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ダンジョン飯(著:久井諒子)【マンガ紹介だが、まずマンガは植物繊維だ。人間はこれを消化することができないので、まずは他の生き物に食わせその生き物を食うという方向で「どうあっても食うのか」】

最近、最終巻が出て、
入れ替わりにアニメ化された。
すでに終わりに至る道が完成しているので、作りやすいだろう。

弟がこの著者の作品がスキらしく、
前に短編集か何かを買っていた。
その流れで彼が買い始めて、
私は最初のうち「異世界ファンタジーもの」は食傷だったので、
読まなかったのだが、暇なときに読んでから読むようになった。

理由の1つは、生物学的な視点をファンタジー世界に持ち込んだことだ。
ドラゴンとかモンスターの生物学的な構造や機能。行動様式。
そして生理機能から逆算される栄養学的な面。
その栄養学的な点を加味して、どんな料理のどんな食材に似ているかを吟味し、まずはそれに近い料理を作り、やがては創作料理に至る。

世界中のあちこちで意味不明なものが食されているのを見ると、

人類はこうしたことを古代からやってきているのであり。
当然ながらモンスターに同じ背景を適用しない道理は存在しない。
誰もやらなかった背景的な部分にスポットを当てるという、コペルニクス的転回をやってみせたマンガ作品でもある。

ファンタジーと言うと剣と魔法の世界だ。
科学は無縁・・・と思いきや、
モンスターの生理機能についての記述があるので、
意外と科学している感じである。
ファンタジーの皮をかぶったSFという面がある。

なんでも魔法で片付けてしまわず、きちんと仕組みを考えるところがいい。

ヒロインのエルフ女性は混血種なので子どもを産めないという説明が出てくるが、
こういうのは動物生態学に関する知識がないと、出てこない発想である。
(ホールデンの規則というやつだ)

あえて言おう。
SFであると。

***

さらにいうと作者の画風というか作風が、
けっこう個人の内面を描写する傾向にある。

後半の方に、エルフ族の軍隊が出てくるのだが、
これが兵士ごとに個性が違い、
軍隊として統一的な行動は取るものの(軍隊だから)
不平を言ったり、不満を顔に出したりと、実に個性豊かなのである。

そして個性豊かなのはその面々に限らず、
だいたい予定調和的な行動を取るキャラは皆無という面白味。
全キャラに確固としたエゴがあり、
常に斜め上の展開にぶっ飛んでいくという、
つまり「書き割」の世界ではなく、リアルな「日常」なのだ。

対照的な例を挙げると、
非情に申し訳ないけど、
クランプマンガの世界が「書き割」の世界である。
登場人物は脚本上で求められた行動や発言しかしない。
まるでマリオネット。
まあ、クランプマンガの魅力はそこではないのだろうが。

それはともかく、

登場人物がなべて個性の塊であるがゆえに、
「ダンジョン飯」という作品は非常に共感性が高く、
そして完結への持ち込み方といっても、
理想形に近いものを感じてしまう。

よくああいうクライマックスに、
よくこういうエンディングに持ち込めたな。

どこにでもあるマンガのようで、
完成度が非常に高い。

10年したら確実に忘れ去られるだろうが、
発掘名作になるのもまた同じくらい確実だ。

この人の作品には期待できる。
本屋の店員であった弟の読書眼はやはり頼れる。

以下は後半、クライマックス部分の頼れるレビューを紹介してみました。

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