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詩集 第6部

30
今まで書いた詩をまとめました。
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#秋

【詩】三日月夜

【詩】三日月夜

くもり硝子の小窓から
三日月が ひっそり こんばんは

犬のきば 鋭利につなぐ
空のすきま 黒雲をてらす
琥珀色のひかり

夜空の切傷のように
畏怖の念や威厳が
心にふかく とけこんでゆく
月はとても 優美であった

【詩】静かな麦酒

【詩】静かな麦酒

木枠のまどから早朝、
秋の水風とともに、
ねている私の顔をなでた。

麦酒のにおいの排気ガス。
やさしくゆれる機械の音。
嫌なしらせに気づきしも、
まぶたはとじたままでいる。

なにも告げずに出ていくのは、
小雪のおりたつ少しまえ。
寂しくなって、悔しくなって、
目頭がふつふつあつくなる。

【詩】秋の花

【詩】秋の花

秋ぐちに咲いている花よ、花よ。
ほそ風にゆれて、たえ忍ぶか。
水をふくんだ、透明な、
水色の空のした。
まだ、昨晩には咲いていなかった
花よ、花よ。

いつしか茶色の小山がそこにあり、
かたわらに寝そべっていた花よ、花よ。
なまえは覚えてはいないけど、
幼子のつめのように、
小さくうるおい、
愛らしかった花よ、花よ。

野花はやがて見向きもされず、
下衆とともに冬をむかえ、
また秋ぐちを待つのかい

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