多様性を排除する世の中にならないか心配
こんにちは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。
今日は髪を切りに行きました。モジャモジャ先生から少し卒業したさみしさがあります(笑)
今日は、神戸大学の研究から考えられることを記したいと思います。
神戸大学の研究について
5月10日の記事で気になるニュースがありました。
気になってはいたのですが、重い重いテーマなので、なかなか書けずにいました。
以下が記事となります。
特発性自閉症の原因が明らかになったという記事です。
では、特発性自閉症とは何でしょう。
ということで、自閉症の中でも原因特定が難しい大部分の自閉症が”特発性自閉症”というものに分類されるということでした。
今回の研究結果のニュースは、
と言う言葉で結ばれています。
つまり、
自閉症の原因が胎児期の造血系統の異常である
胎児期の異常が原因で、脳や腸に免疫異常を起こしている
自閉症は治療対象とみなされている
という点がこのニュースから見られます。
なぜこのニュースが気になるのか
医学の発展は喜ばしいことです。多くの病理が解析され、治療が可能なものになっています。しかし、私はいくつかの観点から、今回の研究結果がもたらす影響を考えると、手放しには喜べないと感じました。それはまとめると
保護者感情の観点
自閉スペクトラム症は治療の対象なのかという観点
治らない・予防しない人を排除することにならないかという観点
という3点になります。
①保護者感情の観点
実は、自閉症に関しては、心理学会で様々な知見が出ています。
例えば、
という研究があります。しかし、この研究は確実性が高いのにもかかわらず、世の中には出回りません。そこには二つの理由があります。
発達障害は保護者原因ではないという前提条件がある。
ICT関連業界等からの反対が予想される
正確な研究成果が世の中で使われないということは別途考えなくてはいけない問題です。一方で、保護者感情・保護者心理に配慮をするということは、研究成果が100%に近い確度になるまでは必要であると考えます。
これまで、発達障害児・者の問題行動等については、保護者の育児や胎児期の関りを排除して考える考え方がメインとなっていました。
発達障害児・者の保護者は、自分の子どもの問題行動と言われるものに対して、必要以上に責任をもちすぎてしまうという傾向があります。我々はそこに対して積極的にアプローチをしてきました。
今回の研究結果は、今後の進展次第では保護者由来説が再燃する可能性もあります。注視する必要があると考えられます。
②自閉スペクトラム症は治療の対象なのか?
そもそも、自閉スペクトラム症は治療の対象とすべきなのでしょうか。
心理学的には、自閉スペクトラム症をはじめとする障害群は連続体として捉えられるべきだと考えられているはずです。
そもそも、自閉スペクトラム症の領域は”スペクトラム(意見・現象・症状などが、あいまいな境界をもちながら連続していること。)”です。非常に多岐にわたり、さらに広範囲であるため、多くの人が対象となるでしょう。
よって、日常生活で支障が出ている部分に関して投薬治療を行うなど、本人や周りの人に対する対処療法は効果的であると思います。しかしそれを根絶しようとするような予防医学への応用は、人間の多様性を阻害するのではないかと心配しています。
③治らない・予防しない人を排除することにならないか
この研究は、ダウン症の出生前診断のように扱われる危険性があるのではないかと考えています。
つまり、自閉症を”治す・予防する”という対象として扱うことにつながりかねないと考えています。
出生前にある程度の障害が分かり、それに対して心や環境の準備をするのであれば活用の理由が分かりますが、生命の選択という問題にならないでしょうか。
その先にあるのは、治らない・予防しない人を排除する世の中ではないかと心配しています。
多様性を認め合う世の中を作るのが先決
医学モデルというものは福祉モデルや教育モデルと反発し合うことがあります。そして、医学モデルの行うことがすべて正しいわけではありません。
今回の研究が有効に扱われること。
そして、それ以前に多様な人の考え方を反映し、それぞれが認め合える世の中になることが先決なのではないかと、特別支援学級の教員は思うのです。
自閉症の1年生と1年間関わってくれた6年生の女の子の言葉を最後に送ります。
では、またね~!