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100キロ走れた私がALSになり老人ホームに入るまで #5「病気とカネ」


 ALSと診断されてまず心配したのはお金のことだ。早晩働けなくなる未来は見えている。住宅ローンはたっぷり残っている。育ち盛りの息子もいる。介護ベッドや吸引器などの療養グッズも必要になる。障害福祉や介護保険、年金制度について調べ、私の頭の中のそろばんをはじいた。

 退職後、まずは障害年金の申請にとりかかった。年金事務所の相談は完全予約制で1回45分と決められている。時間内にスムーズに相談を進めるため、社会保険労務士さんのYouTubeを見て障害年金の申請方法について予習し、申請に必要な自分の情報や質問をまとめてから臨んだ。おかげで相談員の方の説明をすんなり理解でき、喋れなくても時間内に相談を終えることができた。
 ただ、障害年金は1回の相談だけでは申請までたどり着けない。面倒だが何度か通って、その都度指示される書類を作成したり医師に依頼したりして次に進める。私の場合は約2ヶ月、3回の相談で申請でき、それからさらに2ヶ月以上経過してから受給が決定した。

 年金事務所のほか役所にも介護保険や障害福祉の手続きに行ったが、ひとりで移動できないのですべて夫の母が付き添ってくれた。なぜ夫ではなくその母なのかというと、この頃、夫は私以上に動けなくなっていたのだ。

つづく

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