・ルーサー・キング・ジュニアなど)。歴史を通じてわかるのは、リーダーとして成功するには何が必要かを定義する際、人物像を描写するだけでは足りないということだ。その人を取り巻く状況が重要な意味を持つのだ。

リーダーシップ開発の加速化システムに、リーダーとビジネス状況の両方を、正確に説明する共通かつ有用な言語を確立できれば、加速化を実現し、適切な人材を主要な役割につける最善の方法に辿り着くことができるだろう。残念ながら、リーダーシップの成功を定義する一般的な取り組みは、
人の特性だけに注目し、ビジネス状況を明らかにしようとする姿勢はほとんど見られない。

経営幹部と人事部門リーダーは異なる言語を使う傾向がある。CEOに、新たに雇い入れるCOOに何を求めるか尋ねてみると、すぐにビジネスに関連したニーズを2つ3つ口にするだろう。「新しいCOOには、経営の効率化を進めてほしい。アカウンタビリティと整合性を強化してほしい。顧客重視の組織文化を育ててほしい」といった具合だ。一方、COOに関する同じ質問を人事部門のリーダーにしてみると、コンピテンシーや個人特性、経験、知識などについて言及するだろう。もちろん、どちらも成否を予測する重要な項目ではある。 

ではCEOと人事部門リーダー、どちらが正しいのだろうか?答えは両方である。リーダーが成功するためのプロフィールに焦点を当てて伝えていくために使う言語は、組織のビジネス状況におけるリーダーシップの最優先事項を明確にしなければいけない。それはまず、ビジネス・ドライバーの特定から始まる。

リーダーが成功するためのプロフィールに焦点を当てて伝えていくために使う言語は、組織のビジネス状況におけるリーダーシップの最優先事項を明確に表さなければいけない。

2.1図 ビジネスの優先事項、ビジネス・ドライバー、サクセス・プロフィール
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2.ビジネス・ドライバー~リーダーシップの状況を示す言語

ビジネス・ドライバーとは、ビジネスの優先事項(戦略的優先事項と求められる組織文化)を実施し、ビジネスを前に進めるために乗り越えなければならない、リーダーシップに関わるさまざまな課題や障害である。「競争戦略を実施する」、「プロセス革新を進める」、「新たな組織を作る」などがよく見られる例だ。 ビジネス・ドライバーはサクセス・プロフィールとともに機能する。(図2.1参照)

以下の3つの文章の空白を埋めることで、ビジネス戦略、ビジネス・ドライバー、サクセス・プロフィールがどのように組み合わさるか、その関係性が明らかになるだろう。

①今後2~4年間に組織が成功するためには、われわれは(戦略的優先事項と求められる組織文化を書き込む)をしなければならない。
 
②そのために、リーダーは(ビジネス・ドライバーを書き込む)に重点を置かなければならない。
 
③そのために、(サクセス・プロフィールを書き込む)を含むスキルや能力を持つリーダーが必要となる。
 

ある世界的な石油会社の例を見てみよう。この会社では、業績水準の引きあげが変革の主要な目的だった。そこでまず、リーダーシップのコンピテンシー・モデルを改訂することになった。高い業績目標を設定し、適正な測定基準を定め、目標を達成するために、成果達成指向を醸成する必要があった。さらにリーダーは、部下の新たな能力の開発を実現させるために、コーチングと人材育成に時間と努力を傾ける必要があった。戦略的影響力も、業務の進め方の変化に伴って重要性が増した。図2.2は、特定されたビジネス・ドライバー(ハイパフォーマンス指向の組織文化の構築)と、それに関連するコンピテンシーを示している。

2.2図 コンピテンシーをビジネス・ドライバーに結びつける

表2.1は、石油会社が、ビジネス戦略の中から4つのリーダーシップの優先事項(ビジネス・ドライバー)をどのようにして明確にしたか、そしてそのドライバーがコンピテンシーとどのように結びついているかを示している。組織の戦略的および文化的優先事項、それを実施するために必要なリーダーシップの行動要件との関連性が1ページで見渡せる。ビジネス・ドライバーが単なるコンピテンシーの集合ではないことに注目してほしい。

2.1表 戦略的優先事項、求められる組織文化、ビジネス・ドライバー、コンピテンシーの関連
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さらにビジネス・ドライバーを使用することで、経営陣はコンピテンシーを詳細に記したリストがなくても、リーダーシップの必須要件を説明、理解することができる。例えば、理事会へはビジネス・ドライバーだけを使って後継者管理の目標が伝えられた(図2.3)。理事会のメンバーやその他の関係者は、必要なときにビジネス・ドライバーの根底にあるコンピテンシーのつながりを見て理解することができるが、彼らは通常そこまで細かい業務に関わることは求められていない。

この章や以降の章でもわかるように、ビジネス・ドライバーの枠組みはタレントマネジメント・システム全体をシンプルにすると同時にそれに焦点を当てる。また、システムの設計やタレントレビュー、アセスメント、能力開発、後継者管理といった人事活動とビジネスの関連性を高める。人材開発の加速化に関して言えば、ビジネス・ドライバーはグループとリーダー個人両方の準備度を評価する手段にもなる。

ビジネス・ドライバーの枠組みはタレントマネジメント・システム全体をシンプルにすると同時にそこに焦点を当てる。

図2.3は、4つのビジネス・ドライバーに対するリーダーの準備度を表したものだ。色は、ビジネス・ドライバーに関連するコンピテンシーのアセスメントに基づいた準備度の度合いを示している。ここでは6人分しか紹介していないが、石油会社では同じようなデータを数十人分作り、リーダーシップの最優先事項に関して幅広い意思決定ができるようになった。 

2.3図 ビジネス・ドライバーに関連するリーダーの準備の例
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経営陣は、「わが社はパフォーマンスの高い組織文化を作る準備ができているだろうか?」「わが社には、組織戦略を作るのに必要なリーダーがいるだろうか?」と自問し、その後、個人およびグループ全体の人材開発の加速化戦略が作られた。また時間をかけて集められたデータのおかげで、経営陣は現在の準備度の理解と、ギャップの充足が進んでいるかどうかの判断がしやすくなった。

ビジネス・ドライバーは経営幹部が覚えて使いやすい言語であるが、役立つのは、その根底にある要素が正確で、リーダーの成功に何が必要かを詳細に定義している場合のみである。この要素をサクセス・プロフィールと呼ぶ。

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🔷DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。

DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。

DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

🔷会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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