あの子の日記 「織姫様は別のひと」
日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集
商店街の屋根から聞こえる雨音が星屑みたいにきらめいている。居酒屋から出てきた顔の赤い人たちは、天井から吊り下げられた吹き流しに気づかないまま駅のほうへ歩いていく。
七夕を目前にして、日常に入り込んだ祭りの雰囲気は、まだこのまちに馴染めていないらしい。どこからか吹いた風は私の前髪をやさしく撫でて、さらさらと揺れる笹の葉の居場所を教えてくれた。
静かな通りにポツンと設置された小さな笹には、色とりどりの短冊がぶら下がっている。