【絵本野山草】(23) 野藤草/花冥茄/金盞花(きんせんか)/長春菊/寒菊/曼荼羅花/大八代草/秋牡丹
野藤
四五月。葉、藤のごとくにて、花も又大てい似て、一ところづゝ ● なりさく。はなじくのびず。中むらさきいろなり。七月はなあり。
花めうが
しゆくしや。花白く車咲、五つびら。葉、めうがだけのごとく、六月にはなあり。一名、やぶめうが。本名は、和縮砂なり。
※ 「しゆくしや」は、縮砂。
※「車咲」について、『新編植物図説』のエンメイギクの項に次のように記されています。
「車咲と称するものは、総苞の所より数個花茎を出して輻状に開花す」『新編植物図説』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「めうがだけ」は、茗荷竹。
金銭花
又、金盞花ともいふ。花のかたち、菊のごとし。一重有。八重あり。千重有。花中ごろに咲て開かず。ちよく咲なり。紫は、九曜草に似たり。はな、四季に有。色、赤黄丹色、葉色、黄青して浅し。長尺ばかり、八九月の比より咲。春三月さかりなり。
これ「金盞花」「金銭花」といふも漢名なり。『八集画譜』草木の譜に云へり。金銭花は、俗にいふ也。
金盞花とは、こつふさかつきに似たるゆへいふなり。
金銭花とは、午時花の事也。金銭花を午時といふは、午時にさく故也。赤きを子午花と云。黄なるを金銭花といふ也。又、金盞花の本名は萵苣花。又、金盞艸。又、長春菊といふ。
※ 「八集画譜」は、明の時代の書。
『八種画譜』(国立公文書館デジタルアーカイブ)『八種畫譜【全号まとめ】』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※「こつふさかつき」は、こっぷさかずき(コップ盃)と思われます。参考:『普通文典(尋常師範学科講義録)』『日用料理案内:賓客饗応年中雑菜』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「午時」は、真昼どき。うまの時。正午。
長春菊
俗名 回回菊。四時 有 花 種 於 籬落 間 亦 自 可 愛。
※ 「四時」は、春夏秋冬の総称。
※ 「籬落」は、竹や柴などで編んだ垣のこと。
寒菊
はな黄色、辻黄いろにして、つゝしべなり。もりあげ 葩 は白し。一重にしてまばらなり。葉しげくして十月より赤く、紅のごとくになり、十二月まであり。花のいろ、金のごとく、また 水仙菊のはな一重にして、葩白く、さかやき青し。葉の色、うら灰色、表青みどり。九十月にあり。冬きくといふ。
曼荼羅花
春、たねより生じ、かたち茄子苗のごとくにて、段々枝出て、葉も茄子のごとく、故に異名、山茄ともいふ。秋、花さく。色白、大輪、花形 あさがほのごとく、たくましく、異形なれば、俗に「唐人笛」といふ。尤、其かたちなり。
花壇に植て「朝鮮朝がほ」といふ。朝にひらき、夕にしぼむ。
時珍が曰、曼荼羅花。人家に春苗を生、夏長ず。独莖直に上、高さ四五尺、葉も莖も茄子のごとく、八月白花ひらき、九月迄有。葉、牽牛花のごとく大し。朝に開き、夕に合すといへり。木も莖も黒紅なり。実、丸く針あり。
※ 「曼荼羅花」は、曼荼羅華。ここでは、朝鮮朝顔の別名。
※ 「時珍」は、明代の本草書『本草綱目』の編纂者、李時珍。
大八代草
八九月さく。花、八代草に似たり。桔梗のごとく、色 同似たり。花辻にさく。葉ごとに花つく。さゝりんだうに似り。八代草より遅し。山中に有。
※ 「さゝりんだう」は、笹竜胆。
秋牡丹
きぶね菊。加賀きく。八月より九月まで花有。葉のかたち、菊の葉に似て、きれあさくこはし。はな、又、きくのごとく紅紫色、八重、一重さき、また、白花あり。花葉ともに同じ。又、加賀菊ともいふ。本菊は、はなびら筋あり。此きくは、葩に筋なし。牡丹のごとく、花開けて、実のめぐり蘂とりまく。一重のけしのごとく、けしぼうず有。
※ 「きぶね菊」は、貴船菊。
※「こはし」は、強し。
※ 「けしぼうず」は、芥子坊主。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□はパソコンで表示できない漢字を意味しています。
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