流れ星を見に 1499文字#シロクマ文芸部
流れ星が見たい。
綺麗な夜空の下で。
近々、日本で流星群が見られるらしい。
その流星群が一番見られる日は、私の仕事のお休みの日で、次の日も休み。
これは行くしかないっ!と、早速準備を始めていく。
私の趣味は『車中泊』。
趣味と言っていいのか分からないけれど、相棒の車と一緒に少し遠くへ行って、そこで一泊車中泊をするのが、私の中の癒しで、息抜きの時間でもある。
私はさっそく、地元の天文台のホームページを開いて見てみる。
すると、流星群に合わせてのイベントが行われていて、当日には、天文台の駐車場を開放し、車中泊やキャンプをしながら流星群が見られるようになっているらしい。
……何と懐が深いのか。
勿論、事前予約は必要だけれど、まだ定員数を超えてはおらず、私は予約する事が出来た。
車に置きっぱなしにしている車中泊用の道具や荷物を改めて確認して、足りないモノは家から補充したり買い足したりしながら当日を迎えた。
駐車場は午後6時から開放される様なので、それに合わせて出発する。
「うん。忘れ物はないなっ!」
私は車中泊する時は、前もってお風呂に入る派だ。そうすれば、後はご飯を食べて寝るだけだし、とっても楽。
「よしっ!行くぞ〜!!」
流星群を見に山にある天文台へっ!
スマホでカーナビを設定し、ガソリンも満タンに。相棒と共に出発!
車で走る事、約1時間。
県道が整備されているものの、周りは緑に囲まれた静かな場所に展望台はある。
車から降りると、すぐに涼しい風が髪を撫でる。
天文台で受付を済ませ、流星群がピークを迎えるまで天文台の中を見学したり、車の中を車中泊仕様にして、前もってダウンロードしていた映画やドラマや読書をしながら時間を過ごす。
此処に来る途中でスーパーで購入したお弁当を食べ、ノンアルコールで晩酌。
段々と夜は更けていき、天文台の駐車場も段々と人の気配が増えてきた。
けれど、流星群の次の日が平日という事もあり、それ程人は多くない。
私は車から降りて、天文台が開放している広場へと行き、レジャーシートを広げる。
警備としてお巡りさんが近くにいる為、女性1人で参加の私は心強い。
周りで同じ様に流星群を見ようとしている人達と混じって、私は静かに夜空を見上げる。
「……夜空……こんなに綺麗なんだ……」
周りが緑ばかりのこの場所は、普段は見えない星や夜空の鮮やかさを目の前に写してくれている。
「凄いな〜……こんなに綺麗なんだ……」
私は流星群の事を忘れ、夜空の綺麗さに魅了されていた………
……その時…………
キラッ……
「…………っ!!!」
あんなに長くて綺麗な流れ星……初めてみた……。
「流れ星だー!!」
近くに居た親子連れが反応する。
綺麗な夜空に、大きく、長く、そして…青く煌めいた流れ星が1つ流れた。
それからも、夜空を見上げている間、沢山の流れ星を見たけれど、最初に見た。あの煌めくような、力強く儚い流れ星は、最初の流れ星だけだった。
けれど、私は…生まれて初めてこんなに星の多い夜空を見て、そして…流れ星を見たのだ。
それだけで、心はとても満たされていくのを感じる。
流星群を見終えた私は、車の中へと戻ってきた。
寝間着に着替え、結んでいた髪の毛をほどく。
寝袋の中に横になると、さっきまで見ていた流星群が、瞼の裏に蘇ってくる様だ。
「……ここに来て……良かったな〜」
1人、車を走らせて流星群。
想像していたよりも鮮やかで煌めいた夜空が広がっていた。
私の今日見る夢は、どんな夢だろう。
出来れば…もう1度
あの流れ星を見てみたい。
そんな事を思い、反芻しながら、私は眠りの中へと、静かに……そっと………入っていくのだった。
〜終〜
こちらの企画に参加させて頂きました。
小牧幸助さん
ありがとうございました。
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