15才の誕生日
ひとりっこ。両親は共働き。
学校から帰ってきても誰もいない。
ランドセルに隠してあったカギを使って静かな家に入る。
友達が遊びにきてくれるから寂しくなかった。
でもずっと、兄弟がいる周りの友達が羨ましくて輝いて見えた。
---- ひとりっこは寂しい ----
小学3年生の時。
わたしに念願の兄弟ができた。
トイプードルの女の子。
ペットショップで顔を見て「もも」と名前が降りてきた。
その日から「もも」との生活が始まった。
カギを開けると今まで何の音もならなかった部屋から鳴き声が聞こえるようになった。
家で遊ぶ相手ができ、毎日遊んだ。
ソファーに座って寝る姿が一緒だったり。
ヒーターの前を取り合ったり。
リコーダーの練習をすると、その音に合わせて一緒に歌った。
散歩に行ったら、耳をパタパタ動かしてまるで跳ぶように走ってくる姿。
水を飲むとき、上目遣いをしながら音を立てながら飲む姿。
いびきをかきながら気持ちよさそうに寝る姿。
びっくりするくらい大きな花ちょうちんを作った時にはみんなで大爆笑した。
わたしが泣いていると近くに寄ってきて涙をなめてくれたり、落ち込んでいると隣に寝てくれる。
家族のアイドルで、わたしの妹。
泣いてる涙を必死に舐める姿をみて、生きなきゃ…って気持ちにしてしまうこの子の存在は偉大。
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3年前。
わたしの妹が亡くなった。
酸素室で寝る体力しかなかったのに、亡くなる前の夜。
振り絞ってだいすきなソファーに座った。
二人でよく座ったソファーに。
冷たくなってしまった「もも」に泣きながら大好きだった毛布をかけ、その日は一緒に寝た。
当時のわたしは希死念慮にかられ、一歩も家から出ることが出来なかった。
半年近く外の空気を吸っていない私が、怖い気持ちを抱きながら外に出ることができたのは、「もも」を火葬場へ連れていくときだった。
「ありがとう、外に出してくれて」
これが、「もも」との最後の会話になった。
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2021年1月30日
生きていれば15才の誕生日。
今でも「もも」のことを思い返すと涙が溢れてくるよ。
「わたしを外に連れ出してくれてありがとう」
「虹の橋」でまっててね。
たくさん走ってたくさん笑っててね。
これからもずっとずっとだいすきな妹です。