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赤い闇 スターリンの冷たい大地で(2019年)【映画紹介をもういちど、やり直してみようと思うの。「いや、気持ちはわかるんだけどさ。君のジャンルって」】

ウクライナのホロドモール。
ウクライナ主張において、ソ連時代にウクライナ人がジェノサイドされた事件だ。
ロシア側はスターリン時代にはロシア人も虐殺されたと反論している。
まあそいうのはさておき、
ソ連初期、スターリンが権力を握った1930年代初頭に、ソ連が金に困って穀物を飢餓輸出してしまった、その結果として豊かなはずの生産地域で深刻な飢餓が発生してしまった。

飢餓は深刻で、道端で餓死した人が捨て置かれ、親は子どもたちを食べ、子どもも死んだ親を食べた。

そういう歴史上の暗い事件だ。

もちろん映画はそういう暗い場面を、
西側からの観察者という視点で描写していく。
主人公は社会主義者であり、ソ連に期待しているソ連シンパだ。
念願かなって、モスクワでの取材生活が叶う。

しかしモスクワでは、先に来た連中が取材権を独占しており、いちいち介入してくる。
それを面白くないと思った主人公は、お忍びでソ連の地方へ旅行して、直撃現地レポートをしようとする。がしかし、その現地で見たものは・・・

とにかくソ連政府の検閲や報道規制が酷く、
西側では自由なジャーナリズムを訴えていた人たちも、
モスクワになると途端に体制の番犬になってしまう。

特に気心の知れた女性レポーターは、主人公に反発するも、自由な取材ができないということについては同意してくれる。
そして主人公の話を最初に訊いてくれた人のひとりだ。

結局、主人公はソ連秘密警察によってモスクワに送り返され、
おとなしくしますという誓約書を書かされ、
本国へ帰ってから真実を暴露する。

もはや百年の夢も一日で冷め、
周りの社会主義者から裏切り者呼ばわりされるも、心ある人たちは逆に脱洗脳されていく。
たとえばジョージオーウェル。

オーウェル「た、例えば過渡的なものだとは考えられませんか?」
主人公「・・・」
オーウェル「か、可能性はまったくないと??」

こうして転向したオーウェルは、動物農場や1984の作者となっていく。

例の気心の知れた女性レポーターも、
ついに涙を流しながらモスクワから去っていく。

しかしどうも彼女はドイツ人だったらしく、
あの男の演説がラジオから聞こえてくる中で、
「もういちどがんばってジャーナリストとしてやり直してみようと思うの」
とか健気に頑張ろうとしてる。
ベルリンにいるのだ。

もにょる。
これは、もにょるなあ。


別の国に行く選択肢とか、なかったんかな。
ないからそこにいるんだろうけど。

ホロドモールより、それに関わる西側知識人の方が、この映画の主題なんだ。

皆さまも、是非もにょってみてください。


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