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読書感想

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読んだ本のレビューです。Xのポスト(mikuu888@)や読書メーターで書き切れないレビューをnoteに書いています
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『私の盲端』朝比奈秋著 朝日新聞出版 レビュー

『私の盲端』朝比奈秋著 朝日新聞出版 レビュー

▶今日のひとこと

駅前を通りかかったら、カップルが手を繋いで笑いながら急げーって、駅の方へ仲良く走っていった。丁度イヤホンから米津玄師のlemon。しみじみと失恋を歌っているのが聴こえていて、なにかの恋愛物語を走馬灯のようにみたような感覚に…笑

今回レビューする『私の盲端』も不思議な感覚が身体の内側にはいってくるような読み心地だった。

『私の盲端』朝比奈秋著 朝日新聞出版刊

▶あらすじ

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『赤と青とエスキース』青山美智子著 PHP研究所 レビュー

『赤と青とエスキース』青山美智子著 PHP研究所 レビュー

▶今日のひとこと

9月も半ばに入ってもなんでこんなに暑いのかな。東京は観測史上、最も遅い猛暑日を観測したらしい。そう思うと日本とは季節が逆、南半球の冬をどこか羨ましく思ってしまう。この暑さもあとすこしの辛抱だけど。その少しがきつい笑

今回のレビューは『赤と青とエスキース』青山美智子著 PHP研究所刊行。南半球、オーストラリアのメルボルンから始まるお話。

▶あらすじ

メルボルンに留学中の日本

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『苦役列車』西村賢太著 レビュー

『苦役列車』西村賢太著 レビュー

▶今日のひとこと最近建物を壊している工事現場をよく見かける。生活していた人達の痕跡がまだ残る現場。解体現場の作業員は外国人が多い。どこのお国のものか分からない言葉で、声を掛け合いながら、暑いさなか作業する彼らを思わず見つめてしまった。

それでは『苦役列車』レビュー

▶あらすじ〇苦役列車

父の性犯罪によって一家離散し、中卒で港湾の日雇い労働を生活の糧としている貫多。性犯罪者の息子というレッテル

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『劇場』又吉直樹著 レビュー

『劇場』又吉直樹著 レビュー

▶今日のひとこと
映画バック・トゥ・ザ・フューチャーにでてきた悪役ビフのモデルと言われているトランプ氏。映画の制作は1985年から。そんな昔からヒール街道まっしぐらで、今やアメリカ大統領の再選を目指し、暗殺されそうになったりしながら、八十歳近くになって若い民主党ハリス候補とバトルを演じている。良し悪しはともかく、とんでもなくエネルギッシュな人生。トランプ劇場はまだまだ続きそうだ。

と、ニュースを

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『ユーチューバー』村上龍著 レビュー

『ユーチューバー』村上龍著 レビュー

▶今日のひとこと

黄色が鮮やかすぎて、目を閉じてもその色が瞼に残る表紙。でもこんな印象こそが村上龍氏作品の味なのかもしれない。

『ユーチューバー』村上龍著 幻冬舎刊レビューを。

▶『ユーチューバー』あらすじ(4篇連作短編集)○ユーチューバー

高齢で高名な作家矢崎健介が過去の女性遍歴をユーチューバーに語る。

○ホテル・サブスクリプション

小さな企業の役員わたしは作家である矢崎健介と知り合

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『春のこわいもの』川上未映子著 レビュー

『春のこわいもの』川上未映子著 レビュー

▶今日のひとこと

台風一過、綿あめみたいにぐるぐると湿気を巻きとって去ってくれないかなって、意味無く期待したけれど、気温上昇プラス湿度もたっぷり。そりゃそうだ……

▶『春のこわいもの』あらすじ○青かける青

入院中のわたしがきみへ書く手紙。(一人称)

○あなたの鼻がもう少し高ければ

大学も退学寸前のトヨは、SNSでみるキラキラ女子の生活、整形することに憧れ、ギャラ飲み女子予備軍の面接に

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『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬著 レビュー

『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬著 レビュー

▶今日のひとこと

 台風がきた。というかかすめた? テレビではずっと緊急体制で報道している。恐る恐る用事で外にでると、雨風とも大したことはない。とはいえ生暖かい風がびゅーびゅー吹いて、髪の毛を容赦なく掻き乱して落ち武者状態にするのはやめてほしいし、気圧のせいか気だるい。

 とにかくこのまま大きな被害を出さないで台風にすぎさってくれるよう祈るばかり。でもあしたも災害レベルに暑いみたい。試練の夏は

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『バリ山行』松永K三蔵著 レビュー

『バリ山行』松永K三蔵著 レビュー

▶今日のひとこと

義実家から枝豆を送ってもらった。茹でると
ふわっと枝豆特有の甘くて香ばしいあの香りがしてヨダレが……笑
ゆでても香りがしない枝豆もあるけど、これは間違いなく美味しいやつ!鮮やかな緑が湯気に包まれているのを見ていると幸せな気持ちに。

それでは『バリ山行』のレビューを

▶あらすじ

建装会社社員の波多は、会社の登山部になんとなく加入、登山に馴染み始めた頃、低山で道無き道をゆく、

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『かか』宇佐美りん著 レビュー

『かか』宇佐美りん著 レビュー

今日のひとこと

 少しでも読みやすくなればとレビューの様式を変えてみた。模索しながら、このスタイルでやってみようかな。
それでは本題のレビューを。

あらすじ

 離婚がきっかけで、心を病み暴れるかか(母)。娘である浪人生うーちゃんはそんなかかを憎む一方、かかを産みなおしてあげたいと思うほど愛している。そうしてかかの手術の前日、禊ぎをするように熊野へと旅立つ。

ちょこっと感想

 女性性に対す

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『こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。』標野凪著 レビュー

『こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。』標野凪著 レビュー

 家族が熱をだした。クリニックに連れていって検査をしてもらった所、コロナは陰性。それでも熱はでてるので苦しそう。私は元気ではあるけれど、なんだかざわざわと落ち着かない気持ちに。そんなとき手に取ったのが本書。シリーズ2作目。

 喫茶ドードーは、訪れたお客さんに寄り添うように、ピッタリな料理をだしてくれる。店主そろりさんの飄々としているのに、なんだかほんわか温かいもてなしで、訪れたお客さんそれぞれ、

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『息のかたち』いしいしんじ著 レビュー

『息のかたち』いしいしんじ著 レビュー

 いしい先生の新刊。サイン入り本を先日ゲット。

 こちらの本を買った新宿の本屋さん。場所がちょっとわかりにくくて。もともと方向音痴もあってウロウロしながらビルの地下2階にいったら、入口になぜか受付が設置されていて人が立っている。なんだろう、とひょいとのぞいたら受付していた方と目があった。

「マスコミの方はこちらに並んでください!」

 キビキビっとそう言われ誘導されそうに。慌てて本買いにきただ

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『BUTTER』柚木麻子著 レビュー

『BUTTER』柚木麻子著 レビュー

 本書にでてくる、若くも美しくもない女性受刑者梶井真奈子は男を誘惑し金を巻き上げ、しまいには三人を殺害した罪で刑務所に収監されている。その美醜もあって世間で注目されるカジマナを取材するために、刑務所まで面会に通う女性雑誌記者、町田里佳。次第にカジマナに感化されていき、本人のみならず周りにも影響が及んでいく。

 雑誌副編集長と獄中結婚した木嶋死刑囚をモデルにしつつ、独自の展開を辿っていく本作。

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『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋著 レビュー

『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋著 レビュー

 今期芥川賞受賞作2作。どちらを読もうかなとまず冒頭をさらっと読んでみた。朝比奈氏は初めましての作家さん。お医者様という経歴から固い文章を予想していたのに、なんだか柔らかい。世界にはいりやすい。ということで『サンショウウオの四十九日』をチョイス。

 叔父のなかに胎児として存在したという特異な出生経緯を持つ父と、結合双生児として生まれた姉妹、舜と杏。叔父の死により、もし自分たちのどちらかが死んだら

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『一人称単数』村上春樹著 レビュー

『一人称単数』村上春樹著 レビュー

 夕方、キャベツをひと玉だけ、自転車の後ろのカゴに入れ、坂道をハイスピードで走り去っていく女性の後ろ姿をみていたら、なんとなく暑さが和らいだ橘です笑

 さてレビューは久々に読んだ村上春樹作品。ハルキストではないので、読んだ作品数は少ないものの、ノルウェイの森や海辺のカフカなど、かなり影響をうけた。

 表題作含め8篇、一人称で描きだす村上ワールドを堪能できる短編集。独特の空気感漂う文体は健在。8

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