司法書士髙野守道

葛飾区の中川のほとりにいます。成年後見と相続を中心に司法書士業務全般を取り扱っています。

司法書士髙野守道

葛飾区の中川のほとりにいます。成年後見と相続を中心に司法書士業務全般を取り扱っています。

最近の記事

活用する成年後見制度2       ~やめられるの?やめられないの?~

1 成年後見制度はやめられない?  「成年後見制度は一度始めたらやめられない」  皆さんも一度は聞いた事があるのではないでしょうか。  ある意味正しく、ある意味間違っている。私はそう思います。なぜ、そう思うのか、以下に記します。  成年後見制度は、民法のなかの「行為能力」という節に規定されています。特に第7条から第19条あたりが補助・保佐・後見の各審判に関するものです。これらの条文から離れて後見制度を語ることは、登記で言えば甲区がないのに乙区の確認をするようなものです。

    • ノブのないドア

       ノブのないドア。  一見すると、なんだか詩的な、なんだか文学的な、なんだか抽象的な印象を受ける表現だけれども、よく考えてみてごらん。  ノブのないドア。  それは、開けたくても開けられないドア。ドアの向こうに行きたいのに、行くことができないドア。なんてことのないドアなのに、のぞき窓から向こうが見えているのに、ノブがないばっかりに、自分の意思では開けられない。だって―ここは刑務所だから。  畳3畳ほどのスペースに衝立の向こうのトイレと洗面台があるだけの部屋。窓はある。南側の

      • 活用する成年後見制度

        第1 はじめに  こんにちは、川のほとり司法書士事務所の髙野守道です。私の事務所では、成年後見業務が最も多い業務です。その原因は、もともと私がやりたい業務であったこと、自分で自分に向いていると思える業務であったこと、があります。他の方がやりたがらない案件でも断ることなく受任し続けています。  受任し続けていると言っても、登記業務と違い、次から次へと膨大な数をこなしていくものではありません。就任すれば、原則、ご本人か私が亡くなるまでのお付き合いになります。年単位、十年単位で

        • 推定相続人廃除申立却下審判に対する即時抗告事件(仙台高裁決定H29.6.29)

          【掲載誌】 判例タイムズ1447号99頁 LLI/DB 判例秘書登載 【評釈論文】 民商法雑誌155巻1号189頁 家庭の法と裁判13号43頁 関係図 時系列 H22 被相続人が、全財産をAに相続させること、Bを廃除すること、Aを遺言執行者に指定することなどを含む公正証書遺言を作成する。 H24 被相続人死亡 H25 AB間の遺留分減殺請求訴訟において、AがBの遺留分を認める裁判上の和解が成立する。 H28 Aが、遺言執行者として、仙台家裁に対し、Bについて推定相続人廃

          思うに

           一見無駄に見える時間こそ人生に味わいや面白味を与えてくれるから困る。

          あゝ司法書士

          はじめに 司法書士になった理由を聞かれて「困っている人の力になりたい」と答える者は、思いのほか多いものである。かくいう私もその一人であった。司法書士の業務範囲など正確に理解しないまま持ち前の明るさを武器に司法書士試験に合格し(困っている人の役に立ちたいと思って司法書士になったのはいいけれど、どういう仕事があるのかよくわからない。さて、どうしよう。)と思ったのが懐かしい。  困っている人って具体的に誰?と言われると、意外と答えが見つからない。思い付いたとしても、仕事になるのか

          アンカーよ、ありがとう

          なぜ彼は走ったのか ゴール手前、彼は全速力で走った 少なくとも私にはそう見えた 勝負は数分前に決していた 第100回箱根駅伝 彼がゴールする数分前に 青山学院大学のアンカーが 優勝のテープを切っていた それでも彼は力を入れて走った なぜだ もう勝つことはできない 追ってくる者は見えない 何をどうしたって2位は決まっている だけど彼は走る 全力で走る 意地か 自己ベストか 監督に怒られるからか 沿道の応援に応えるためか 仲間のもとに早く戻るためか それとも君がランナ

          アンカーよ、ありがとう

          明日のない今日を

          明日はやってこないかもしれない それは誰の身にも起こり得る いや、正確には 誰の身にも「必ず」起こる 明日のない今日は 誰にも必ずある それがいつなのか 誰も知ることはできない だから今日を ありがとうと あいしてると 笑顔で

          明日のない今日を

          ラグビーは人生だ

           前に進むためには後ろにパスをする。  キックで前に進むのは構わない。  しかし、確実性は落ちる。  確実に前に出たいなら、痛い思いをしてぶつかっていくしかない。  突然ブレイクスルーが訪れる。  ときに思わぬ方向にボールが弾む。  誰かがカバーしてくれる。  重い奴、速い奴、でかい奴が必要だ。  一人で全部やる必要はない。  辿り着いた先は、トライ。  まだゴールとは呼ばない。  挑戦の場だ。  まだ先がある。  ゴールを決めるチャンスを得たにすぎない。  同じこと

          ラグビーは人生だ

          司法書士と人の死

          1 死に関する司法書士の仕事 司法書士の仕事は、人の死に接することが多いです。  ・相続登記の代理  ・遺産承継業務  ・遺言書の作成支援  ・遺言書検認申立書の作成  ・遺産分割調停申立書の作成  ・相続放棄申述書の作成  ・相続財産管理人選任申立書の作成  ・相続財産清算人選任申立書の作成  ・不在者財産管理人選任申立書の作成  ・失踪宣告申立書の作成  ・死後事務委任契約  あっという間にいくつもの仕事が頭に浮かびます。  最も直接的に死に関わると思われるのは、後見

          司法書士と人の死

          明日はじめて後見開始等申立書類作成を受任するかもしれない司法書士が今夜ぐっすり眠るためのノート

          ※後見開始等申立書類作成の仕事を弁護士・司法書士以外がやるのは司法書士法違反になると思われますのでお気をつけください。 1 はじめに  物事には何でも最初がありますよね。いきなりベテラン、いきなり経験豊富などということはあり得ないわけです。それは後見事件においても同じで、通算200件受けている先生も、100件の先生も、50件の先生も、3件の先生も、誰にだって1件目があったはずです。その1件目に臨むときはみんな緊張し、(明日の面談はうまくいくだろうか)というような不安を感じた

          明日はじめて後見開始等申立書類作成を受任するかもしれない司法書士が今夜ぐっすり眠るためのノート

          甲乙つけがたい話

          1 契約書の当事者表記  いつのころからそうなのか、トンと検討もつかぬ話でございますが、世に言う法律家などと称する者たちが作るいわゆる契約書と呼ばれるものにおきまして、その契約の当事者、例えば、山田さんと田中さんとしましょう、この山田さんと田中さんの表し方を、その契約書のなかにおいては、一方を甲、他方を乙などと表すわけであります。  山田某、田中某などと本名が出てくることは、まぁ、多くて2回、下手したら1回のみ、なんてこともあるわけです。  では、山田某、田中某が現実世界

          甲乙つけがたい話

          『臨床現場に活かす哲学的思考』を読んで

           『臨床現場に活かす哲学的思考』(奥村茉莉子・池山稔美編著、金剛出版、2022年)を読んで思ったこと。  本書は、「はじめに」と「おわりに」を除いて全7章で構成され、6名が執筆している。そのなかの第7章のある記述から少し考えてみたい。  『会社とか上司部下というのは、実は固有の実体をもったものではなくて自分を含めた社会の約束事だ。同じ虚構を信じることによって実体としているにすぎない。』(p209)  なるほど。仰るとおり。会社は実在しない。目には見えない。目には見えない

          『臨床現場に活かす哲学的思考』を読んで

          後見業務のすゝめ

          はじめに  司法書士の業務は、登記を筆頭に書類作成が中心であり、対人支援である後見業務が中心ということはありません。これは、司法書士の歴史を考えれば当然と言えるでしょうし、LS(リーガルサポート)に入会している司法書士が全司法書士の約3分の1程度であることや、後見業務を数件受任したあと後見業務から撤退する司法書士がいることなどは、それを現す事実と考えます。さらに、LSに登録している司法書士のなかで後見業務を自らの司法書士業務の中心にしているという人は、それほど多くないという

          後見業務のすゝめ

          時空を共有すること(一緒にいること)

          人生の幸せはどこにあるのか。 永遠のテーマと言っても過言ではないこの命題に対して、突然、頭に浮かんだのが標題の考えです。時空を共有すること。時空を共有することは人生に幸福感をもたらせてくれる可能性が高い、そんな風に思います。 時空を共有することとは、簡単に言い変えれば、誰かと一緒にいることです。 コロナ騒動が終わりつつあり、外で誰かと飲食をする機会が増えました。ただただ、楽しいです。 すごい料理を食べたとか、珍しいお酒を飲んだとかではないのに、楽しい。考えられるのは、

          時空を共有すること(一緒にいること)

          『レジリエントに生きたい』を読んで 

           「レジリエントに生きたい」(古橋清二著、民事法研究会、2022年)を読んで思ったことです。 1 書籍のこと  著者は、「司法書士としての経験やノウハウ、魂みたいなものを次の世代の人たちに伝えるために」原稿を準備していたらしく、その内容は「一口で言えば、24時間、神経を過敏にして依頼者、社会のために尽くせ」というものを予定していたそうです。  しかし、癌を宣告され、癌になった原因を自らのハードな執務姿勢にあると分析したことから同じような生き方を勧めるわけにもいかなくなり

          『レジリエントに生きたい』を読んで