お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー/若桑みどり

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読了日2019/10/3
女は生まれた瞬間から戦士となるべく宿命づけられている。
現代を生きる私たちが後世の彼女たちにしてやれることは、この世を「ふつう」に生きていける世界にすることだ。

「女たちよ、目覚めなさい」

私たちはいばら姫。
眠りについていると、あら不思議、目が覚めたときにはそばに王子様がいるの。

いるわけがない。

現代どころか日本国に王子様なんて存在はいなくて、いたとしても王子様(笑)止まりが関の山だ。

なぜ私たちは王子様を待っているのだろう。

私はあまり、プリンセスストーリーになじみがなかった。
というのもプリンセスとは「かわいい」女の子しか憧れてはいけないと思っていたのだ。

私は生まれたときから少々ガタイがよろしくて(170センチで止まったと信じている)、周囲から「かわいい」女の子扱いをされたことがない。
むしろ父親から「ブス」と言われるほどである(大人になった今なら照れ隠しだの不器用だの理解してやれるが、幼少の折より言われたその数々の罵倒で私の自尊心など跡形もない)。
アイドルの○○くんに熱をあげても「お前が○○にかわいいね、なんて言われるわけがない(笑)」という始末である(そんなの分かっているし、なんならお前の子であるし、私は父親似と評判だからな)。
そんな経緯からか、私の美的感覚はねじ曲がった。自分のメイクも濃いのだが、その比じゃないものを好きになった。
そう、ビジュアル系バンドである。化粧を施した男たちだ。ブスを隠すにはメイクを濃くして髪を伸ばして派手に染めて目立つ服装をして、とにかく私自身から「ブス」を消そうと躍起になった。東北の片田舎ででかい図体の女が厚底ブーツに黒のタンクトップ(安ピン武装)に黒のジレに黒のロンスカ(or某G盤の上手ギターような太もも部分だけが空いてるパンツ、最近めっきり見ない)という、今思えば母親はよく何も言わずにこんなやつと買い物に出ていたなってレベルだった。

流石に今は落ち着いた(多分)。

話は脱線したが、私はプリンセスとは縁遠い存在であると思っていた。

だが、私も女だった。

20歳で上京して専門学校に通ったはいいものの、慣れぬ環境で体調を崩して泣く泣く田舎に帰った。その学校では恋人ができたのだが、遠距離恋愛である。
私はその時にはもう彼と結婚するつもりだったから、はやく迎えに来てほしいと思っていた。そして4年後、大学を出たばかりの友人がデキ婚してので嫉妬心で縁を切り八つ当たりを彼に加え音信不通になり、さらに数年後別な友人の結婚式に出席して「彼とは一年の遠距離恋愛がありましたが毎月会いに来てくれて……」というストーリーを聞いて独身恋人なし職なしの私は悟った。

私は完全にお姫様コンプレックスを抱いて生きていた。

本書では「シンデレラ・コンプレックス」「白雪姫・コンプレックス」「いばら姫・コンプレックス(言葉こそは出てこないが、ある)」と様々なプリンセスストーリーに絡めたコンプレックスが登場するが、共通項がある。

それは
「待っていれば王子様が来てくれる」
というものだ。

私はそれを信じていた、というのを今は亡き恋人(死んでない、多分。死んでてくれたらとは少し思う。再会したら何するか自分でもわからん)に話したことがある。
私はお姫様の中なら、いばら姫になりたい。だって眠ってれば王子様が来てくれるんだよ?楽じゃん!

ほんっとうに浮かれていた当時の私である。あの時なら空も飛べてたよね、飛べるはずどころか絶対飛べたわマジで。人生初の恋人だったせいもあって、頭の中がまさしくお姫様だった。
そう、いくら女の子扱いしてもらえなかったとしても、プリンセスストーリーを読んだ記憶がなかったとしても、私も根っからのお姫様コンプレックス女だったのだ。

じゃあどこまで掘れば、私の人生に刷り込まれたジェンダーを認識できるのか。

結論、わからん。

なぜなら、悲劇的なほど私の生まれた土地が田舎だからだ。
親の背中を見て子は育つ。言われたことはやらないが、やっていることはすなおに覚える。
子というものは本当、ままならないもんだ←何様

また少し話はずれるが、私は今も小説家になるべくせっせと新人賞に投稿している。夢を追えるなんてスゴいと大卒で就職してイケメン公務員と結婚した友だちに言われたが、嫌味を言う子じゃないこともわかっちゃいるのだが、まあ私はいずれ斎藤工様と運命的な出逢いを果たすので良い事にするが、別に夢を追ってるわけでもスゴいわけでもない。

私は一生やれる仕事に就きたい。
もちろん小説家が一生やれるかどうか、続けられるかどうか異論はあると思う。だからより正確に言うのなら、私は実力があれば続けられる仕事に就きたいのだ。
私の母もだが、結婚と同時に(妊娠もしていたので)仕事をやめた。その後しばらくして働きだしたが、もちろんパート。母自身は多分、最初から自分の人生は自分のものじゃなくて結婚で左右されるとわかっていたから、やりたい仕事も何もなかったのだと思う。やりたい仕事なかったの?と聞いても曖昧だったもの。そうじゃなくても私はパートとかレジ打ちとかライン工とか、とにかくそういう仕事に就きたくなかった。自分の身一つでやっていける仕事をしたかった。

なぜか。
やりたくもない仕事に就きたくなかった。
これに尽きる。
結婚して子育てで家庭と両立するために、自分のやりたいことを諦めます。でも家計はキツイから働かなきゃいけないから、スーパーでパートやります。
田舎にはこういう女性がほんっとめっっっっちゃくちゃいる。なんなら同級生にざらにいる。そういう姿を見てると、まあ、結婚も妊娠も出産も子育てもうらやましいんだけどさ、本音、ああはなりたくないって思うの。

しかもこのご時世、いつ何があって離婚するかわからんよね。
そうなったとき、私は子どもを養いながら働かなきゃならん。その時、子どものためには仕事なんて選んでいられない? ごめん私は選びたい。今は独身子なしだからそう思うって声はあるだろうけど、私、自分で選んだ仕事をやりたいの。

女優の波留さんが出演していた「サバイバル・ウエディング」ってドラマがあった。主人公の波留さんが狙っている王子こと吉沢亮さんがインドで起業したいから結婚してついてきてくれないか、って彼女にプロポーズしたの。でも波留さんは悩む。今の仕事(雑誌の編集者でライター)もやり続けたい、でも彼とも結婚したい……(というか彼と結婚できなければその編集部からはクビにされるっていう話だった)。
で、彼女に結婚できなきゃクビ宣告をしていた編集長が言うの。
お前がインドにいようと、オレが仕事をやる。インドでの生活を書けばいい!(うろ覚え)って。

私このドラマ流し見だったんだけど、感動した。
そうだよそうだよ。結婚したって諦めなくていい仕事ってあるじゃん。
で私が出来る✕やりたい仕事って考えたら小説家にたどり着いたわけ。十代のころ。そして紆余曲折でまだなれてない。サイアクかよ。

脱線しまくりだが、ジェンダーの話である。
私は私自身、ジェンダーになど縛られていないと思っていた。
でも実際、恋人だと思っていた人に待ちの姿勢でいたら姿を消された。
でも彼は正しい判断だったと思う(恨んでるけど)。だって待つしかできない私みたいなプリンセスにもなれない顔面偏差値底辺校の女と縁を切ったんだから、彼の人生にとっては正しい選択だった。私は彼に「男」としてのジェンダーを押しつけて、自分の「女」としてのジェンダーをまっとうしようと必死だった。なぜか?楽だから。そして逃げたかったから。何から?ジェンダーを押しつけてくる田舎から。
笑うよね。ジェンダーから逃げるためにジェンダーで恋人ぶん殴ってた。
連絡が来なくなったときはさみしかったけど、私から逃げられてあの男は本当に幸運だったと思う。

あんなやつ王子様じゃなかったってキレるのはお門違いだった。
あんなやつどころか、この世に王子様なんかはいないし、お姫様なんてものもいない。
お姫様なんかじゃない、と思っていた自分こそお姫様になりたかった「ふつう」の女の子だったわけだ。

切ねえ……。

現状、私はそれでも王子様を待っている。新人賞というお手紙を出して、出版社から伝えられる新人賞受賞デビューという王子様を待っているのだ。

これもコンプレックスが抜けないがゆえの待ちの姿勢なのだろう。

私が後世の女たちにしてやれることは、多分、私の遺伝子を残さないことなのではと最近強く思う。

……だから結婚願望とか子育て願望とかはやく消えてくれねえかな!

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