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「イクメン」は日本の伝統に適った父親像

「イクメン」というと近年出てきた新奇な風潮で、これに対し一定数眉を顰める人もいたりする。女性が家事育児ワンオペで男は外で働く、というのが「伝統的」だと誤解されているからだが実際にはそれは伝統でもなんでもなく、例えば近代以前、江戸時代は今でいう「イクメン」こそ一般的だった。

江戸時代中期の「父兄訓」という父親向けの育児書によれば、「子の性格は父親の教育で決まる」「父親は胎教から育児をやるべし」といった事が書かれている。子供の遊びに関わる事も主に父親の役割だったらしい。当時日本を訪れた外国人が「日本は子供の楽園」と書き記した文献も多くあり、例えば明治初期に訪日した英国人旅行家イザベラ・バードは、

『毎朝6時ごろ、12人から14人の男たちが低い塀に腰を下ろして、それぞれ自分の腕に2歳にもならぬ子どもを抱いて、かわいがったり、一緒に遊んだり、自分の子どもの体格と知恵を見せびらかしているのを見ていると大変面白い。』

と、父親が積極的に育児している様子を著書に書き残している。

訪日外国人たちが驚嘆したのはそれだけでなく、子供が体罰を受けていない事にもあった。西洋では親や教師は鞭で打つなど体罰で子供を躾けてきたのに対し、江戸時代までの日本の育児にはそれがなかった。体罰はあくまで西洋の風習を取り入れた明治以降で、例えば数ある浮世絵の中でも子供の虐げられてる絵を見ないのはその事実が無いことを示してもいる。「イクメン」こそ実は日本の伝統に適った父親像なのであり、それを揶揄中傷する愛国者気取りのネトウヨこそ、日本の歴史を実は何一つ知らないのだ。

昔は乳児死亡率が高く「子は宝」の意識も今より強く、明治以前は職住接近だったから「イクメン」であり得たというのはもちろんある。ただやっぱり明治以降の家父長制「男尊女卑」が支配的になり、そこで男が決定的に育児から離れてしまったと思う。

だから「専業主婦」というのも「サラリーマン」という働き方が一般化した高度成長期の現象にすぎず、日本の伝統だったわけでも何でもない。そして「専業主婦」のもと育児経験ないままの男が老人になり、ベビーカーが邪魔だとか公園の子供が煩いとかわめき散らし、無自覚に少子化に拍車をかけ続けている。それが今の日本。

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