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タルトタタンを作ってみた→英国のりんごについて考察。


美しい!こぶりのイーティングアップル。甘さが強く酸味がすくない。

イギリスはりんごの季節。
今年は、まずは10月初めに知人から小さなイーティングアップルをたくさんいただき、お菓子を作った。
それから村の果樹園に行って拾ってきたりんごが今もたくさんある。

イギリスのお菓子はブラムリーなどのクッキングアップルで作る。市販のショートクラスト・ペイストリーがおいしいので在英の方はぜひ試してみて!

最初のうちは、イギリスのアップルパイとクランブルを作り続けていたが、さすがにだんだん飽きてきた。というわけで、

フランス菓子の「タルトタタン」初挑戦です!

まず、このお菓子を選んだ理由。
イーティングアップルを使って作るお菓子を作ってみたかった。
イギリスのお菓子は、ブラムリーを使うレシピが多く酸っぱいりんごが前提で作るお菓子が多い。酸味を生かしたお菓子という感じだ。

アップルパイにはカスタードやアイスクリームを添える。この写真はグリークヨーグルト。

イーティングアップルでアップルパイやクランブルを作ってみたが、やはり何となく物足りず、レモン汁と少し付け足すといつもの味になるという感じだった。あと、クッキングアップルは加熱すると溶けて、甘みが増すが、イーティングアップルだと形が崩れにくい。イギリスのお菓子は、甘酸っぱくてとろりとした食感が楽しめるクッキングアップルの良さをうまく生かしている。

イーティングアップルで美味しくできるお菓子はないものか?

インターネットでレシピを検索してみると、タルトタタンを見つけた。このお菓子はイーティングアップルで作るようなのだ。

レシピはBBCGood foodのウェブサイトから。

このレシピを選んだのは、
動画で短く作り方をわかりやすく説明している。
材料がシンプル。
おいしそう。
高評価。
フランス人シェフのレイモンド・ブランクのレシピ

オーブンに入れられる鉄のフライパンが必要なのだが、いいサイズを持っていない。ため、厚手の20cm丸型で代用。

キャラメルソースを作るのに型を直接電気コンロで加熱して大丈夫だろうか・・・。と少々不安だったが、決行!

結果。
かなり厚手の型だったため、問題なし。
でもオーブンに入れられるフライパンを持っているならその方が安全。

ゴールデン・カスターシュガーとバターで作るキャラメルソースは、少々焦がすのがコツ。


パフ・ペイストリーもおいしいです。日本ではパイ生地と呼ぶかな。

レシピでは、一台分でパフ・ペイストリー300gだったが、市販品の一袋が500gだったため、それを半分にして一台250gで二台作った。

今回のタルトタタンは、ラセットを使用。そのまま食べてもおいしいりんご。

レシピにはりんごは6個とあるが、2台分で6個使用。(使ったラセットは、日本のりんごよりは小さいと思う)
そのほかは、レシピ通りに作る。

焼いてから3日目。おいしさ持続。作り立てよりパイ生地がなじんで私はこの方が好きかも。

このお菓子は、イーティングアップルを使うのに、出来上がってみるとりんごの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。キャラメルのほろ苦さと甘酸っぱいりんごのハーモニー。ものすごくおいしい。バターと砂糖だけでこんなにおいしく出来るものなのか。フランス菓子はやはり奥深いと実感した。

10月下旬。村のりんご果樹園。

イギリス菓子を時代別に比較してみよう

今現在人気のりんごのお菓子は、アップルパイとクランブルだ。

このふたつは、クッキングアップルで作る。お店にはクッキングアップルとしてブラムリーが売っているが、村の果樹園とか知り合いのお庭にもブラムリーでないクッキングアップルはそこら中にある。味はほとんど同じで、加熱すると溶ける。甘みが増す。りんごのお菓子は、この二大巨塔があまりにも一般的なので、他に続くりんごのお菓子はほとんどないような印象である。

チューダー朝のりんご

しかし、古い料理書をみると、りんごのお菓子はたくさん出てくる。興味深いのは、チューダー朝には酸っぱいりんごに砂糖を加えてアップルパイにしていたようなのだ。リチャード2世のマスタークックブック(1390年)を見てみよう。料理人たちはレシピを知っているのが当たり前だったので、この料理書には細かい材料の分量や作り方はない。どういうものなのか、という説明が記されているだけである。しかし、その文章から想像するに、そのアップルパイにはりんごと砂糖がフィリングとして加えられていることからも、ある程度酸味のあるりんごが使われていたことが考えられる。(1500年代の料理書には、酸味のあるりんごで作るグリーンアップルパイというレシピもある。)

アップルムースもこの時代のお菓子であった。ムースと呼ばれているが、もう少し硬さのあるもので、ポタージュ、パイのフィリング、アップルバター(りんごのゼリーが固くなったようなもの。グミみたいな食感)と呼ばれるようなものである。このレシピにも酸味のあるりんごが使われていたようだ。砂糖が加えられていることから、宮廷や貴族などお金持ちの方が食していたものと考えられる。というか今まで残っているようなチューダー朝のレシピはそういうたぐいのものだそうだ。とにかく、酸っぱいりんごは当時からお菓子に活用されていた。

チューダー朝には甘いりんごは食前、酸っぱいりんごは食後に食べるのが体に良いとされた。りんごは、冷たい食べ物と考えられていたので、そのまま食べるのは健康によくないという考え方もあったが、高熱に悩まされているときなどには体を冷やすために生のりんごを食べた。

ヴィクトリア朝のお菓子

ヴィクトリア朝にお屋敷で作られたお菓子の数々。Copyright Momo Yamaguchi

さらに時代は進み、ヴィクトリア朝になると、正式なディナーはフランス式のコース料理となり(それまではテーブルにすべての料理が並べられていた)、給仕が前菜、メイン、デザートを運んでくるようになる。デザートには、見た目が華やかで甘いお菓子が好まれた。ここで注目なのは、この時代にはお菓子にイーティングアップルを使うレシピが多くみられることだ。イーティングアップルとは書いていないが、レシピによってはりんごの品種が書かれてあるのでイーティングアップルなのがわかる。ビートン夫人の家政書にはりんごのレシピがたくさんあるが、どのレシピにもグッドアップル(質の良いりんご)と書いてあるだけで、どんなりんごを使うのかはよくわからない。が、りんごとレモンを合わせて使うレシピが多いことから、酸味がそれほど強くないりんごを使うこと想定したレシピだったのではないか?と考えられる。

という風に、英国にはイーティングアップルとクッキングアップルがあり時代によってその用途は少しずつ変わってきたようだ。今ではそのまま食べるのがイーティング、調理用はクッキングを明確に用途が分かれている。

オンライン講座「英国のりんご」

YouTube動画をご覧いただくレッスンです。


英国のりんごについて、その背景、歴史、現在の市場。りんごの用途について解説します。
YouTube動画前後編で50分
参加費 1,850円
お問い合わせ、お申し込みは、Facebookメッセンジャー、インスタグラムよりお知らせください。

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