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エッセイ

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2022年5月の記事一覧

いまはもういないあの場所に、いつかいた二人の幻を見る

いまはもういないあの場所に、いつかいた二人の幻を見る

アルノー・デプレシャン監督の、レア・セドゥのいつわりを観る。
いまやめっきり映画館で映画を観る時間も体力もなく(ゆえ、ダニエル・シュミットもブレッソンもアケルマンもリヴェットもロブ・グリエもほとんど観られていない…)、久しぶりの自宅での鑑賞。

デプレシャンについては、いやカラックスもべネックスもアサイヤスも、コンプリートして観てるわけじゃない(いつかそうしたいけど)。
あの頃、エッフェル塔の下で

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そうやって音楽を選んでいる時がいちばん楽しそうに見える

もう3年も前になるのか、記録を手繰れば、facebookの記事に、この季節の記事が残ってる。ストロベリームーンという、なんだかきらめいていた夜。

僕はちょっとどうかと思うくらいには、ひととうまく喋れないひどい状態で、その時にもだけど、いつものバーでiPhoneを繋いでYOUTUBEから、音楽をかけていた。無我夢中で午前0時からお店が終わる朝5時まで。

それがDJと呼ばれるものだろうが、はたまた

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ブライト・アイズについて少しだけ

ブライト・アイズのフルパフォーマンスまでYouTubeにはあるんだね。
LUAから始まるって事は、
何枚も買い直してる、I'm wide awake,it's morning期かな。
たぶんリキッドルームで見た時期の。

Lifted or The Story Is in the Soil, Keep Your Ear to the Groundは衝撃だった。
特に、最後に置かれた、10数分のLe
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小さな声を拾う

ここのところまた調子が良くない。

ひとりなのに、ひとりになりたいと思う。

誰といても、気付いたらずっと聞き役で、

今日も誰とも話してないな、と思う日が増えると尚更。

大きな声が鳴り響く時、そっと僕は音楽に逃げ込む。

大きな声が掻き消していく、小さな、まだ言語化されていない感情が更に乱れて、それはもっと静かに、あるいは消えていく。

死にたいと思ったことはない。消えたい、たまに思う。

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音の中だけが自分の居場所

久しぶりに(それはもう本当に久しぶりで、約20年振りになるだろうか)、
通勤中にヘッドフォンをしている。
ちょっとだけ、外の世界のノイズを遮断したい。
それで辿り着いた、YouTubeでのAndrew Weatherall live @
303 Liverpool Bithday という4時間半の動画を、携帯をポケットに入れて、
音を少しだけ大きくしたり、小さくしたり、左手で調整しながら、
先週、

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蛍の光りと煙草の火はどちらが明るいのかねぇ?

夕暮れ時、彼女のお姉さんが不意に呟く。
例えば三人と一匹で歩く道すがら。彼女は笑い出す。
彼女たちの飼っている犬のペコちゃんが、僕たちを振り返っては、
また歩き出す。
「お姉ちゃんとGちゃんはあたしの趣味なんだなって、思ったよ」
その晩、僕の小さな部屋で、お布団に寝っ転がって、彼女は呟く。

ふたりで選んだ映画を観ている。彼女はお布団から画面を見上げている。
その彼女の美しい背中を、僕はソファーか

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