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シロクマ文芸部 投稿

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シロクマ文芸部に投稿させて頂いた作品のまとめです。
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山のしごと 1632文字#シロクマ文芸部

山のしごと 1632文字#シロクマ文芸部

紅葉から聞こえてくる声があったとしても、俺は紅葉からの言葉を聞くことは出来ない。

けれど、一本一本の木々は同じな様に見えて全然違う事がわかるし、こうして見分けられる事が出来るのは、中々稀有な事だと知り、いつからか自分の特技へと変わっていった。

木と土が合わさる場所。
自然が支配する場所。

そんな『山』を、俺は歩く。

🌿🌿🌿
「すみませーーんっ!!そこ、登山ルートから外れてますっ!左の

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私の読書スタイル1071文字#シロクマ文芸部

私の読書スタイル1071文字#シロクマ文芸部

秋と本の相性は、とても良いと思う。

『読書の秋』なんて言われているが、中国の唐時代の詩人である韓愈(かんゆ)が書いた漢詩「符読書城南詩」の一節に由来しているらしい。

昔も今も、感じる事、思う事は変わらないんだな〜と思うと、少し嬉しい。

そんな私。

私は、読書が好きだ。

と言っても子供の頃から本の虫だった訳では無い。
小学生の頃はそれなりに図書室へ行って、流行りの怖い話の本や料理の本、伝記

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あくまで、私の好み 651文字#シロクマ文芸部

あくまで、私の好み 651文字#シロクマ文芸部

『爽やかな』という商品のキャッチコピーの様に、一部の俳優さんにも『爽やか』という言葉がつく事が多々ある。

あくまで私個人の話になってくるが、私はそんな「爽やか俳優」とテレビで言われる俳優さんが、少しやさぐれた様な役を演じている姿を見るのが凄く好きだ。

見慣れない無精髭を少し生やし、髪の毛はキチッと決める訳ではなく、まぁ、纏まってればいいやくらいで整えられた少し長めの髪。

そして、瞳に翳りが見

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巡り合わせ 2535文字#シロクマ文芸部

巡り合わせ 2535文字#シロクマ文芸部

想定していた文字数を超えてしまいました。
長文になっているので、もしよろしければ、お時間が出来た時に読んで頂けたら幸いです。

◈◈◈
金色に輝いていたであろう古い一輪挿しは、暫く開かずの間だった蔵の中で眠ったまま、美しかった金色は鈍色の色へと変わってしまった。

「……どうしたら良いんだ…」

俺は本庄 優真(ほんじょう ゆうま)大学1年生。

地元の大学に進学し、今日は休みを使って、母に出来る

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階段だけど、選んだ理由  1131文字#シロクマ文芸部

階段だけど、選んだ理由 1131文字#シロクマ文芸部

月の色は変わらずそこにある。

どんな色に見えているかは、見ている人だけの見え方があって、千差万別だと思う。

「はぁ〜〜!今日、晴れてよかったな〜」

帰宅してきた私は、汗をかいている服や髪の毛をスッキリさせる為、疲れている体を何とか動かしてシャワーを浴びる。

おっと、忘れてはいけない。

シャワーを浴びる前にエアコンのスイッチを入れる。

外に置いてある室外機が、スイッチを入れたと同時に動き

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流れ星を見に 1499文字#シロクマ文芸部

流れ星を見に 1499文字#シロクマ文芸部

流れ星が見たい。
綺麗な夜空の下で。

近々、日本で流星群が見られるらしい。
その流星群が一番見られる日は、私の仕事のお休みの日で、次の日も休み。

これは行くしかないっ!と、早速準備を始めていく。

私の趣味は『車中泊』。

趣味と言っていいのか分からないけれど、相棒の車と一緒に少し遠くへ行って、そこで一泊車中泊をするのが、私の中の癒しで、息抜きの時間でもある。

私はさっそく、地元の天文台のホ

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私の夏の恒例【夏の雲】1419文字#シロクマ文芸部

私の夏の恒例【夏の雲】1419文字#シロクマ文芸部

夏の雲は、まるで増殖するかの様にモクモク、モクモク湧いている。

そんな雲を見ると、私は思う。
当たり前の事だけど、

あ〜、夏が来たんだな〜って。

★★★

「さて、早く行かないとっ!」

私は、今から甲子園に行く。
と言っても、兵庫県に住む母方の祖父母の家に何日か泊まるついでに、こうして毎年甲子園に行き、高校野球を観戦しているのだ。

今年は、私の通っている高校が甲子園出場を果たし、学校の応

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なつの日常 1027文字#シロクマ文芸部

なつの日常 1027文字#シロクマ文芸部

風鈴とビールを持って、縁側へ。

祖父母から受け継いだ古い家は、少しずつ自分で直しながら自分好みに整えている最中だ。

ここは、森が近くて自然が豊か。

人目を気にする事はなく、唯一の心配は猪や鹿が、たまに顔を覗かせる所。

けれど、人の気配がそこにあれば、森に住む生き物たちは寄ってこない。

まだ、人と自然の境界線は生きている。

そんな所に住んでいる私の家の縁側へとやって来たら、脚立を使って高

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消えない、貴方。1126文字#シロクマ文芸部

消えない、貴方。1126文字#シロクマ文芸部

かき氷を売っていた。

もう夕方から夜になる時間帯で、日は沈みかけていてが、夏の暑さが和らぐ事は全く無く、帰宅している最中にも、夏の暑さがしみてくる。

帰りにコンビニ寄ってアルコール3%の「ほろよい」を購入し、帰宅。

汗をかいていたから先にシャワーを浴び、作り置きのおかずを何品か取り出し、冷凍ご飯を解凍すれば、あっという間に晩御飯けん晩酌の出来上がり。

エアコンをかけて、テレビで録画した恋愛

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決め手だったあいつ。1457文字#シロクマ文芸部

決め手だったあいつ。1457文字#シロクマ文芸部

海の日を迎えた日の事だった。

当時中学3年生だった俺は、まだ自分が進学したい高校を決めかねていた。
けれど、そろそろ決めないと受験勉強が間に合わなくなってくる。

けれど、何処の高校を見てもイマイチパッとせず、何となくボーッと過ごしてしまっていた時に、その噂は聞こえてきた。

『西蓮寺 悟(さいれんじ さとる)が公立の高幹(たかみき)商業野球部に入るらしい』

俺は小学生の頃から野球をしていて、

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私だけの特権 964文字#シロクマ文芸部

私だけの特権 964文字#シロクマ文芸部

夏は夜明けが早いから、遅く寝てしまっても薄いカーテンからのぞく日差しが目覚ましとなって起きてしまう。

「………っ〜〜、まだ4時間しか寝てないんだけど…………」

昨日は生理前特有の不眠に悩まされ、夜は全然眠くならず、色々足掻いて見たけれど全部駄目だった。

今日は休みだけれど、ウダウダしてしまいそうな気がする。

………寝不足だから………。

スースー。

テーブルを挟んだ隣のベッドからは、同棲

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手紙には、書かなかったこと。1480文字#シロクマ文芸部

手紙には、書かなかったこと。1480文字#シロクマ文芸部

手紙には、ただ一言。

『優葉(ゆうは)ありがとう。またな』

……これだけ?……なんて思わなくもないが、でも、これだけで充分なのだ。

だけど…………

「けどな〜、俺は結構な量、書いたんだけどな〜手紙。」

高校3年生の夏。
俺の所属している野球部には、いつから始まったか分からない伝統が存在している。それは、最終学年になる3年生は、部活を引退する時に、同級生の部員全員に手紙を書くという決まり事

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弾けて、こぼれて。2999文字#シロクマ文芸部

弾けて、こぼれて。2999文字#シロクマ文芸部

ラムネの音が弾けた時……

その、弾けた音は……

虚しく響くサイレンの音も、一緒に弾けさせた。

◈◈◈
「桜蔵(さくら)〜何時まで残ってんだ?早く帰ろーぜ」

「うん?もう少しだけ…」

「はあ……本当、桜蔵練習の鬼だな…」

俺は今、同級生で友人、そして野球部の名良橋 桜蔵(ならはし さくら)が、帰り支度するのを待っている。

「もう明後日決勝なんだからさ、大事を取って体休めろよ」

「う〜

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雨と恋慕 1365文字【月曜日】#シロクマ文芸部

雨と恋慕 1365文字【月曜日】#シロクマ文芸部

月曜日の夜。俺は早めにシャワーを浴び冷蔵庫から缶ビールを一缶取り出す。
本当はコップもキンキンに冷やしておいてそこへ冷えたビールを移してビールを飲みたいが、つい忘れてしまう。

俺が今生活をしている場所は一人暮らしをいている家ではなく、例えるなら、学生寮の監督部屋の様な場所で暮らしている。u-25を対象にした野球チームを結成し、そのチームとプロのu-25で試合をするイベントを開催する指揮を取ってい

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