読書の記録(53)『光の粒が舞いあがる』蒼沼洋人 PHP研究所
手にしたきっかけ
高学年向けの本を探していてPHPの『カラフルノベル』というシリーズを知った。スポーツものはないかな~と見ていたら、題名と表紙のイラストに一目惚れ。一般的なスポーツではないかもしれないけれど、ボクシング!面白そう!と思って読んでみた。
心に残ったところ
プロローグからぐっと引き込まれた。ぐいぐい読んだ。まるで自分がボクシングジムで練習風景を見ているかのように、心愛がぐっと心を掴まれたのがわかる気がした。
Chapter1 透明な壁の向こうがわ で、登場人物の性格や家庭環境がさらりと書かれていて、読み手にすんなりと入ってくる。説明くさくなく、まわりくどくもなく、話の展開に夢中になっているうちに基本設定が頭の中にす~っと入ってくる。テンポもよくて一気に引き込まれる。Chapter1(47ページまで)を読んだだけで、この本私の好きな本!薦めたくなる本になりそう!と思えた。
こはくの性格もブレなくて素敵。学校に行っていないけれど、『不登校』と一括りにできないなあと思う。学校に行く理由や学校に行かない理由も様々だし、学校でも学校外でも学ぶことはたくさんある。学校や家以外に居場所があるなら、それもありなのでは?と思えた。
こはくを学校においでと誘う重森君のキャラクターもいいし、杏も辻さんもいい。こはくの対戦相手のユリアさんもいい。登場する人物がみんな魅力的。大人の方が流されてて、逃げてて、弱くて、ダメダメに見えてくる。心愛はまだ中学生だから親の庇護の元でしか生きられないし、大事なことに関しても決定権がない。たくさん我慢しながらも、母親に気を遣いながら生活している。本当はもっと甘えたいんだろうけれど、母親にはそれができる余裕がなくて、心愛は大人にならざるを得ないんだろうなあと思うとちょっと切ない。
母親にボクシングを否定されても、母親と向き合うことから逃げずに、自分の思いをちゃんと言葉にして伝えた。そんな心愛を心から応援したいと思った。
心愛だけでなく登場人物みんなが成長していると思う。中学生も母親も。読み終えた後は明るくて、前向きな気持ちになれた。読書感想文にも薦めたい良本だと思う。
まとめ
YA向けの本かと思って読み始めたが、小学校高学年でも十分読める本だと思った。字も詰まりすぎてなくて、ふりがなもほどよい。登場するのは中学1年生だし、ちょっと先の中学校生活を想像するのにもいいと思う。
本が好きな子にも、スポーツが好きな子にも両方にお薦めできる。「何か面白い本ない?」と聞かれたときに、「これ、よかったよ!」と自信をもってお薦めできる。
この本で蒼沼洋人さんを知ったので、他の本も読んでみたい。新たに好きな作家さんに出会えて嬉しい。