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日々日々

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1日(なるべく?)1エッセイ。思うこと考えることを綴っています
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2024年3月の記事一覧

盛り合わせ 盛り合わせてほしい人とほしくない人

コロナ後からかな。 スーパーの揚げ物でもパン屋のパンでも ひとつひとつ個包装がされていることって、多くない? 「個包装は環境に悪い」などと言われている一方で。 環境問題は勿論だが、「面倒臭いやろなー」と思う。 清潔感はあるし保たれる。でも、人手が要るよなあ、大変やんなあ、って。 それ以外のことは想像したこともなかった。   高齢女性がスーパーの揚げ物コーナーの前に佇んでいた。 並んでいるパックと、通りすがろうとするわたしの顔を、交互にめっちゃ見る。 来るぞ、と思った。 「これ

声援 頼むがんばってくれってなんやねん

ラジオから流れてきた曲に慄いた。 頑張れを連呼していた。震えて逆に笑った。 鉄矢の歌だ。金八の何回目かの主題歌らしい。 頑張れという言葉だけでも押しつけがましい。 なのに連呼。しかも頑張れを頼んでいた。なぜ。 あ、金八だからか。教師が教え子にエールか。放っといてくれ。 そもそも金八を観たことがない。 あかんな観てから言わなやな。 でもそもそも鉄矢が好きじゃない。 嘘。1曲好きな歌はある。 とか思っていた週の末の土曜、 関西ローカルのなんてことのない朝の番組を観た。   東では

Parasite 青白いコンビニの灯

君は見たことがあるか。 定休日のコンビニの店名部分だけが青青と灯るさまを。   近所じゃないけど近所のコンビニに逃亡というか散歩に行くと 店のまわりに幾つもの三角コーンが置かれ、 つまり敷地内に入れなくされていて、 店の電気は消えていた。 上段、店名部分だけはぼやぁっと光っていた。 青白く、いや、青青と。   閉店じゃなかった。 改装工事中か何かだと三角コーンに貼られた紙で知ったが、文言はよく見えなかったし見ようとも特に思わなかった。   春先、雨の夜。 じっとりと肌に纏わり

Carat あなたもわたしも益々輝く

「いろんなこと、今の方がええんでしょうけどね。そりゃ、ぜったいに」 「そうっすよね。なんか「でもね」みたいなん、も、あるっちゃありますよね」   月イチの髪を切りに行けた先日のこと。   年齢はわたしよりすこし下くらい? いや、だいぶと下くらい? の店長と話していて。  春というシーズン、人の入れ替わり、歓送迎会などという ベタな話から始まって、呑み会についてこう言っていた。   「今は迂闊に声もかけれんですもん、若いスタッフとかにも。 かけにくいっつうか。めっちゃ気ぃ遣い

十八番 「それイマイチやわ。キモいわー」な路上ミュージシャンと

普段なら素通りだ。 でも足をとめた。 鶴橋駅のあのガード下の雰囲気のせいかな。 芸や生きることをぼんやり考えながらの嬉しい帰り道の日だったからかな。 スタンドマイクの下にさっきまで呑んでおられたのであろうロング缶が数本並んでいたのを見たからかもしれない。   「なにが人気? 得意ですか?」 「お! いいですか!?」 歌い出し歌い上げてくれたのは尾崎豊の『Forget-me-not』だった。 ちゃんと聴いた。 聴き終わり、口から出た、出した。 「それイマイチやわ。キモ

雪女 バス停で会ったあの人はきっと間違いなく

  「寒いな」   地方のバス停のベンチで さっきからちらちらとこちらを見ていた年配の女性が言った。 目を合わすと、待っていたかのように声をかけてきた。   「寒いですね」 「なあ」   夏木マリに更にプラス10歳くらい歳を重ねて 前傾姿勢にしたようなそのひとは、まだ話したそうな様子、話してくる。 バスはまだまだ来ない。   「あと6分くらいあるで」 「ほんまに。寒いですね」   かくして話す。   「雨、降らへんからまだましやな」 「あ、降らへんねや。ちょっと空あやしいです

サンサーラとセロリ 皆が笑ってる劇場で

皆、皆が笑っている場や時、 その場やその時がほんまに愛しいな好きやなあ。 いつも思っているそのようなことを改めて更に思うようになった、思っていた、いる最近だ。   いつも。いつでも。   中でも、劇場で。   「奇跡のような場と時やなあ」   改めてそう感じる。   奇跡だなんて、 なんだかぼんやりしているわりに変に発光(?)している言葉はあまり使いたくないのにだ。   笑っている、 その奥には皆それぞれのしんどさや苦しみがあるんやろう。 いや、笑っているその瞬間ですら肚の中

リングとコーヒー 皆、皆の体と心で

朝から家でも外でも仕事をしながらずっとコーヒーを飲んでいた。 近所じゃない近所のタリーズに行くと壁に目がいった。 いつも素通りやのになぜか今日は立ち止まって見てしまった。  「そりゃあしっかりでどっしりで苦みとコクやろ」  これはただ単にわたしの好み。 よくもわるくもブレはしない。 けれど、そうじゃない方を飲みたくなることやときもある。   若い頃はコーヒーを飲むと胃が痛くなっていた。でも飲んでいた。 今はブラック一択。甘いコーヒーはあまり好かない。 でも今も氷入りのア

蓮 そこはとても素敵なカレー屋

「蓮根、苦手ですか?」 食べかけ、いや、食べ終わりかけのお皿から顔を上げると、 カウンター越しにマスターが笑ってた。   1年前に突然現れたそこが気になっていなかったといえば噓になる。 昭和な街の昭和な商店街前に突然あらわれたアイボリー調の玄関とドアにカフェ風のロゴ。 家? バー? スナック? 何? バーだとガラス越しに中が見えることが多い。 スナックだと重厚なドアの向こうが見えない。 もう一回言うけどアイボリー調のカフェ風で中が見えない。 いつからかカフェやバーには不釣り合

踊 継ぐ、伝える、喋れる(笑)

あるダンサーのことをふと思い出した。 コンテンポラリーダンス。 専門はクラブジャズ。 通称〝ミスターストイック〟らしい。 主宰するダンスカンパニーに友人が入っていたことで知り合った。 イメージとしては森山未來(的な)を想像してもらうといいかもしれない。 雰囲気とか見た目とかなんか似てるなあと思ったりもする。 近年は会えていないというか毎度連絡を下さるも 予定が合わずにいて不義理ばかりなのだが、 当時は公演や弟子たちの発表会などに出演されているのを結構観に行っており、感想を彼女

龍 銭湯を探すひと

あれ、幻やったんかなあ、と今でも思う。 いや、幻やない。 何日か、いや、何日も前の話だ。   「すみません。このへんに風呂ないっすか」   コインランドリーにしばしば行く。 家に洗濯機がない訳じゃない。 洗濯が嫌いじゃないむしろ好きなわたしは、 時に手当たり次第なんでもかんでも全部まるごと洗いたくなる時がある。 着るものだけじゃなくなんでもおっきなものとかを がーっと洗ってざーっと乾かして「ぼーっ」する時間を尊く思う。 これも、数日前に書いた仕事の合間の「逃亡」の場合が多いん

paradiso 惚れました

ドアを開けてすぐに綺麗なパンたちの並びに目を奪われた。 しばし見とれてしまい「はっ」として目を上げると レジ前でシェフと常連さんが話してる。 おかしな話だが、シェフの顔とその手が目に入った瞬間にもう満足をした。 「どうぞ。大丈夫ですよ」 いらっしゃいませ、じゃない。 あきらかに初めての客に対して笑みを、それも満面の笑みじゃない、 〝職人〟の顔を残したままの笑みを浮かべ、奥の席に手招きをくれる。 その手を見て勝手に思った。もう、この時点で満足だ、と。 「パン屋のイートイン」なん

ロイヤルストレートフラッシュ 人はパンのみにて生くるものにあらず

クラブハウスサンドをたまに食べたくなる食べる。   きっかけはロイホだ。   丁寧で高級感溢れる接客が逆に緊張もするあのファミレスには、 そんなに頻繁に行かない行けない。 だってロイヤル。 普段はガスト。 美味いとかいいとかじゃない。 充電が出来るし安いし長居が出来る。 それでいい、それがいい? 観るとか読むとかにはお金を使うが それ以外のものには慎重かつケチなわたしは 選択するという気持ちもなく利用する利用している、 ありがとう猫型ロボット。 でも某劇場の近くにあるロイホに

その日のおにぎり 食べることは生きること

快速電車のボックス席でお弁当を食べている人を見た。 乗り込んだ瞬間目に入った。 ちょうど食べ終わったところのようで ランチクロスというか大きなハンカチというかアレでお弁当箱を包み直しているところだった。 「!」 彼とは離れた席に座ってもう一度 「?!」   電車を降りて目的地まで市バスに乗った。 途中のバス停から女子高生2人がわいわいと乗ってきた。 うちの1人はコンビニのホットドッグを齧りながらだった。 パキッとするケチャップとマスタードを追加でかけながら齧りながら喋ってた。