"福祉の知識を持った教員"は子どもを救うか
こんにちは。お久しぶりです。特別支援学級教員14年目のMr.チキンです。
私は今、教員として働きながら、通信制大学院で社会福祉を学んでいます。
今日は、下記記事で記されていることを中心に、
岸田首相が語ったビジョンについてお話をしたいと思います。
スクールソーシャルワーカーが学校にいない!
記事の中で、岸田首相は
というお話をされました。
この話は、実は本当です。
現在、多くの自治体で、スクールソーシャルワーカーは”派遣型”という活用形態で採用されています。
スクールソーシャルワーカーは教育委員会に所属しており、各学校からの派遣依頼を受けて、はじめて学校に派遣され、ケースを担当します。
(スクールソーシャルワーカーの配置に関しては、給与体系等も含めて、地域差がかなり大きいので、今回は派遣型の一般形としてお伝えします。)
つまり、学校にスクールソーシャルワーカーが”常にいる”という状態は、”拠点校型”という形式をとっている自治体の当該拠点校を除き、ほぼ無いと考えて良いでしょう。
SSW実践活動事例集を読み解くー授業中眠くて集中できない生徒への対応ー
文部科学省から、毎年度「SSW実践活動事例集」というものが出ています。
令和3年度の横浜市の取組として、以下の事例が掲載されていました。
本ケースでは、ヤングケアラーの疑いがあるとして、スクールソーシャルワーカーの介入が行われました。スクールソーシャルワーカーは関係者聞き取り等を行い、次のような事実が分かります。
上記のことから、ヤングケアラーのみではなく、高齢者虐待の疑いももたれるケースであることが分かりました。
スクールソーシャルワーカーは当事者の承諾を得ながら、様々な関係機関とつなげていきます。その結果として
地域包括支援センターからの働きかけで、祖母の介護保険サービス利用が開始され、次第に祖母の生活全般が安定し、夜間徘徊が消失した。また、祖母に支援者が関り始めたことで、当該生徒の祖母のケア負担が軽減さ れ、日中の眠気の訴えがなくなり、授業に集中できるようになった。
父は学校だけでなく、区役所こども家庭支援課や地域包括支援センターの担当者に相談できる関係性を構築でき、精神的に余裕が生まれ、祖母へ暴力を振るうことがなくなった。
という効果を生むことができています。
当該生徒のニーズをうまく汲み取りながら、環境調整を行い、困難性の改善がなされているケースといえるでしょう。
大事なのは、”保護者が悪者になっていない”ということ
このケースをさらに深く読み解いていきましょう。
厳密に言うと、学校は児童生徒のニーズまでは介入できますが、家庭の問題まで介入する権限はもちえません。
そうなると、このケースを教員が改善しようとすると
というようなパターンが多いのではないでしょうか。この場合、保護者は児童生徒の学習権を侵害する象徴となります。
それに対してスクールソーシャルワーカーは、今回のケースで
父親自身も困りを抱えている立場であるということを聞き取っています。
これは教員の対応が悪いのではなく、教員のもつ専門性はあくまでも教育に関することなのです。スクールソーシャルワーカーは、その福祉に関する専門性から、父親もアドボケイト(権利を代弁する・擁護する)必要があると考えたのでしょう。
子どもだけではなく、祖母の介護保険サービス利用や父親への相談体制の構築までの介入を教員に求めることは難しいだろうと思います。
学校に、色々な価値観・専門性のある職が入ることに意義がある
岸田首相は、教員が福祉的な専門性をもつということについて言及をしていました。
今、私は大学院で社会福祉について学んでいますが、それは
ということを考えてのことではありません。
教員には教員の価値観や正義・職務があります。でも、社会はそれだけではなりたっていません。複雑化していく社会の変化に対応するためには、教員だけでは難しいのです。
上記横浜のケースのように、学校教員以外の価値が注入されること。そのことにこそ、価値があるのではないでしょうか。
私は、教員が福祉の専門性を学ぶことを否定しませんが、子どものためにできることは、迅速にスクールソーシャルワーカー等の多様な専門職を学校に配置することなのではないかと考えるのです。