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人事が取り組むべき変革の優先事項

1.タレントの見える化

企業の価値を分析する際に、「ダッシュポード(デジタルダッシュボード、経営ダッシュボード)」と呼ばれるソフトウェアを用いることがあります。

ダッシュボードというのは、企業の状態を可視化するビジネス管理ツールで、複数の情報源から必要なデータを集め、チャートやグラフなどで表示する機能があります。自動車のダッシュボードが、自動車の状態をひと目で把握できるようになっているところから命名されました。病院のカルテのようなものと言ってもよいかもしれません。


財務面の企業価値は、ダッシュボードで簡単に可視化できますが、自社のリーダーの質や量をほとんどの企業は「ダッシュボード化」できていません。ある大手企業の人事責任者が、日本を含め、世界の人材を把握できないとおっしゃっていたことが大変印象に残っています。属人的かつ主観的な人に関する情報ではなく、ビジネスと関連し、かつグローバル含めての、客観的な人材データが整備されているかということです。

2014年にThe Conference Boardが実施した、CEOが戦略として分析・活用しているデータに関する調査結果では、「人材」データは、22項目中19位でした。「人材」は、CEOの課題の上位であるにもかかわらず、人事の持っている人材データについては、CEOはビジネスに直結する有益なデータに位置づけていないことが分かりました。

人事部は、タレント一人ひとりの情報を、評価や昇格データなど定量的に把握するほか、現場に出向いて関係者から個人の仕事上での具体的な行動情報を収集する、自ら会って面談を行い情報を入手するなど、個の情報を現場から丁寧かつ客観的に収集する体制や仕組みをつくる必要があります。

2.人基準から職務基準への転換

日本の人事制度は、職能資格制度が主流です。職能資格制度は、「経験を積めば能力は上がっていく」という考え方なので、年功序列の運用に陥りがちです。そのために、課長になるまでに○年の経験が必要といった、国内外の優秀人材であっても、年数を積まないとポジションに就けないという制度です。

ポジションに就くまでにある一定の年数が必要ということの合理性がない場合、優秀人材が、他社に機会を求めて転職してしまう問題も増えています。グローバル、特に、アジアの市場では、今や、「War for Talent」が激化し、日本企業は人事制度上の関係で給与の面においても魅力がないため、世界の優秀人材を獲得することに苦戦しており、世界での人材獲得競争力は低下気味です。

職務基準に転換することで、そのポジションに求められる権限、責任、要件は明確になり、年次や経験年数ではなく、そのポジションに就く準備ができている人であれば、経験年数に関係なくポストに就けるようになります。

年次での縛りがなくなるため、若手リーダーの育成のスピードは速まり、「ポジションを獲る」というマインドや自律的にキャリアを形成する意識も醸成されます。そのため、従来よりも自律した強い個人がリーダーのポジションに就く可能性が高くなります。

3.「横並び主義」からの脱却

日本企業は、日本全体に蔓延する“横並び主義”から脱却する必要があります。コミットした結果を「出した人」と結果を「出せなかった人」とは、明確に「差」がつく評価体系にし、結果にコミットする「強い個人」が集まる「強い組織」に体質を変えていく必要があります。日本人がグローバルと比較して、アカウンタビリティの認識が甘いのは、横並び主義であることもその要因になっていると考えられます。

マネジャーには、部下にアカウンタビリティを課し、結果責任を最後まで全うできるように、コーチングやフィードバックを日常的に行う責任があります。マネジャーのアカウンタビリティを明確にし、マネジャーに部下育成の責任を課し、部下の育成に失敗したマネジャーには、結果として厳しい評価をするという仕組みと運用が、横並び主義の脱却の第一歩です。

グローバルのタレントマネジメントは、先にも紹介したように、上司が人材育成にコミットしてアカウンタビリティを負っているということです。結果を出せなくてもマネジャーは部下を厳しく追及しないという、組織に蔓延しがちな安定・安心、他律他責の意識を払拭し、結果を出すことに一人ひとりがこだわる強い組織になるような仕組みを人事は構築する責任があります。

4.昇進・昇格基準の見直し

昇進・昇格の基準を10年前と変えていない企業があったとしたら、最優先にその仕組みを変えることが急がれます。「過去からの経緯」「過去のデータとの整合」といった過去からの流れを大切にする傾向が、人事には根強く残っています。しかし、過去のデータを重視し、これまでの選考基準を踏襲する限りは、旧いタイプのリーダーを量産するだけです。

日本国内において既存ビジネスを従来のやり方で遂行できる、国内基準のリーダー選考に照準が当てられている企業が、いまだ多いのが現状ではないかと思います。環境変化も市場の変化も激しい中、企業の勝ちパターンは変わってきています。しかし、人事は、過去の成功パターンに基づいて、調整型人材を選びがちです。

世界で戦うことができ、組織に変化やイノベーションを起こすリーダーを見極め登用するためには、昇進・昇格基準をグローバル基準に変えていくことが急がれます。人事が輩出しなくてはならないリーダーは、将来のビジネスを成功することができるリーダーです。登用の基準が変わらなければ、将来のリーダー候補である“とがった人材”をはじめ、これまでとは違うタイプの人材が現場に埋もれたままになってしまうリスクがあります。

経営の優先課題を進めていく中で、昨今、人事の課題として挙がるのはミドル層です。いわゆる粘土層とも言われている過去の基準でマネジャーになった人たちです。

ある日系企業の人事は、新しいことを学習し行動変容することが難しい、あるいは、変化をリードできないマネジャーには、その職務を降りてもらい、異なるミッションで組織貢献してもらうという決断をし、マネジャー層を若い能力のある人材に大きく入れ替えました。この厳しい決断には、会社を強くする、変えるという、人事の覚悟が伝わってきます。

リーダー層に求められる能力要件は、企業がビジネスをどのように進めていくかで変わります。人事は、企業のこれからのビジネスの成長を牽引するために必要となる要件をビジネスの視点から検討し、「誰を」登用するかという昇進・昇格基準を見直すことが、急務です。

それと同時に、これまでの年次・年功序列の考え方を一掃し、ポジションを担う能力を備えていれば、年齢や年次に関係なく、早くポジションに就けるという仕組みをつくって実行し、人材登用の在り方について変革を進めることが急がれます。そうすることで、組織の活性化を加速することも可能になります。

5.経営戦略としてのダイバーシティ

人事部内においても、ダイバーシティを積極的に推進していくことが求められています。同質の価値観、考え方では、新たな発想からの変革は起こりにくいという現実があります。世界で勝つ人材を育成しようとしている人事こそが、さまざまな人材(多様性に富んだ人材)とチームになって働くことで、人事部門に変革やイノベーションが生まれ、強い人事(強い人をつくれる人事)へと進化することになります。それと同時に、日本の人事のグローバル化にもつながります。

ダイバーシティ推進の取り組みの一貫として、一括採用だけでなく、キャリア採用・外国人採用の比率を今以上に増やすことも検討すべきでしょう。同質の人材の中に多様な人材が入ることで、組織内のイノベーションが加速することが期待されます。人口構造や組織の人員構造の課題からいっても、今後は、多様な人材が活躍できる仕組みが欠かせません。多様な人がさまざまな形で活躍できる組織に変えていくことは、グローバル競争力にもつながります

その他にも、人事主導で進めることができる「ダイバーシティ」の取り組みとして、縦方向のキャリアだけではない仕事の選択肢の整備、ジョブポスティング制度の積極的な推進を人事のリーダーシップで進める、働き方の多様化への対応なども考えられます。

6.おすすめ人材アセスメントソリューション

7.グローバルポジションを獲りにいく

グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。

日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。

8.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター

創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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