あの子の日記 「無糖の甘み」
日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集
いい香りの茶色い大地がふくふくと膨れあがる。じいっと見てみると、膨らんだコーヒー豆だった。
不思議だなぁ、今日の夢には香りがある。
そんなことを考えながら目を覚ますと、花びらが開いたようにふわりと広がるコーヒーの香りに包まれた。
早起きの彼とおはようを交わして温かいカップをひとつ受け取る。毎朝こうしてソファに並んで座るのは、同じ方向を見ていたいから。
心地よい沈黙のなか、少しだけミルクを入れる私を見て彼がくすっと笑う。
「おれたちの生活も、こんなふうにゆっくり混ざり合っていくんだね」
照れ笑いする二人の間に流れる時間はこの上なく幸せで、やさしい茶色のコーヒーは、ほんのちょっぴり甘かった。
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あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。