生まれ変わり(著:ケン・リュウ)【だって私は矛盾した読書紹介を読まされるんだもん「奇遇だな。わしもだ」】
中国SF作家の出世頭の一人らしい。
でもアメリカ在住なので、アメリカ人なんだと思う。
まあそこはともかく、
SF短編集です。
タイトル作の「生まれ変わり」がいちばん最初に来ますけど。
早くもSFに期待する価値観ぐっちゃぐっちゃの世界観を丁寧に描写してくる。SFはこれがいい。
しかし世界観を説明するだけで、ある程度の小説にはなってしまうんだな。
SFとは。考えてみればSCP財団とかも筋なんてあるのかないのかわからんけど、作品として成立しているし。
↑(あ、でも私が読んだのはこの文庫本バージョンだ。大きな本とは掲載作品の種類が違うかもしれない)
まず「生まれ変わり」の世界では。地球は宇宙人に占領されている。
しかもこの「トウニン人」という異星人は、
考え方がまったく違う。
まずもって一個体の中に複数の人格が生まれるのが普通の、ナチュラルボーン多重人格なんだ。
そして犯罪を犯した場合、問題の人格だけが削除される。
その個体の中の、別の人格は無関係とされるんだな。
彼らは、問題を起こした存在を人格レベルで判別する。
例えば人間だったら、ナチ戦犯みたいなやらかした人物は、基本は死ぬまで追いかけていく。
一方で、彼の子孫とかは、ああだこうだ言われるかもしれないが、ご先祖様と同じ人間ではない。だから子孫に罪を問うことはできない。
(国のレベルで謝罪していることはあるけど、あれは国いう法人だからだ。企業も同じ)
しかし「トウニン人」は、罪は個別の人格にあり。
という考え方をする。
だから時間が経つと生理的に自然と人格が切り替わり、そうすると以前の凶行を「あれは私がやったことではない」とか言い出す。
「トウニン人」はそれが生理的に普通なので、それでいいのだが。
問題は、征服された地球人の方はそうできていない。
そこで「トウニン人」は地球人にも、記憶削除と人格再構成の処置を施す。
それが「トウニン人」の法律なのである。
なので家族を殺された地球人がテロに走っても、
極刑とか無期懲役とかではなくて、人格再構成をされることになる。
そして「トウニン人」の女性と仲の良い家庭を築いたりするのだが・・・
****
タイトル作ほど、設定がぶっとんだ話はないですが(と思う)
他の短編も雰囲気が出ている。
美味しいSFでした。
共通する点は、中国系の人が出てくること。
そしてアメリカ社会に向けて書かれていることだ。
それと社会問題や環境問題に対してオーソドックスな姿勢。
要するにリベラル的立ち位置から書いてあること。
個人的には恒星間旅行の際に、ネズミを持ち込んではならないと、
唐突に神様からテレパシーを受ける少女の物語、
(それがユダヤの神様で君は中国の開封にいたユダヤ人の子孫なんだ)
ノリとしてはシンプソンズみたいなコメディだけど、
(神と少女の丁々発止がコミカル)
だいぶ経ってからも、ああそんなのあったな、とか思い出しそう。
アメリカ人ウケを狙って作られてるんだなあと思う。
移民第1世代なんだなあというテイストがすごくする。
まあ「トウニン人」の話とかは、そういうの関係ないけど(そうかな?)
この人の小説は、なんか一挙に翻訳されて集中的に販売されていたけど、
私が買ったのはとりあえずこの一冊だけ。
他のも読んでみたいとは感じるけど。
他にも読みたい本や読んでない本がたくさんあるんだよな。
ぐぬぬ。(欲望を押さえている音)
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