【読書感想文】伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』
伊坂幸太郎著『ペッパーズ・ゴースト』、
ポストカード付き初版本をゲットです。わっくわく。
この世界の嘆きは深い。
喜びの方が、深い悩みよりも深い。
すべての喜びが永遠を欲しがっている。
魂が震えるほどの幸福を!
喜びがあれば深い悲しみを帳消しにできるわけではないと思うけれど、救いにはなる。
どうにもならないことは、どうにもならない。
だから、忘れるということを、覚えておく。
物語は、中学校教師・檀が、猫を愛する奇妙な二人組“ネコジゴハンター”が復讐をはじめる小説原稿を、生徒から渡されるところから始まります。
そんな檀は、ちょっとだけ他人の未来の見えちゃう不思議な力を持つことから、サークルと呼ばれるグループに関わり始め、思わぬ出来事に巻き込まれていくというストーリー。
そんな今作はニーチェ著『ツァラトゥストラ』を引用しながら、ストーリーが進んでいきます。
いまだに何通りも解釈の仕方があるニヒリズムを、登場人物それぞれがあらゆる事件や過去の苦しみ・悲しみと結びつけながら、自分なりの解を紡いでいくさまが、もうとにかく深くて。
「私だったらどう行動するだろうか、どう考えるだろうか」自信と照らし合わせながら、1ページ1ページを読み進めていきました。
たぶん、主人公も、サークルのメンバーも、ニーチェのいうところの“超人”になって、世界に新たな価値を与えた、ということなんだろうな。
"運命愛”を受け入れたのかどうかは、分からないけれど。
↓こちらの解説が分かりやすいので貼っておきます**
そして、何と言っても、ネコジコハンターが、魅力的。
どこかずれていて、でも憎めなくて、だんだん愛らしく感じて、あ〜今もどこかで暮らしてるかなあ、変わらずに元気でいて欲しいなあ、なんてフィクションに思い馳せちゃうほど魅力的なキャラクターに出会えることが、伊坂先生の作品を味わう醍醐味だと思っています。
今作もとても素敵な物語をありがとうございました。