和食展に行ってきたはなし。
前売りだけ買っていて行けていなかった和食展、病院帰りに行って来ました。
上野駅構内で昼食を摂ってから国立科学博物館(以下かはく表記)に着き、入場待ち列は無くコインロッカーも空きがあったのですっかり油断してました。
――久しぶりにヒトの動かないすし詰め状態展覧会にぶち当たったなぁ……。
展示物の大半がサイズが小さいうえ数が多いから、最前列じゃないとマトモに見れない。でもって観覧客の流れが非常に悪い。これは自分も含めて撮影自由なんでつい撮っちゃうから、というのもあるんですが……だってかはくの特別展の図録は結構な確率で展示品全ての写真が載ってるわけではないんだもの……。下手すると解説も端折る場合があるんで解説は細かく読みたい……。
最近では宝石展も同じタイプだったんですが、あれはアンティークジュエリーに辿り着くまでにヒトがばらけてました。というか他のどこの展覧会でも入り口付近が一番混雑しててだんだん余裕が出てくるもんですが、江戸時代の料理のレシピ付近が一番ヒトがすし詰め状態だったという。
この時点で既に16:00を回っており、動きの悪い人波から閉館時間を過ぎても見終わらない可能性が高いと判断。琉球・蝦夷の料理と大正時代の中華料理だけマトモに見て他の江戸・明治そして和菓子は諦めるという苦渋の決断を下しました。
ちなみに一番空いてたのは海草の標本付近です。
――と言うわけでいきなりネガティブ節で始まりましたが、それは全部きちんと見れなかったのが本当に悔しいほど面白い展覧会だったからです。
元々この和食展、2020年に開催される予定だったんですがコロナ禍の影響で中止になったという経緯があって、それが漸く開催ということで楽しみにしてたんです(その割に行くの遅かったな、というツッコミは無しで)。勉強になるという点ではほんとに期待以上でした。
のっけから食のパッケージとかいう感覚的には理解できるけど説明ゼロの用語が出てきて脳汁ドバドバです。世界地図に書き込まれた食材名を見ながら背後の男子学生が
「おれキャッサバなんて食べたことないよ」
「え? お前タピオカは?」
「あータピオカはあるわ」
なんて会話を繰り広げています。
壁一面に配置された日本各地の天然水と硬度の解説、その左下に堂々と鎮座する激ヤバ硬度のコントレックス。地層が石灰岩ならしょうがないな……って日本の鍾乳洞由来の水の20倍近くあるんですがどうなってんの?
キノコは大半が模型、一部標本、ついでに加工食品。ただキノコに関しては食べられる食べられないについての結論が「先人達のチャレンジの賜物(要約)」でした。せやな。
文化の違いで好かれるキノコ好かれないキノコが違うというのも聞いただけじゃ当たり前に思えるんですが具体例出されるとへぇって感じがしました。
山菜の標本は予想通り図録に載ってませんでした。解説も灰汁抜きメインでそもそも見開き2ページのみ。
一方で野菜とくに大根の展示は充実してました。
イネは思ったよりエリア狭かったですけど、寧ろ酒や味噌などの原材料としての解説が多かったです。
魚介類は背の高い台の上の方まで標本が展示されててこれお子さんとか見れないんじゃないかなと思ったり。ミル貝は水管しか食べないとか鮭とサーモンは別物とか知らなかった事が多くて楽しい。標本の全ては目視できないけど。
魚、海草と続いていよいよ発酵食品です。まずは日本酒。何となく麹で発酵させるものと思ってましたが酵母も加える隙を生じぬ二段構えでした。詳しくは今月中にかはく行ってきてください。
面白かったのはセンサーに手を近づけると吟醸酒の香りを再現したものが吹き出すやつ。他の方がサイダーみたいと仰ってましたがマジでサイダーみたいな香りでした。たぶんアルコールの匂いが無いからだと思う。
日本酒以外の発酵食品もすごく充実した内容でした。酒・醤油・味噌に共通するのは「一に麹」。もちろん麹の作り方も映像で紹介されています。でも乾燥させる前の米麹、ヤバい物体にしか見えない(笑)
お次は和食にとって大事な要素、「うま味」。味覚の種類としての「うま味」と美味しさを表す「旨味」は違うものらしいんですがわかるようなわからないような。
うま味成分といえば昆布のグルタミン酸、鰹節のイノシン酸ってイメージですが干しシイタケのグアニル酸ってのは初めて知りました。
どんな食材にどんな成分が多く含まれてるかの図があったのですが、他のキノコはグアニル酸グループにいるのにマッシュルームだけグルタミン酸グループでした。母が「シチューには絶対にマッシュルームを入れなければならない」と主張してるのを思い出しました。
鰹節の作り方の動画を見ましたが、あれちゃんと全部骨取ってるんですね……すごいな粗末にはできないな……。
後半は和食の歴史です。スタートは貝塚ですが全部は見られなかったので、これ以降は特に印象深かったのだけピックアップします。
奈良時代の甘味料、甘葛煎。現代版のレシピへの誘導がありますけど、道具以外に現代要素見当たらないんですが……。
奈良時代の皇族の食卓再現模型の周囲では「蘇って前に流行ったよね?」という感想が飛び交ってました。蘇ブームからもう結構経ってるのか……。
衝撃的だったのは庖丁式の映像。三分割された鯉がまるで水面から体の一部を出すネッシーのようにまな板の上で体をくねらせ、切り身から作られた長い紐状の刺身が飾られる様はもう実際に見て貰うしか――と思ったら動画見つけました。展覧会で流されたやつの元動画ではなさそうですが、背景と実演者の方が一緒です。鯉の最終形態も同じ。
江戸時代のターンに入ると再現された屋台がありました。この蕎麦の屋台、担いで運んだのかと思うと驚きです。釜も丼も麺もあるんですよ?
琉球料理の前菜盆は中華テイスト。アイヌ料理は筋子のお粥が食べてみたい。
年始になると絶対話題になる地域毎のお雑煮の違いも解説されてました。ちなみにうちのお雑煮は蛤の潮汁に丸餅、セリ、カマボコです。
第一会場の最後に「あなたにとっての思い出の和食は?」という質問があるのですが、こう回答しときました。
第二会場までの道のりにはクックパッド調べの「各都道府県の人気検索ワード」が。
第二会場には完全養殖ウナギの稚魚が展示されていました。ただ成魚に育つ率が低く商業ベースにはまだ乗せられないそうです。
時間はありませんでしたが特設ショップ割引500円クーポン付きの前売り券だったんで図録以外の買い物もしました。とくに暴飲暴食ソックスがお気に入りです。
図録はやっぱり写真少ないですが学問的な解説がパワーアップしてて嬉しい驚きでした。そのぶん見れなかった展示への未練が募ってるので、状況によってはもう一回行くかも知れないです。