降伏の儀式(著:ニーブン&パーネル)【統率者よ。読書紹介の時間が来ました。「旅する群れが新しい図書館を手に入れるときが来たのだ」】
80年代末期のSF宇宙戦争モノ。
すでに宇宙人が攻めてくる!ネタは古くなって久しかったですが、
こういうのは、ときどき流行が復活することがあります。
この時期がそうだったのかわかりませんが、
当時のリアルなハードSFで、
宇宙からやってくる侵略者の宇宙人と、
宇宙戦争をやるというネタをやってみようと書かれた小説。
宇宙人(フィスプ)は、
なんと小象の姿をしており、鼻を使って科学を操ります。
今作は腐ってもハードSFなので、
相手の生態、文明、価値観、戦略、戦術、進化生物学、文化人類学、
そういったものが科学的論拠と共に説明されます。
そういうのにいちいちリアリティを求める作品なんですね。
小象(フィスプ)を捕虜にすると、人類側は相手のことを研究します。
もちろん子象側も、人類の捕虜を研究します。
宇宙を渡って来る科学力と圧倒的な技術力の割には、
歴史的経験が乏しい、という設定が小象(フィスプ)たちには付与されてます。
なにか、先立つ種族が残してくれた文明を再利用したという流れです。
以降、この設定はSF宇宙人設定でよく使われるようになりました。
困ったときはこれを使え。
このため人類側は,
技術力には劣るものの、豊富な戦争経験に基づく策略によって、反撃する戦略を模索することができるわけなんですね。(良いのか悪いのか)
また当時はソ連が健在であり、宇宙人に対して米ソ同盟を組んで戦います。
ソ連は反乱のために途中で離脱してしまいますが。
子象(フィスプ)たちには文化的規範があり、
それが降伏を非常に尊重するというものです。
足をのっける、という降伏の儀式をさせた相手が、再び武器を取って戦うのは、文化的にありえないことなんですね。
しかし人類側にはそんな文化がありません。
そこで文化間のすれ違いが起こり、戦場は泥沼化していきます。
この文化間のすれ違いによる戦争の泥沼化はインディアン戦争でもありましたね。
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宇宙戦争を丁寧にリアリスティックに描いたら、こんな作品になりましたという。そういう作品です。上下巻でした。
こういうタイプのSFって、割とないですよね。
文化人類学とか軍事学とか。
コテコテの設定を、徹底的にリアリスティックにやって、
それ以外の超技術的な要素を出さない。
ただのSF未来史。
SFだから余計な超技術的な何かを付け加えてしまう作品が多い中、
これは割と実現できそうな技術だけで作られている、
そういう意味では「科学」の要素は薄く、
むしろ「文化」とか「歴史」とかの比重が大きい作品です。
そういう作品はレアです。
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