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実語教
皆様、実語教とはご存知でしょうか。
実語教とは平安時代末期に普及し始めた初学者向けの教科書です。
文字の通り実りある言葉の教えです。現代ではほとんど読まれなくなりましたが江戸時代までは寺子屋で素読や手習いとして一般的に活用されていました。当時は町人、商人、武士など身分関係なく皆この実語教を学びこの内容を心得ていました。
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簡単にどのような内容かというと、仕事や社会に出る以前の人としての部分についての重要さを説いた書物です。そのなかでは学問の重要性、人への接し方、自分を律すること、などが書かれております。全文にしたらそこまで長くなく10分前後で読めると思います。
僕がこの古典に出会ったのは、僕の好きなYouTubeのチャンネルで実語教の紹介と解説をしていてその内容に惹かれたからです。そしてすぐ購入しその日から夜寝る前に音読するという習慣になりました。
よく江戸時代の教育は当時の世界水準でもトップクラスだったということが言われますが納得できます。また文化や芸術が発展、確立していったのもこの時代でありこれだけではないでしょうけど、これらの背景があるのではないでしょうか。
まさに現代にとって必要な古典です。この国際社会、競争が激しいなかでこそ我々日本人が取り戻すアイデンティティではないでしょうか。ぜひ広まって欲しいです。
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具体的にいくつか書かれていることを取り上げてみます。
山高故不貴 以有樹為貴
山高きがゆえに貴からず 樹有るをもって貴しとなす
人肥故不貴 以有智為貴
人肥えたるがゆえに貴からず 智あるをもって貴しとなす
(訳)山は高いから尊いのではなく木々が生い茂っているから尊いのである。人も恰幅が良いから尊いのではなく知恵が備わっているから尊いのである。
これは一番最初に書いてあることです。
倉内財有朽 身内才無朽
倉のうちの財は朽ちることあり 身のうちの才は朽ちることなし
(訳)倉庫の中にある家財道具や金銀財宝は朽ちてしまうことはあるが、身に備わる才能は朽ちてしまうことがない。
欲達己身者 先令達他人
おのれが身を達せんと欲すれば まず他人を達せしめよ
(訳)自分自身が目的を成し遂げようと思う者は、先に[同じ目的を持つ]他人が成し遂げられるようによく助けよ。
個人的にこの文が一番好きです。
故末代学者 先可案此書
ゆえに末代の学者 まづこの書を案ずべし
是学問之始 身終勿忘失
これ学問のはじめなり 身が終わるまで忘失することなかれ
(訳)故に後世の初学者は、最初にこの書物をよく読んで思案すべきである。これは学問の始まりであり、この書物に書かれていることは死ぬまで忘れてはならない。
これが最後の文です。
本当に本質的なとこを突いていますね。ぜひ気になった方は全文お読み下さい。ネットなどにも掲載されてありますよ。