社会課題という言葉ー福祉側から教育を見てみるー
こんばんは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。今、社会人入学をして大学院に通っています。今日は大学院でよく聞く”社会課題”という言葉についてお話をします。
”社会課題”という言葉
本当に驚いたことに、大学院は、学部生時代と異なり、院生同士の会話で講義が進んでいきます。教授は講義をするよりはファシリテーターとして存在し、専門知識を基に院生の言葉をまとめていきます。
その中で、よく耳にする言葉が”社会課題”という言葉です。私は一つの大学院にしか通ったことが無いので、この傾向が社会福祉独自の考え方なのか、それとも大学院という場所がそもそも”社会課題”に向き合うものなのかは分かりません。
恥ずかしながら、一教員として”社会課題”というものについて考えたことは無かったので、日々刺激を受けながら過ごしています。
大学院で語られる、教育に関する社会課題はいくつかあります。
不登校という社会課題
こちらの記事で、”不登校に関する最終調査報告書”が画期的なものであったということについて語りました。
驚いたことに、私の大学院の同期が、この作成に深く携わっていたことが分かったのです。
多くの優秀なソーシャルワーカーと話をしながら改めて感じることは、不登校というものは
社会・カリキュラムの不寛容さ
家庭支援の不完全さ
子どもへの支援の行きわたらなさ
教育とその他の職種の連携の不足
といった社会側の課題であって、子どもや保護者の個人的な問題と切り離して考えるべきではないかということです。
難しいのは、問題化する時は”個人的な問題”として発生するため、教員はそこにピンポイントで対応しようと考えてしまうことです。
保護者支援の社会課題
社会福祉の理論史を学んでいると、家庭領域の社会福祉は
という考え方への否定の積み重ねであるということが分かります。
では、今の時代、”家族の問題は家族が解決すべきである”という考え方はゼロか。そんなことはありません。
上記の記事の中で、医療的ケア児の保護者が以下のことを言っています。
教育は今までこの部分になかなか向き合えずにいたのではないでしょうか。少なくとも私はハッとさせられました。子どもは学校が終わると家に帰ります。卒業すると教員とは離れます。でも、家族はずっと一緒です。
教育基本法の第10条が重くのしかかっている保護者もいるのではないでしょうか。
辛いと思ったときに、それでも頑張ろうとする保護者はたくさんいます。そんな時に
ということが気軽に言える仕組みを考えなくてはいけないと感じています。
私は、できることから。保護者の方に
と声をかけるようにしました。
性的役割分担・LGBTQsについての社会課題
大学院の授業の中で、性的役割分担についても話が出ました。
この項目に関しては、別途記事を10本くらい書けそうなくらい、様々な要素が絡み合っています。同期の方は
ということを教えてくれました。
”母性”についての話も出ました。”育児や介護は、母性をもつ母親に任せるべきである”という風潮は根強くあります。最近は父親も増えましたが、教育相談や個別懇談は母親が来ることが圧倒的に多いです。それは父親の働き方という社会課題の要素もあるかもしれません。
「教員の働き方」という社会課題
社会福祉側から見ると、教育現場は社会課題にあふれているということが改めて分かりました。
そして、一番の課題は”すべてを教育現場が解決しよう(すべきである)。”という姿勢・社会的要請なのかもしれません。
それは、教員の残業時間にも出ています。教員は基本的に残業代は出ません(詳しくは給特法で検索してください)。それでも、月45時間以上の残業は、校種平均で62%という数値が出ています。
学校福祉に関わっている同期の院生が、
と言ってくれました。
でも、教員は頼り方も知らなければ、頼る場所も知らない。頼った結果、どのような成果があるのかという成功体験もない。実は、この”頼ることができない”というのは教育の最大の社会課題なのかもしれません。
”社会問題”ではなく、”社会課題”
大学の講義の中で、教授が
ということをおっしゃっていました。
障害者問題だってそうです。障害のある方に問題があるわけではない。言葉尻の問題かもしれませんが、世間で発生する個人的問題の多くは、”社会課題”の結果発生しているのかもしれないという視点は必要かもしれません。
教育の可能性と素晴らしさ
社会福祉を学び、社会福祉の中に入り込んでいくことで、俯瞰的に教育を見ることができているような気がします。
そうすると、改めて教育の良さというものも見えてきます。
”社会的課題”を”個人の問題”として見てしまうということを、この記事では教育の弱点として書いてきました。しかし、言い換えると、”子どもの個を見る、個の成長を考える、個の成長を見据える”という専門性に変わります。
ある、スクールソーシャルワーカーが、
ということを教えてくれました。
教育の価値を知りながら、社会課題に向き合っていける。そんな教員になりたいものだと、そう思いながら学ぶ日々です。
では、またね~!