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映画「フライ、ダディ、フライ」ビジュアルブックを見て浸る年の瀬
私は好きになるとしつこい。
同じアーティストの同じ曲を延々聞いているし、同じアニメをワンシーズン分12回、何周も何周も見ている。
小説も繰り返し読んでは、同じところで泣いているし、どれだけしゃぶりつくせば気が済むのかと、自分でも思う。
「フライ、ダディ、フライ」は、そんな私が、人生で40回は軽く見ている映画だ。
何度見ても、やっぱりいいなあ、好きだなあ、と思う。
公開は、2005年7月9日。
今から17年も前だ。
しかし、私は公開当時、この映画の存在を知らなかった。
原作を書いた金城一紀は好きで、何冊か本を読んでいたのだが、子育て真っ最中の私には、映画より時間の融通が効く漫画や小説といったコンテンツの方が馴染みがあり、映画の公開情報に関心がなかったのだろう。
初めて「フライ、ダディ、フライ」の映画を見たのは、公開から12年後の2017年のことだった。
見終わった私は、堤真一演じる「鈴木一(はじめ)」と、岡田准一演じる「朴舜臣(パク・スンシン」にハートを打ち抜かれた。
「堤真一と岡田准一」に、ではなく、「鈴木一と朴舜臣」の、親子ほど年が離れた二人の間に、徐々に紡がれていく心の絆にやられてしまったのである。
そう、これは熱い漢たちの友情を描いた物語なのだ。
鈴木一は、高校生の可愛い一人娘がいる冴えないサラリーマンのおじさんだ。
恋愛結婚した愛妻がいて、郊外に戸建ての家を構え、平均的幸せを享受している。
重くのしかかる住宅ローンと、満員の通勤列車に絶望し、時々逃げ出したくなるが、それでも「人生とはこんなもんだ」と思ってやってきた。
あの日、一人娘の遥が他校の男子高生に理不尽に暴力を振るわれ、入院するまでは。
遙は体も心も傷つき、鈴木と口をきこうとしない。
鈴木の平和と幸せは、一瞬にして瓦解する。
復讐を誓う鈴木は、単身、包丁を握りしめ、遥を殴った男子高生(実はインターハイ・ボクシングチャンピオン)がいる高校へ向かうが、学校を間違えて……。
早とちりして乗り込んだ高校で、鈴木は、喧嘩戦法の達人・舜臣と、その愉快な仲間たち(ゾンビーズ)に出会い、自分の尊厳と愛娘の素晴らしい世界を取り戻すための特訓をスタートすることになる。
ひと夏で、素人のおじさんが、素手で現役インターハイチャンピオンを倒すために、肉体を改造し、ケンカ殺法を舜臣から叩き込まれるのだ。
「大切なものをとりもどすための、最高の夏休み!」という、キャッチフレーズそのまま、至ってシンプルな構造の映画である。
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映画をまだ見ていない人のために言っておくが、以下はネタバレしか書いてない。
私の好きな名シーンだけを、ずらりと紹介している。
まずは、先に映画を見てほしい。
おすすめポイントその1 山下のかわいさ
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ゾンビ―ズ唯一のボケ役、山下を演じたのは、坂本真だ。
オタク役が似合いそうだなあ、と思っていたら、案の定、電車男に出演されていた過去があった。
山下は、初登場シーンで、学校を間違えた鈴木に包丁を突きつけられる。
その後も、部室で派手にこけたり、階段から落ちたり、常に生傷が絶えず、いかにも不運そうな役どころだと思っていたら、入院した鈴木の娘・遥をこっそり訪ねるシーンでは、ついに屋上から吊るされる。
山下が、随所にこういうとぼけたシーンを挟んでくれることで、緊張感漂う男だらけの映画が、一息つける緩急のある仕上がりになっているのだと思う。
山下は、バランサーとして、この映画に絶対必要だった。
そして、山下役は、絶対に坂本真でなくては、できなかったと思う。
決して二枚目ではない、味のある個性的な顔が、最後には、守ってあげたい愛くるしい小動物に見えてくるから不思議だ。
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おすすめポイントその2 舜臣のかっこよさ
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私が語るまでもなく、岡田准一のカッコよさは、すでに日本中の津々浦々にまで知れ渡っていることだろう。
2023年も大活躍だった。
大河ドラマで魔王のような恐ろしい織田信長を演じた一方で、出身地の大阪府枚方市にある遊園地「ひらかたパーク」の超ひらパー兄さんとして「園長(そのなが)」をやり切っている。
ふり幅がすごい。
さすがである。
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その岡田准一の「身体能力」「見た目の麗しさ」「色っぽさ」が、すべて画面からはみ出しちゃっているのが、この映画「フライ、ダディ、フライ」だ。
彼は、本当は世の中にいないはずの「舜臣」というキャラクターを、「鹿羽高校に在学する実在の人物」として、強烈に存在させることに成功した。
キャラクターの実在感を、地面に影が焼き付くくらい見事に作り上げてしまったのである。
もちろん、映画が成功しているからこそ、虚構が現実に見えているのであって、岡田准一だけがすごいわけではないのはわかっている。
それにしたって、舜臣の役どころは、とんでもなくむつかしいのだ。
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在日二世のコリアンで、幼少期に通り魔に襲われ負傷した恐怖を克服するために、体と心を鍛え続けていて、そんな孤立しがちな陰のあるキャラでありながら、年齢相応に幼いところも出さなくてはならないなんて、誰にできようか。
旧ジャニーズにイケメン多しと言えども、こんな複雑な役をこなせる役者は、そうはいなかったんじゃない?
舜臣が、恐怖に立ちすくむ鈴木にかけたセリフは、今も私のお守りだ。
「なんでまだ何も起きてないことにビビってんだよ!恐怖は、喜びとか悲しみとかと同じで、ただの感覚だぞ!弱っちい感覚に支配されんな!恐怖の先にあるものを見たくねえのかよ?」
私は、このシーンを見るたび、そうだよな、そうだよな、ビビることなんて何もないんだ、と勇気をもらってここまで来た気がしている。
おすすめポイントその3 鈴木を応援する最終バスレギュラー
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この人たちは、鈴木が住んでいる「あびる野市」の公営バス最終便を利用する、サラリーマンである。
夜10時10分、駅前ロータリーを発車したピンクのバスは、まっすぐな住宅街の道を走り、6つ目のバス停で鈴木は降りる。
最終バスレギュラー陣は、皆、鈴木より遠くまで帰るのだろう、いつも鈴木は彼らより先にバスを降りる。
それはもう、何年も変わらない光景だった。
しかし、特訓を始めて、体力に自信がついた鈴木は、ある日、バスに乗らずにスーツ姿のまま、バスと一緒にヨーイドン!で走り出す。
最初は、「何やってんだか」と冷ややかな視線を送る、最終バスレギュラー陣。
毎夜淡々とバスの横を走り続ける鈴木を見ているうちに、少しずつ応援の気持ちが湧いてきた彼らは、鈴木がゴール寸前でバスに負けると、全員でがっかりするまでになった。
上の写真は、鈴木が初めてバスに競り勝った時のものだ。
みな、とてもいい顔をしている。
最後まで、名前も明かされないまま、ただ、同じバスに乗る人として描かれる彼らが、ここまで鈴木の健闘を喜び、讃えてくれるのだ。
「世の中って、怖くないよ。案外いいところだよ」というメッセージをひしひし感じる大好きなシーンだ。
おすすめポイントその4 大歓喜のラストシーン
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もうここまで来たら、ラストのネタバレもどんどん書いちゃうけれど、鈴木はゾンビーズのお膳立てで、二学期の始業式にチャンピオンの学校に乗り込み、校庭でチャンピオンと闘うことになる。
特訓の成果は、確実にその表情にも表れている。
視聴者に「これは、勝てるか?」と思わせておいて、先制パンチを食らい、鼻血を出しながら恐怖に引っ張られる鈴木。
しかし、彼は、弱い自分の心をはねのけ、唯一の勝ち筋めがけて突進すると、チャンピオンを文字通り地面に打ち倒すのである。
友情、努力、勝利! そして、遅れてきた青春!
「二度と俺の娘に近づくな!」
言い捨てる鈴木。
歓喜に湧く、ゾンビーズの面々。
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上の写真は、その決闘会場を取り囲んだ、ゾンビーズとその協力者たちの様子だ。
奇抜な衣装に身を包み、幟旗を風になびかせ駆けまわる高校生男子たちのシーンは、何度見ても爽快感しかない。
一緒になって「うぉー!」と叫びたくなる。
鈴木は、己の尊厳を己で回復したすがすがしい表情で、入院中の遥を迎えに行くために走り出す。
おまけ
長々と、映画について語ってしまったが、もともとは、2023年に買ったものの中で一番よかったものをお勧めする、というnoteのお題について書きたかったのだ。
本筋に戻る。
私の今年のベストバイは、これ。
今頃と言われようと何だろうと、これったら、これ。
でも、映画を見ないと、この良さは伝わらないので、まずは映画を見てほしい。
**連続投稿697日目**
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