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100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで

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病気の記録です。ゆっくり更新中。
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100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #4「むすんで、ひらいて」

100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #4「むすんで、ひらいて」

(前回まで)

むすんで、ひらいて

 訪問看護でラジカットの点滴を受け始めた頃から訪問リハビリも受け始めた。理学療法士による身体機能のリハビリと、言語聴覚士による言語・嚥下機能のリハビリの二種類だ。
 ALS患者のリハビリの目的は、機能回復ではなく現状維持。疲れるほど頑張ると病気の進行を早めると言われているのでやりすぎ禁物。物足りないくらいがちょうどいい。そのときの「今」の状態ができるだけ続くこ

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100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #3「投薬開始」

100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #3「投薬開始」

(前回まで)

投薬開始

 ALSの進行を遅らせる薬はリルゾールという経口薬とラジカットという点滴薬(当時)の二種類があり、私はまずリルゾールを服用し始めた。口以外の変化はまだ感じておらず生活はそれまで通り。日課のランニングも続けた。
 検査入院から数ヶ月過ぎた頃にはますます呂律が回らなくなり、発音できる言葉が限られてきた。カ行とラ行は特に言いづらく、飼い猫ラッキーの名前を呼び続けても猫は怪訝な

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100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #2「診断」

100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #2「診断」

 前回まで→#1

診断

 神経内科のある大きな病院でもこれと言う原因はわからず、経過観察となった。世間では新型コロナウィルスの感染拡大が始まっており、病院は物々しい雰囲気だった。
 この頃から少しずつ咽せることが増え、舌足らずというより酔っぱらいのような喋りになっていった。健康診断ではバリウムを誤嚥し、盛大に咽せて検査室をバリウムまみれにしてしまった。そのことを医師に話すと検査入院することにな

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100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #1「発症」

100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #1「発症」

 快食快便快眠、病気知らずの43歳。それが当時の私だった。有り余る体力は数年前から始めたマラソンにストンとハマり、平日は出勤前にランニング、休日は知らない道を探検しながら数十キロ走った。家族で出かける時も夫と小学生の息子は車に乗り、私は走って現地に向かった。ひとり黙々と走る時間は自由で楽しかったし、走り終えた後のビールは至福だった。ハーフマラソンやフルマラソン、さらに100キロマラソンも走るように

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