リリィシュシュのすべて(2001年:監督:岩井俊二)【「リリィだけがリアルだ」映画紹介は僕にそう言った。映画紹介が誰だったのか、今でもわからない】
この映画は名作たれど、今まで紹介することは控えてきました。
これ、
犯罪映画です。
まあ、リオデジャネイロのスラム、
ファベーラを描いた「シティオブゴッド」
タランティーノ出世作「パルプフィクション」
こういうギャング映画の類型です。
最初から最後まで、小学生から中学生あたりの子がギャングとして悪名高くなっていく場面が描かれます。
トラウマ注意です!
暴力、盗み、性暴力、裏切り、搾取、殺人。
特に性暴力の話はトラウマものなので、
まずい人は観ないのも勇気です。
あらゆる悪が描写されていきます。
悪の映画です。
しかし世評はそういう風にはなっていない。
おかしい。
****
理由はすべて、
バックグラウンドに存在する「リリィシュシュ」と呼ばれる謎の歌手にあります。
彼女の歌が全編に流れて、雰囲気を作ります。
彼女は顔出しすらなく、ひたすらBGMとしてのみ登場します。
(まあ中の人はSalyuなんだけど)
敵同士になったギャング少年たちも、
「リリィシュシュ」の歌を愛していることでは同じ。
敵同士が同じ音楽を愛しているのです。
加害者も被害者も同じ音楽を聴いているのです。
つまり「リリィシュシュ」は、
神の遍在、なのです。
以前にこんな映画を紹介しましたが、
これも同じスタイルの作品です。
醜悪すぎる現実を描きながら、
どのような場所にも「神は遍在」しているという感覚。
こんな地獄にも神(リリィシュシュ)はいる。
神(リリィシュシュ)は善人にも悪人にも平等に歌いかけてくる!
なんだんだ、これは!
という感覚を、音楽の力で代済している。
親鸞聖人の悪人正機の話をどこかほうふつとさせます。
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そういう映画なんですが、
世間一般では単なるアート系映画として評価されています。
なんだかなー
この映画は、
この世界の別の場所に、
何か普遍的に良いものがある、
愛は遍在する、
という希望を描いた作品です。
だから救いようのない悪の映画であっても、
犯罪映画だと思われていない。
それに宗教映画だとも思われていない。
でも、この映画の本質を見るに、そっち系の作品。
↑ うちで紹介した宗教映画たち。泣けます。
宗教とは泣くことですから。
***
いつか、私たちも自分でもそれと気づくことなく悪に染まることがあるでしょうが、
いや、今すでにそうなっているに違いないとすら思いますが、
リリィシュシュはそれでも、いやだからこそ、
私たちの空間音楽として、今も歌い続けています。
もちろん罪のない人にも歌いかけますが、
罪の有る無しは、リリィシュシュにとってはどうでもいいことなのです。
あなたにもリリィシュシュの歌声が聞こえますように。
↑ 問題あるなら差し替えます。あくまで紹介の枠内で。
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