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第14章 怒りの蜜柑−1

Vol.1

 ’’お題:どうしたら日本の政治をよくできるのかな?’’

僕は、世界に問いかけた。この投稿は、SNSに住んでいる人たちは面白い冗談だと思ってたくさんの返信が寄せられてきた。

「国会に乗り込んでみるのはどうだろうか。」→「警備員に止められるだろ。」

「選挙に行け。若者がしっかりと行かないからだ。」→「出たよ老害。人口比率見てみろよ。じじい」

「爆弾でもぶっ放しますか。何人か議員が死んでももいんだいないでしょう。」→「それはそう。」

「もう無理じゃない。オワコンだし。ヒーローみたいなひといないじゃん。」→「河本議員がいる。」→「あいつは頭沸いてるだろ。」

「国会におどしの手紙でも送るのはどうかな。」→「もうやってる。」→「お前かw」→「お巡りさんここですよw」

「未知の病原菌を撒く。」→「どうやってそんな病原菌を作るんだよ。」

「デモ活動するしかない。」→「おたくは左翼かな。」

「サリンでもぶち撒くか。」→「作れないだろ。」→「簡単やって」→「早く作ってくれw」

「拳銃でも作って○すしかないのでは。」→「夢見すぎ。」

「大金持ちになって日本を買うしかない。」→「お隣の国に飼われてるやん。」

※→は投稿に対する返信です。

物騒な意見が多かった。みんな、社会に対して不満を抱えているのは明白だが、解決策に対して明確なビジョンを持っていない。返されてきた返信にはどれも馬鹿げた発想ばかりだった。まあこれが、普通だろう。返信者と他の人が議論をしているものもあった。ああでもない、こうでもないと自分がまるで専門家でもあるかのように相手の揚げ足をとったりしている。匿名なのをいいことに、大体は罵詈雑言を浴びせたりしている人が目立つ。その中に、面白いことを言う人がいた。

「まずは、全国で同時多発的な事件を起こし、政府を撹乱させる。そこから、日本の政治をよくするように要求する。」→「何するの?」

同時多発的な事件ー。賛成だ。震災や事件の対応などをみる限りじゃ、今の日本の各省庁の連携はあまり素早いものとは言えない。そこに同時多発敵に事件が起これば各省庁の連携は崩れ、政府はおパンクしてしまうだろう。また、スクロールを続けると、面白い返信があった。

「公共機関を攻めるのが一番いんじゃない。特にライフライン。水道とか、電気とか、ガスとか。」

いいと思う。人が生活する上で必要な施設に対してだと国も動かざるを得ない。他にも色々な意見が溢れていた。僕は、その中でも面白いと感じた人達にダイレクトでメッセージを送った。「一度、話しませんか。」と。すると、ほとんどの人から「いいですよ。」というメッセージが返ってきた。きっとみんな真剣に考えてくれたんだろう。僕は、日本の未来は明るいものだなと感心した。そして、みんなが集まるのに都合がいい地点として、東京に集まることになった。場所は、品川にあるとあるカフェだ。都内住みやそれ以外の人を考えるとこの場所が一番集まりやすかった。僕は、電車に乗って揺られながら本を読み、品川を目指した。都心に近づくにつれて電車の中の人が多くなっていくのを肌で感じた。品川駅に着くと、キャリーバックを持った人たちや、スーツを着た人たち、制服を着た学生。老人など様々な人が駅でごった返しになっていた。人混みに揉まれながらやっとのことで外に出る。一息つきたい気持ちになるが、こういう生活に少し憧れがある自分を隠せないでいる。東京に住んで毎日人混みに揉まれながら過ごす毎日。少し嫌な気持ちもするが、中途半端な田舎で腐っていく人生よりもましだろう。ましてや、限界集落のような土地で過ごす日々なんてー。社会から取り残されたような気分でいっぱいになる。そんなことを考えながら道に突っ立ていると、歩く人に当たりそうになる。危ないと思い、道の隅っこに移動した。自分が東京という街にまだ溶け込めていない気がした。いつも帰省する時には、東京という街に繰り出しているのに、今日はやけに周りを気にしている。少し緊張しているのかもしれない。それもそのはず、対面したことない人に会って。日本の政治について語り合う。なんて、小説の主人公みたいじゃないか。僕の人生においてそんな経験をしたことがまだ一度もない。よく、好きなアーティストのLiveでエンカをする人たちやコスプレしている人を見かける。その時、「自分はこんなにもコミュ力高く行動することなんてできないな」と思いながら過ごしていた。「ちょっと自分も混ざって会話してみたい。」なんて思ったりもしていたが、まさか、自分がそちら側の人間になろうなんて思っても見なかった。

 ピロリン。

スマートフォンに通知が入った。「もうつきました。」今日会う人の一人からの連絡だった。もう着いたのか。早いな。僕は、「自分ももう少しで着きます。」と返事をして、目的のカフェに向かった。

 カフェは僕のチョイスで選ばせてもらった。本棚が印象的なカフェで、コーヒーが美味しい。適当なチェーン店でも良かったが、せっかく東京に来たので、いい雰囲気のお店にした。店に入ると、店員さんが笑顔で出迎えてくれた。店の中にはお客さんは数人いた。どれが僕の待ち合わせている人かはわからないが、僕が予約を「鉢上」という偽名でとっているため、そちらに案内してもらった。すると、すでに二人の男女が座っていた。男性の方は、30代くらいの高身長の痩せ型の男性。女性の方は、まだ20代くらいの小柄な女性だった。お互いに自己紹介は済ませてあるみたいだ。僕は恐る恐る挨拶をする。

「遅くなってすみません。テルルです。初めまして。」

「いえいえ、時間前ですよ。私が、七海です。よろしくお願いします。」

「俺は、二階堂一真です。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。あとは、斎宮さんですね。」

僕らは、斎宮さんが来るのを待った。しばらくすると、小走りで高身長の女性がやってきた。

「すみません。遅くなりました。斎宮です。」

「大丈夫ですよ。今みんな来たところですから。」

こうして、今日集まる人は全員集まった。僕は、少し緊張していたのでご飯でもみんなに食べないか提案した。

「話をする前に、何か食べませんか。」

「そうですね。お腹空きましたし。」

「せっかく、おしゃれなお店ですし。」

みんなも緊張していたんだろう。少し空気が和らいだ気がする。メニュー表を見て僕は何を頼むか考えた。とりあえず、コーヒーとナポリタンにした。店員さんを呼んでみんなで注文をした。誰かとご飯を食べるなんて久しぶりすぎる。僕は、みんなに普段はどのような仕事をしているのか聞いてみた。

「皆さんはどんなお仕事をされているんですか。僕は、普通に会社員です。」

「俺は、船橋で配達やってます。あのゆるキャラのいるところです。」

二階堂さんが場を盛り上げようとしてくれた。

「私は、東京でOLやってます。それ以外は、少し配信とかやってる感じです。」

七海さんは柔らかい声で言った。うん、この声なら配信者としても聴き心地がいいかもしれない。

「私は、CAやっています。今日はフライト帰りで少し遅れてしまいました。すみません。」

斎宮さんが申し訳なさそうに言った。

「そんなことないですよ。わざわざ仕事おわりに来てくださってありがとうございます。」

僕がフォローすると、七海さんもフォローを入れた。

「そうですよ。CAさんとか憧れます。私も昔なりたかったけど、身長が足りなくてなれなかったな。」

「そうそう、僕ははハンドルネームですけど、他の皆さんは本名なんですか。」

「ハンドルネームですね。」

「ハンドルネームです。」

「ハンドルネームです。」

みんなそれぞれハンドルネームだった。

「ところで、テルルさんてなんでテルルさんってお名前にしたんですか。」

「ああ、俺も気になる。」

「めずらしいですよね。」

「ああ。テルルっていうのは、ちょっと恥ずかしいんですけど、みんなに問いかけるって意味を込めています。あと、明るい未来を照らす。的な。」

僕はちょっと恥ずかしげに答えた。

「なるほど。tellと照かいいですね。」と二階堂さんがいう。

「私、てるてる坊主かと思ってました。」と七海さんが笑顔でいった。

僕は、てるてる坊主の発想はなかったと少し感心した。そうこうしていると、注文した料理が運ばれてきた。僕のナポリタンに斎宮さんのグラタン。七海さんのフレンチトースト、二階堂さんのカレーライス。どれも美味しそうだった。

「美味しそうですね。テルルさんのお店んチョイスさすがですね。」七海さんがいう。

「そんなことないですよ。たまたま見つけただけです。」

そんなこんなで、軽く雑談をしながらしばらく過ごした。なんだろう、新しい友達ができたみたいでとても楽しかった。会社以外の人との関係が久しぶりすぎたのでとても新鮮だった。しかし、そろそろ本題の話を始めなくてはならない。僕たちは、ただただここにご飯を食べにきているわけではないのだ。食後の飲み物が届いた時、僕は話を切り出した。

「すみません。皆さん。そろそろ本題を話していきましょうか。」

「そうですね。」二階堂さんがいう。

「テルルさんが私たちを選抜した理由とかあるんですか。」斎宮さんが言う。

「選抜理由ですか。それは、僕にきた返信の中で面白い返答をしてくれた人たちを選抜しました。あ、面白いと言うのは笑い話とかそう言うのじゃなくて、真剣に考えて興味深いもののことです。」

「なるほど。そう言うことなんですね。」斎宮さんが頷いた。

「皆さんも、この社会に不満とか持たれているのは共通認識で良いですよね。」僕が言う。

みんな頷きながら、今の日本の問題を真摯に語ってくれた。二階堂さんは、配達ということもあり、今の送料無料のせいで運賃が上がらないが仕事はどんどん増えていき、大変だということと年寄り議員が寝ているのに荒稼ぎしていること。七海さんは、物価高騰や税金の高さについて。斎宮さんは、裏金やばらまきなど政治と金の問題について語った。みんなそれぞれ不満を持っているのだ。

「皆さんの意見はとても貴重でした。僕も皆さんと同じことを思っています。いくら働いても税金にお金を持っていかれてしまうし、その使い道はくだらない会食や裏金になったり、海外にばら撒いたり。ましてや議員ん答弁なんて小学生レベルの話し合いです。こんな世の中を変えていきたい。そう思っています。」

「だからどうしたらいいのか。についての問いを投げかけたんですね。」七海さんがいう。

「そうです。僕は、思っていました。同時多発的な障害を引き起こすこと。その焦点をライフラインに絞るということ。これは、僕も思っていました。」僕がいう。

「つまり、テルルさんはこれを現実にするわけですね。」二階堂さんが問う。

「そうです。」僕がいう。

「そしてその先に何を求めているんですか。」七海さんが僕に言った。

「政府の浄化と二度とこのようなことが起きないようにするシステムの構築。マックスウェーバーがかつて提唱した、’’理想的な官僚’’を現代に実現するものです。」僕は静かに言った。

「アダムスミスが提唱していた自己資本の最大化が今の政治に蔓延っている。それをマックスウェーバー的な政治システムを使って浄化するみたいな感じですね。」斎宮さんが言った。

「支配の三類の合法的支配が失われかけている。ましてや今の政府にカリスマ的な存在はもう存在していないし、伝統的支配なんて、日本ではないですし。」僕がいう。

「つまり、正しい支配を取り戻そうってことですよね。」七海さんがいう。

「そうです。」僕がいう。

「理念については分かりました。では、具体的にこれからどうしていくつもりなんですか。」二階堂さんが問う。

「そうですね。僕らは四人しかいません。この四人でできることは小さい。この輪をもっと大きくしていく必要があります。」僕がいう。

「輪を大きくするためにはどうしたらいいんですか。」七海さんが問う。

「まずは、小さなことを。小さな活動を始めることが大切ですね。少しはユーモア要素を入れて、でもどこかこの人達は変えてくれるような存在。象徴を作ります。具体的には、これから一緒に詰めていければと思っています。」僕がいう。

「象徴をつくると言いましたけど、キャラクター的なものの方がいいんじゃないんですかね。」斎宮さんがいう。

「どうしてですか。」二階堂さんが聞いた。

「そういうことですね。象徴が人であるよりも、空想的な存在の方が人は信仰しやすい。何よりもし政府に目をつけられた時に、人間だとその人を抑えられてしまうということですね。」僕がいう。

「なるほど。確かに、リーダーが逮捕されちゃうケースありますもんね。」七海さんがいう。

「昔のあの宗教団体の事件に似ていますね。」二階堂さんが言った。

「あの教団ってなんです。」ななみさんがきょとんと言った。

「地下鉄で毒ガスをばら撒いた宗教団体のことです。」と二階堂さんが答える。

「確かにあの事件では、教祖が捕まることで解決しましたから。」斎宮さんが頷く。

「そうだ、キャラクターで言うと2.5次元のアバターなんてどうですか。私も配信で使っているんですけど。」七海さんが提案した。

「いいですね。2.5次元の指導者のアイディア。」僕は賛同した。

「あとは、小さな活動ですね。何かありますか。」二階堂さんが尋ねた。

みんなも愛憎のような掘りの深い顔で悩んだ。大きすぎることをするのも問題だし、小さすぎても活動としての意味がない。バランスが大切だと思うが、なかなkそんなにいいアイディアが降ってくるわけでもない。

「と、とりあえずはミームなんて作るのはどうですか。」ななみさんが言う。

「ミームというと。」二階堂さんが問う。

「簡単にいうと、総理を使ったミームを作って、イタズラみたいなことをする。って感じです。選挙ポスターに落書きをしたらダメですが、ネット上にミームを作って広げるのはありなんじゃないですか。」七海さんが言う。

「そうですね。最初はそのくらいの方がいいかも。」僕が言う。

「確かに、その方が認知もされやすいし。賛同者も増える気がします。」斎宮さんが頷いた。

「ミーム作りは任せてください。1週間くらいしたら、キャラクターとミームをいくつか作って皆さんに共有しますね。」七海さんが言う。

僕らは、七海さんにお願いをした。

「我々のチーム名はどうします。」僕がみんなに問う。

「ルドラなんてどうですか。」斎宮さんが答えた。

「どういう意味ですか。」と僕が尋ねる。

「ルドラは、インド神話の神で叫ぶものとかを意味しています。私たちの活動が国民の叫びだとでも言うのでしょうか。そう言うメッセージを込めてルドラなんてどうですか。」斎宮さんが答えた。

「いいですね。ルドラ。キャラクターネームもルドラでいきますか。」僕が言う。

「それでいきましょう。早速、ルドラのアカウントを作ってみんなで共有しましょう。アカウントは、@RudoraでパスワードはUNAME4でお願いします。」と僕が言う。

「なんでうなめなんですか。」二階堂さんが聞いた。

「名無しの意味を付けたくて。匿名のアノニマスだと結構ありきたりなんで。UNAMEだとあまりないかなと。」僕が答えた。

「確かにそうですね。パスワード推測されやすいと悪用されそうですし。」二階堂さんが頷いた。

それから、今後のスケジュールなどを話し合った。連絡については、共通アカウントの下書き機能にコメントし合うことで連絡を取ること。ミームがバズったケースの次の活動。バズらなかったケースの次の対応。それぞれの役割分担。そして最終目標である。理想の官僚制度の獲得。など。時間が許す限り、僕らは話し合った。大体の予定が立ったので、今日は解散することになった。帰りの電車の中、僕はなんだか高揚感で満ちていた。自分のやりたかったことを行えているという充実感をすごく感じる。今日は、いい夢が見れそうだ。そう思いながら僕は家路についた。

 1週間ほど経ったある日。七海さんからキャラクターとミームが送られてきた。キャラクターは濃い紫色の髪のボブカットの女の子のアバターだった。ビジュアルは申し分なく、若者ウケしそうなキャラクターだった。ミームについても面白く。総理がウネウネしたり、ピョンピョンするみたいなものだ。それをSNS上でフリーソフトとしてばら撒き、キャラクターのアカウントでいくつかアイロニーを交えた投稿を行った。結果は、大成功だった。バズリにバズり、どんどんミームは使われていった。SNSのトレンドにも入り、ニュースで少し取り上げられた。

ーニュース番組ー

「総理を使ったミームが若者の間で大バズりしています。若者にインタビューしてみました。」

♪~

モザイクと音声変換のかかった若者が映る。

キャスター:総理のミームの面白いところはなんですか。

Aさん:いろんな種類や総理がいろんな感情を作ってくれるんですよ。

キャスター:なるほど。

Aさん:それに、使いやすいところがいいですね。日頃のストレス解消に使ってます。総理ボイスとかもあるので余計面白いですね。

実際にキャスターも動画を作ってみる。

キャスター:うわ。面白いですね。

Aさん:でしょ。こいつ増税ばかりするから、こう言うところで仕返しをしてやらないと。なんちゃって。

キャスター:そう言う意味もあるんですね。

画面は移り変わり、スタジオに戻る。コメンテーターの山崎という初老の男がインタビューに対して面白そうな顔をしてコメントする。

山崎:実に面白いですね。総理はこれに対して意見とか言っていないの。

キャスター:ええ。こちらのミームに対してのコメントは、キャラクターとして浸透されているのはいいことであるが、その運用について少々遺憾である。とコメントしています。

山崎:遺憾ね。国民はもう遺憾を通り越していると思うけどね。だからこうやって、行動しているんだと思うよ。

キャスター:そうですね。選挙に行っても意味がないとまでは言いませんが、なかなか国民の意見は反映されないという現状ですからね。

山崎:そうそう、元総理が殺害される事件なんてものもあるかもしれない。

キャスター:その可能性があると。

山崎:いや、このままではそう遠くない日には現実にならないとも言えない。というだけですよ。

キャスター:なるほど。


山崎ってコメンテーターは無難なコメントしかしないな。このミームははじまりにしか過ぎない。夜明けのラッパに過ぎないのだ。僕は、ニュースを見ながらそう感じた。そろそろ、次の計画を実行すべき時がきた。僕は、SNSのアカウントの下書き機能を除いた。すると、斎宮さんから「そろそろ次に進みませんか。」というものが書かれていた。僕は、その下書きの後に、「賛成です。」と下書きを残した。しばらくすると、他の人たちも同意してくれた。そのため、僕らは次のプランを実行した。

 春も深まる日。鳥達が鳴いている歌声がまるでフルートの音色のように聞こえる。こんな清々しい陽気の日に、ルドラのアカウントにて、声明を出した。

”私は、私の住む日本がより良い社会になってほしいと思っています。人が苦しむ社会ではなく、人が幸せに生きることのできる社会を。でも、今の日本にはたくさんの課題があります。政治の腐敗。超少子高齢化による問題。上がる物価に対して上がらない賃金問題。そんな数多くの社会への不満が溢れているこの社会をなんとかして良いものにしたい。そう、思っています。しかし、選挙に行っても社会は変わらない。メディアが報じる情報には制限がされ、正しい情報を得ることができない。このままでは、フェアじゃないじゃないですか。かつて四民平等を掲げた社会でも、上級国民と呼ばれる人たちが牛耳る社会。聞いて呆れますよね。私は、そんな社会を変えるために行動します。そこで皆さんにも協力してほしいのです。私、一人ではどうしても限界があります。みなさんは、みなさんの人生の主人公です。そんなみなさんと協力すればきっとより良い社会ができると思います。みなさんも私と一緒に革命を起こしてみませんか。”

 この声明にたくさんの人たちがコメントを寄せてきた。肯定的な意見もあれば、否定ってきな意見もある。これはテルルのアカウントの時と同じだった。違うのは、前回よりも多くの賛同者がいたということだ。それは、ミームやキャラクターとしての代表がいるおかげでもある。数多くの返信で飛んできたのが「私たちは、何をすればいいですか。」というものだ。行動をしたいが手段がわからないもの。そういう人は多い。僕は彼ら彼女らの心に手段という触媒を加えてあげることを考えたのだ。そう、誰かに触媒を与えることが僕の最大の触媒なのかもしれない。

”みなさんのたくさんの意見ありがとうございます。まずは、この投稿を引用していただきたいです。目指せ10万件の引用です。”

そういうと、瞬く間に投稿は引用されていった。10万件を望んでいた引用だったが、数日のうちに20万件の投稿が引用された。着実と影響力を持ちつつあるルドラのアカウントに手応えを感じていた。そして、僕らは次のステップに進むことにした。

 ここからは、二階堂さんの仕事になる。二階堂さんは、自身の働く運送会社の各運送用トラックに政治家事務所宛のダンボールを詰めた。運送会社に働く二階堂さんは、政治家の事務所の位置も運送会社の運送っスケジュールも把握していた。そこで、他の同僚に怪しまれないように各事務所にバレないように荷物を送ることができるのだ。差出人はもちろんルドラ。怪しまれないように、それっぽい法人の名前を入れて、何かの印刷物がはいいているように偽装した、作業が終わったタイミングで、あらかじめ作成したルドラより声明を流した。

”政治家さん達にプレゼントを用意しました。政治家さんは、今の人間社会で国民の税金をしゃぶる金食い虫です。そんなみなさんなら喜んでくれるかな。みなさんは、この投稿を引用してください。よろしくお願いします。”

投稿すると、瞬く間に引用されていった。果たして、何が起こるのだろうかという楽しみがSNSの界隈の中で賑わっている。その様子を僕は眺めながら僕は楽しんでいた。社会に堕とした悪戯を。

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