日本の教育に戻らないことに決めた。マレーシアのインター校に来て3か月、10歳息子が語った「決意の理由」【野本響子さん『子どもが教育を選ぶ時代へ』に寄せて】
インターナショナルスクールに通う2人の子どもとマレーシアで暮らしている、ゆりこです。
子どもたちを連れてマレーシアに来て2年半になりました。
マレーシアに来た当初、実は私は1~2年くらいで日本の教育に戻ろうかな、というつもりでした。小学生のうちは、マレーシアで「長いサマースクール」を楽しく過ごせればそれで十分だと思っていたのです。
そして今、マレーシア歴2年半。
その間、最も予想外のコロナが起こり、世の中の前提が覆った中で思考も二転三転したのですが、結局のところ、まだ日本に戻っていません。
今後も、戻らないかな、という予感がしています。
親である私は、2年超が経過するまでなかなかそうふっ切れなかったのですが、誰よりも早く、マレーシア歴3カ月でそれをすでに決意していた人がいました。
当時10歳の息子です。
先日、私がこのnoteでも購読している野本響子さんの新著が発売されて、そのタイトル『子どもが教育を選ぶ時代へ』を見て、「あれっ?」と思い出したことがあったのです。
それが、約2年2か月前に息子が語ったある決意のことでした。
すでに子ども自身が教育を選んでいた
息子は日本で3年保育の幼稚園に通い、その後、日本の小学校に進学しました。
そして、4年生の1学期を終えた夏休みからマレーシアに来てインターナショナルスクールに入学しました。
日本でも6歳くらいの頃から英語は習っていて、日々それなりに着実に上達している方かな、という感じではありましたが、渡航前の4年生時点でもちろんペラペラとしゃべれるわけではありませんでした。
未知の世界、マレーシアのインターナショナルスクールに通い始めて3か月。
英語も不自由。
全く新しい環境。
お友達だって、ゼロからのスタート(日本では幼稚園から仲良しの子が同じ小学校に行ったので、ゼロスタートは年少さん以来の約7年ぶり)。
それでも、「日本の学校には、戻らないと思う。ここがいい」と言いだした、10歳が新しい環境に飛び込んで3か月で語ったその6つの理由がまとも過ぎたので、当時のメモをもとにここに記しておきます。
理由1:インター校では毎日のスケジュールに時間的な余裕がある
日本の小学校では、朝登校してから朝の会が始まるまでは遊べるのですが(早く登校するとその分長く遊べる。この時間がいちばん楽しい)、ひとたび1時間目が始まってしまうと、それはそれは忙しいのだそう。
その日の時間割や季節にもよるけど、体育があればその前後の休み時間は着替えでつぶれ、授業中にトイレに行くために離席することもご法度、水も授業中に飲めないとあり、教室移動、着替え、トイレ、水飲みなどを全部休み時間に行う必要があります。
一方、こちらで通っているインター校は、体育のある日は体操着で登校して、そのまま一日過ごして良い、というルール。
(その分、体操着もえりのついたポロシャツタイプで、きちんと感あり)
日本でもマレーシアでも、この辺のルールは学校によっていろいろだとは思いますが、
「着替えの時間がないことで、むだがなくて合理的。慌ただしくないのがいい」
と息子は受け取っていました。
理由2.給食がおかわり自由
息子の通うインターナショナルスクールの給食は、食堂室・カフェテリアでのブッフェランチです。
提供されるお食事のお味がおいしいかどうかは、学校にもその子の味覚にもより、その日のメニューにもよるのですが、息子は「おかわり自由なところがいい」と言っていました。
日本の学校は、「おかわりは1回まで」「苦手なメニューのお減らしをした人は好きなメニューのおかわりはできない」などといろいろな細かい決まりがあったよう。
息子の場合は「自由におかわりできる」「好きなものを選んで自分で量を決めて食べられる」という自由さがよかったみたいです。
息子は運動もしていて、身体も大きくなり始めたタイミングで、小学校3・4年生の時代は食べ盛りでした(12歳の今もですが)。
スポーツのコーチにも、この時期にしっかり食べて運動して、体を作るように言われていました。
食が制限されておなかがすくと、かなりストレスフルだったようで、インターナショナルスクールのブッフェ形式のランチで自由に食べられることへの満足度は高い様子でした。
なお、多くのインターナショナルスクールでは、午前10時頃に「スナックタイム」という時間もあり、果物や甘いシリアルなどの軽食が学校で提供されます。学校から提供されるのでなく家から持参するスタイルの学校もありますが、「スナックタイム」「フルーツタイム」等と呼ばれる時間は、私の周りの人が通う多くのインターナショナルスクールで設定されています。
息子はフルーツや甘いものがそんなに好きではないので、この時間をことさら喜んでいるわけではありませんでしたが、日本の学校でいえば、20分休み(中休み)の時間におやつが出るという感じです。
それって、めちゃくちゃよくないですか?
朝2コマの授業を終えるとスナックタイム。そして甘いものをつまんでリフレッシュし、元気になってお昼までの2コマの授業に臨むようです。
理由3.自由度が高く、窮屈でない
インターナショナルスクールでは、授業中に水を飲んだりトイレに行ったりしてOKです。特にマレーシアは暑いので、水筒は必携。補充のための水も学校に用意されています。水筒を持っているのに授業中は飲んじゃダメ、なんてこと、もちろん言われません。トイレは「May I go to bathroom?」とひとこと先生に断ってから出ますが、ダメと言われることも嫌な顔をされることもありません。
日本の学校では、厳しいと評判の先生が授業中のトイレを禁止し、それでその子がクラスで粗相をしてしまった、なんて話を聞いたことも。きちんと挙手して、許可を得ようとした子を、です。
入学したばかりで慣れない生活の中、こんなことがあったらどうでしょう。
深く長く傷つくだけですよね。いじめの原因にだってなり得ます。
また、日本で通っていた学校では、授業中に水筒からお水を飲むなんて信じられないことでした(感染症予防などで今は違うのかもしれませんが)。
でも、水を飲むくらい、授業の妨げにも何にもならないし、喉が渇いたままいるよりよほど健康的で、勉強への集中力のためにも水くらい飲んだらいいのでは?と今なら思います。
「日本では、何で授業中に水を飲むのが禁止なんだろうね?」と、インターナショナルスクールに来て改めて疑問に思ってしまいました。(当時は疑問にも思っていなかったことが恐ろしい)
そして、この「授業中は飲んじゃダメ」ルールがあるので、休み時間がより忙しくなるのです。(水筒を持って行っていかない時期は、体育の後など水飲み場が混んでしまい、運動のあと水も飲めないまま授業を受けなければならない、なんてこともあったよう)
また、誕生日には学校に親がケーキやお菓子を持って行って休み時間にみんなで食べたり、プレゼントを持って行ったりします。
(息子の学校では、お誕生日を迎える本人の子どもがクラスメイトに配るための小さなプレゼントを全員分持っていきます(しない子もいると思います)。仲の良いクラスメイトの子はプレゼントをくれたり、そうでもない子はくれなかったり、こちらがあげると後から何かくれたり、対応はいろいろですが、全く気にしません)
お誕生日の日の休み時間に、ママやパパがケーキやお菓子を持って学校に来てくれて、クラスメイトがハッピーバースデーを歌ってくれる。
最高じゃないですか? 学校が大好きになりますよね。
仕事をしていて当日に持ち込めないママは、前日に学校の冷蔵庫に入れてもらったりして、学校側も柔軟に対応してくれていました。
※イスラム教の子で高学年の子は、ラマダン(宗教行事として日のある時間帯に断食する)の時期は日中に飲食ができない場合もあります。小学生だと、ラマダンをしない子の方が多い印象ですが、そういった場合は生徒や親、先生も含めて柔軟に配慮して対応します。
※ラマダンは1年ごと日付が少しずつずれて、毎年時期が微妙に異なるので、「○月頃がラマダン」と決まっていません。イスラム圏に行く際はご注意ください。
理由4.いろいろな国からの生徒がいて、言語や文化を知ることができる
これも学校によるとは思いますが、マレーシアだとだいたい、国民の6割を占めるマレー系の子、3割を占める中華系の子、国民の1割くらいのインド系の子はいると思います。
日本人が行くようなインターナショナルスクールだと、中華系の子が多い場合の方が多いかも。
また、韓国からの教育母子移住も盛んなので、クラスに韓国系の子がいる場合も多いです。
世界最大の人口を誇る中国人(メインランドからの)もいることが多いだろうし、
その他、親の仕事の都合などで中東の国から来ている生徒がいたり、
ネイティブ教師の子どもでイギリス・アメリカ・オーストラリアなどから来ている子がいたり、
台湾・香港あたりから来ている子がいることも多いです。
南米やロシアからの子はあまりいなく、アジアの子がもちろん多いですが(場所によってはチャイニーズしかいない、という場合もあります)、それでも「いろいろな国・いろいろな文化・いろいろな言葉がある」と息子はとらえており、いろいろあって楽しい、と思っているようでした。
また、授業でも、中国語やマレー語を習ったり、第二外国語的にスペイン語やフランス語の授業があったりする場合もあります。
必修だったり、選択だったり、その国籍の子しか取れなかったり、学校によってさまざまですが、「いろいろある」ということは印象的であったようです。
まあ、子どもなので、「文化」といっても、各国のFワード(悪口や下ネタなどの汚い言葉)を教えあってゲラゲラ笑ってる、とかそんな感じですけど。
日本語では、「オマエはもう死んでいる」とか有名です(笑)。
5.常に英語が使える
クラスメイトがいろいろな国から来ているので、共通言語が英語しかありません。そのため常に英語で話さなければならず、「英語が使えるのがいい」らしいです。
この理由は聞いて少し驚いたのですが(そこまで英語が好きって知らなかった)。けっこう向上心あるのね、息子よ…。
一度「ちょっとできる」ようになると、楽しいくなるものなのかもしれないですね。
6.違う年齢の生徒との親しい関わりがあり、楽しい
これは学校に寄るし、日本の学校でもそのような学年を超えた縦断的な活動はあるので、インターナショナルスクール独自ということではないですが、やはり子どもは「いろいろなものと関わり合う」ということが好きなんだな、と思いました。
(同じだと飽きちゃいますものね)
低学年の頃は、大きなおにいさんおねえさんにお世話してもらったり憧れを抱いたりし、高学年になると小さな子たちの面倒をみてリーダーシップを発揮する、という試みは日本の方がむしろ日常的にされているかな、とは思いますが(登校班だったり、委員会活動だったり)、
日本では「それが楽しい」という発言を聞いた覚えがないので、やはりインターナショナルスクールでは「何か楽しいことを、違う学年の子たちで一緒にやる」ことが多いのかもしれません。
意外と至極まとも
どうですか?
かなりマトモな意見じゃないですか?
これ、10歳の、おふざけ男子が、マレーシアに来て3カ月で言った内容です。
親の方がそこまで早く決断できないです。
「とはいえ、子どもが言うこと」として当時は大切に聞いて記憶しておくにとどめておき、様子を見ていましたが、2年半経った今も、息子の意見は変わっていません。
むしろ、「思い返せば、日本の小学校ではずいぶん理不尽なことあったなぁ」と思い出すエピソードが増えている様子。(これもまた書きますね)
私自身は、日本の教育も素晴らしいと思っていますし、3年間お世話になった幼稚園、3年少しお世話になった小学校の先生の多くには感謝をしています。
が、子どもは「マレーシアのインターナショナルスクールでの教育」が早々に気に入り、自分で理由を見出し、心を決め、それをずっとキープし続けているようです。
2年以上前の話を、やっと私が文字にできた理由
今回こんなことを書こうと思ったのは、マレーシア在住の編集者で教育について詳しい野本響子さんの新刊「子どもが教育を選ぶ時代へ」のタイトルを見て、何かを思い出したから。
このタイトルを見て、2年以上前のことが思い起こされ、私は「子どもがすでに教育を選んでいた」ということに気付きました。
大人よりずっと直観力が優れている子どもたちだから、意外に選択肢さえ見せてみれば、自分でさっさと決めてしまうのかも。
「子どもにより幅広い選択肢を」は、私の子育てのテーマでもあります。
子どもが選んだ教育、よりよいところに連れて行けるように、伴走したいと思っています。
(この本の試し読みは、野本さんのnoteでも公開されているようです)
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