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#163 モニカとビル

このアルバムを僕は、中学生の時代に聴いていた。ポリグラムの再発CD。生意気ですね。

(これは日本版。ボーナストラックが入ってていい。ジャケは今一つ。)

(これは海外版。ジャケットはこっちの方がかっこいい。)

 #スウェーデン のジャズシンガー #モニカ・ゼタールンド と、 #ビル・エヴァンス ・トリオが共演したという内容。

買った理由は、ビル・エヴァンスをすでに知っていたこと。1500円で割安だったことなどだった。だが、その時はあまりピンとこなかった。正直、ジャズのことなんかまだ全然わかってなかったのだ。

時々、スウェーデン語で歌われる曲が、ジャズっぽく感じられないのも気に入らなかった。ビル・エヴァンスのピアノも、ジャズの教科書の影響で、ベーシストは #スコット・ラファロ との演奏が最高であり(この演奏は、 #チャック・イスラエル )、それ以外はたぶんイマイチなんだろうという、先入観が刷り込まれていた。

再びこれを聞いてみようかなと思ったのは、すでに(簡単に)書いたけれど、ビル・エヴァンスと #トニー・ベネット の競演盤があまりに素晴らしかったから。

ベネットの歌の素晴らしさはもちろん折り紙付きだが、エヴァンスとの共演で、その表現が極めて深くて味わい深いものになっている。一度聞いてもらえるとわかる。これほどの質の高いボーカルアルバムというのも想像できないのではないかと思える。私の愛聴盤である。ベネットのジャズやビル・エヴァンスに対する敬意がものすごく感じられる。

さて、#モニカ・ゼタールンド はどうか。こちらも同様で、エヴァンスの繊細な伴奏を感じ、一言一言を大切に歌っているのが分かる。

ビデオでの共演を見ると、「歌と伴奏」という単純な関係性ではなく、どのように「音楽」を作ってゆくか、真剣に4人で格闘しているのが分かる。少しずつ音楽が完成しているのを目の当たりにでき、鳥肌モンのビデオである。

どの曲も素晴らしいのだが、エヴァンスの愛奏曲、「サム・アザー・タイム」が好きだ。モニカのキーに合わせているので、普段弾いているキーとは違っており、それがまた新鮮でいい。

モニカ・ゼタールンドは、それほど有名なシンガーではないが、この盤はだんだんと知名度を増し、ボーナストラックが追加されて今は簡単に手に入るようになった。その中に「降っても晴れても」の別テイクが2つ入っている。どれも、イントロが全部違い、新しい表現を模索した跡がうかがえる。真剣なセッションだったというのがよくわかる。

スウェーデン語の歌は、エヴァンスの表現は控え目で、しっとりと原曲の持っている雰囲気を大事にしたものになっている(と思う、原曲聞いたことないから)。ある意味、交代浴みたいでアルバムとして飽きさせない。


さて、ビル・エヴァンスはひょっとしたら、歌の伴奏が上手いのではないか。彼が伴奏をした歌手は3人と言われる。トニー・ベネット、モニカ・ゼタールンド、 #ルーシー・リード 。(正確には、 #ヘレン・メリル もかな)

しかし、一人忘れていてる。それは、ビル・エヴァンスご本人である。

ボーナストラックの一番最後に、ビル・エヴァンスの歌う「サンタが街にやってくる」が入っている。これが、鼻づまりごえ&吹き出し笑いが入った、真剣なのかふざけてるのかよくわからないテイクなのだ。でも、ビル・エヴァンスのファンにとっては、とても忘れがたい貴重なトラックだ。

この曲が本人は好きなのか「トリオ64」でもやっていたし、もともとは非公式の録音だけれど、「ソロセッション2」でもやっていた。

モニカ・ゼタールンドのアルバムの最後に、ビルの歌唱が入る、このことに、モニカ・サイドがとやかく言わなかったのがありがたい。モニカもこのアルバムはビルなしには作り得なかったということを天国から思っているのかもしれない。

そう、モニカは、このアルバムで世界的な知名度を得、その後も地道にジャズシンガー活動を続けたが、2005年に自分の寝たばこによる火災で死亡。脊柱側弯症を患っており、車いす生活になっていたなかでの悲劇だった。

天国で二人で楽しく演奏しているといいと思う。彼女にとってビルとの共演は素晴らしい体験だったようで『ビル・リメンバード』という追悼アルバムも作っていた。それも素晴らしい出来です。

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