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2020年5月の記事一覧

Herman Melville, _Pierre; or, the Ambiguities_

 主要人物がみんな昔の二人称単数代名詞である"thou"で喋るのが面白く見えて仕方ないのだが、…

ギュンター・グラス『猫と鼠』、あるいは全ての魔法について

 小説を褒めるときにすぐ「マジカルだ」と言ってしまうのだが、それは言葉がまさに魔法だから…

サルトル『嘔吐』

 わたしたちのうち何人かは、自分がやがて死ぬことに気付いて震えが止まらなくなったり、今生…

トーマス・ベルンハルト『消去』池田信雄訳、みすず書房

 ローマで暮らす語り手が、オーストリアの実家(大金持ち)から両親と兄が死亡したという電報…

ウラジーミル・ソローキン『ロマン』望月哲男訳、国書刊行会

 プロローグが完全に嘘をついている小説が面白くないわけがないのだが、完全に嘘、といってし…

磯野真穂『ダイエット幻想 やせること、愛されること』

 領域横断的で、そしてとても優しい本だと思いました。  工業化の進展にともない、誰もが簡…

ポン・ジュノ『スノーピアサー』

 あんまり映画を観ていないのに他の映画と比較するのも気が引けるけれど、ニール・ブロムカンプの『エリジウム』と同じ年なんだあと思った。「なんだなあ」じゃないんだけど、この2つはどちらも階級闘争を戯画的にというか、極めて分かりやすく物語仕立てに扱っていて、劣悪な環境に暮らす主人公が監視の目をかいくぐりながら富を牛耳っている支配階層をやっつけることを目指すところから始まる。  『エリジウム』は『第九地区』に比べると脚本の見劣り振りが激しい。余命幾ばくもないヒーローがうおーって革命

Aldous Huxley, _Brave New World_ (1932)

 これは整った小説で、整った小説について言いたいことというのはそう多くない。  civiliza…

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』

 ドラマとかインタビューとかで何かに夢中な人やとても頑張っている人が出て来ると、どうして…