あの子の日記 「透明スプーン」
日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集
朝の電車は太陽を目いっぱい浴びて、線路に光のかけらを落としながら走っていく。
同じ車両の知らない人たちは目を細めながら縦や横にゆらりと動く。眩しいのか、眠たいのか、そんなことは知らないけれど。
僕は窓のそばで目を閉じて、まぶたの裏に透けたオレンジ色の海を眺める。
海の優しい波に乗って一瞬キラリと輝いて見えたのは、昔どこかに忘れてきてしまった透きとおる感情だった。
浮かんでは沈み、波に飲まれて姿を消して、また浮かんで光を反射する。海と戯れていたこの感情と偶然また目が合った僕はなんて幸運なんだろう。
もう二度と失くさないように、一さじすくって、僕の体に流しておこう。
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あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。