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#エッセイ

京都の引力

京都の引力

学生時代を過ごした京都に、毎年吸い寄せられるように訪れている。気軽に行けるけれど、帰るときの離れ難さを振り切るのに毎回一苦労。特別な引力があるんだと思う。

4泊5日の滞在を終えた私は、今まさに東京行きの「のぞみ」の座席で京都の引力に必死に抵抗しているのだけれど、学生時代を過ごした思い出の街という補正を抜きにしても、唯一無二にして強力な引力の源泉について考えてみる。

京都に暮らす人たちの清潔さ

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星野源の音楽と共約不可能性

星野源の音楽と共約不可能性

 科学哲学の分野には、「共約不可能性」という概念がある。もともとは、“いかなる整数比によっても表現することのできない量的関係”を表すための数学用語であったが、人文科学ではしばしば、この「共約不可能性(通約不可能性とも)」という用語が、別のパラダイムを背景に持つ他者との分かりあえなさや、他者理解、共感の限界を示す言葉として使われる。

 そして私は、“共約不可能”という事態について考えるとき、ふと、

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京都に住むということ

京都に住むということ

 最近よく京都へ行くようになった。何をしに行くかと言われれば、一言で言えば「観光」の部類に入るのだろうが、特に有名な寺社仏閣をたくさん巡る訳でもなく、昔住んでいた住宅地や通っていた大学の周りをうろうろしたり、大好きな下鴨神社や鴨川デルタでのんびりと過ごしたりしている。ただしどれだけの頻度で京都に行こうとも、住むことと泊まることの間には大きな隔たりがあると最近感じるようになった。いくら懐かしい場所に

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京都

京都

昨日は落ち込んでしまいそうだったので絶対にからふね屋でパフェを食べると決心して四条河原町へ。

電車に揺られながら椎名林檎の幸福論を聴いて泣いたりした。

ボックス席には窓際の私とその斜め前のおばさんしか座っていなくて、そのおばさんが足をピンと伸ばし続けていたから誰も隣に座って来なかった。
普段ならマナー悪いなあとか思ったんだろうけど、この時はちょっとありがたかった。

18番出口から大丸の前に出

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祇園祭の思い出

祇園祭の思い出

さっき、散歩ついでに街に出向いたら、いつもは静かな住宅街が何やら賑わしかった。
あ、そうだ。祇園祭だ。
狭い通りに鉾の基礎が建てられているまさにその途中で、その様子をカメラにおさめようとする人、じっと遠くから、そして近くから見守る人がみんな鉾を見ていた。
イヤホンを外して、周りの音に耳を傾けていると、「今年は出来てよかったねえ」「ほんとやねえ」なんて会話も聞こえてきた。イヤホン外して良かった。

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