橘 実来

読書感想文や小説を書いてます。5分後に大号泣のラスト(河出書房新社2024年9月6発売)短編収録 アイコンは塔野さま ヘッダーはふうちゃん様

橘 実来

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  • 【長編】First Love&スピンオフ

    eスポーツに賭ける少年のひたむきさ、初めての恋を描く青春ストーリー

  • エッセイ

    書いたエッセイをこちらのマガジンにまとめていきます。宜しければお付き合いください( .ˬ.)"

  • 読書感想

    読んだ本のレビューです。Xのポスト(mikuu888@)や読書メーターで書き切れないレビューをnoteに書いています

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    自己紹介、サイトマップ、お知らせなどまとめる予定です。

  • 【長編】まりあさんは溺愛デキナイ

    第一話から第十三話までをまとめる予定です。

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 バラバラなnoteをもうちょっと見やすくしたい。そう思ってサイトマップを作ってみることにしました。果たしてこれで見やすくなるのか……note初心者とりあえずチャレンジ! (随時更新していきます) 【自己紹介】名前の由来、noteでの活動についてなどなど 【長編小説】2作品 〇まりあさんは溺愛デキナイ(全13話 ) 恋愛が苦手なアラサー女子とトランスジェンダー男子と成り立つのは友情なのか、恋なのか、愛なのか (第1話がINDEXになっています) 〇First Lov

    • 【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第13話 心を乱すひと ②

      「起こしちゃった?」  彼女の髪をもう片方の手で撫でると、どこか途方に暮れた人みたいに微笑んだ。 「大介さん」 「うん?」  俺の首元あたりに顔を寄せて、ぽつりと呟いた。 「どこにも行かないよね?」  理名の内側から無意識に零れ落ちたようなコトバ。それはひどく小さい声だったのに、はっきり聞こえた。 「当たり前だよ。理名のところ以外に俺、どこ行くの?」  髪の毛をそっと手で梳きながら、わざと拗ねたように言って笑う。しばらく俺の顔を見つめていた理名がそっと笑顔を浮

      • 【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第13話 心を乱すひと ①

         眠いのに目が早く醒めてしまった。ベッドサイドにある時計はまだ五時半。時差ボケのせいだろう。体内時計が日本時間にあっていない。だから海外、特に日付変更線をまたぐフライトは嫌いなんだ。隣に寝ている理名を見る。無邪気な顔をしてよく寝ているから、安堵の吐息をつく。  むき出しの白い肩。片手ですっぽりと包めてしまう。肩ですらこんなに華奢。愛おしさがこみあげ、彼女が起きないように気をつけながら、鎖骨から肩のラインを撫でる。 「うん……」  小さな呟きに動きを止める。手を離しそっと

        • 青森に来ている。一昨日初雪なのかな、軽く積もったのだけれど、地元の方々はこの程度の雪なんて全く動じない。車も普通にバンバン走るし、歩いている人もほぼ全員スノーブーツ着用でスタスタ。青森はもうすぐ雪に覆われる冬がやってくる。その前のひととき、葉の紅葉。青空に映えて鮮やか。

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        • 【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第13話 心を乱すひと ②

        • 【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第13話 心を乱すひと ①

        • 青森に来ている。一昨日初雪なのかな、軽く積もったのだけれど、地元の方々はこの程度の雪なんて全く動じない。車も普通にバンバン走るし、歩いている人もほぼ全員スノーブーツ着用でスタスタ。青森はもうすぐ雪に覆われる冬がやってくる。その前のひととき、葉の紅葉。青空に映えて鮮やか。

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          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑩

           彼が私を穏やかに見つめているから。ここしばらく胸を疼かせていたことを、そっと舌に乗せてみる。 「しばらく誰ともつきあっていなかったって、言ってましたよね。それは……彼女のことが忘れられないから、長い間誰ともつきあわなかったってことなんですか?」  彼にとってそれくらいの存在感をもつ人だとしたら。私なんて到底敵うわけがない。おそるおそるそう聞いて大介さんの表情を窺う。  彼は昔を思い出すように、視線を遠くに漂わせる。そんな何気ない仕草でも、じっと見つめてしまう。彼のなか

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑩

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑨

           執拗に舌をからめとられて息もできない。飢えた動物が獲物を貪るように、私は大介さんに食べられていた。獲物にされた動物が、歯を立てられた瞬間、諦めと同時に感じる気持ちってこんな感じなのかもしれない。苦しさと恍惚感。それらが一緒に押し寄せてきて、立っていられなくなる。背中にまわした手に力をいれたとき、彼の唇がすい、と離れてしまった。 「あ……」  名残惜しげに口から溢れた声。恥ずかしさが込み上げたけれど、強く抱きしめられ顔を胸に押し付けられたから、それもそこに挟まれ、消えた。

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑨

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑧

           掠れたその声に、記憶が勝手にたちあがり体がぴくりと震えてしまう。頭じゃなくてもっと深いところにある感覚の記憶。 「あ……もちろん。来てください。日本に帰ってきたばかりですごく疲れているのに、お待たせしてごめんなさい」  へんに意識してしまった自分が恥ずかしくて。それを悟られないようにあっさりとした感じでそう返事をすると、大介さんも小さく微笑んだ。 「うん、疲れた。あいつと会ったのがトドメだな」  いたずらっぽく笑い私の手をひいて歩き出した。健史と一緒にいたことを責め

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑧

          【エッセイ】やっぱり歯医者さん好き

          冒頭からタイトルと180度反対なことを書いてしまって恐縮だけれど、私は歯医者さんがめちゃくちゃ苦手だ。嫌いというより恐怖心が半端ない。 小さな頃から歯医者さんに通い、なんなら矯正までしたので以前は苦手意識くらいはあったものの、恐怖なんてものはなかった。やだなあ、くらい。 それが恐怖に変わったのは、歯医者さんではなく、美容院での体験だった。美容院?!何故?!と思われるかもしれないけれど、両者は椅子に固定されて身動きできないまま施術されるという、恐るべき共通点がある。 その

          【エッセイ】やっぱり歯医者さん好き

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑦

           健史は一瞬、瞳を見開いたあとに笑みをこぼした。張り詰めたものを少し解いたような笑みだった。 「いえ。それだけです。余計なことを言ってすいませんでした。じゃあ俺はこれで失礼します」  大介さんに軽く頭をさげ、私にもじゃあね、といって背中を向けた。 「あのさ、北川君だっけ? 俺からもひとつ聞いていい?」  今度は大介さんが呼び止めた。健史は立ち止まってゆっくりと振り返る。じっと大介さんを見たあと、挑戦を受けた人のように静かに微笑んだ。 「もちろん。なんですか?」

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑦

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑥

           最初に大介さんに会えて瞬間的に湧き上がったのは、圧倒的な嬉しさだった。会いたくて仕方なかった。勝手に体の内側から喜びが溢れてふにゃ、としてしまいそうになる。 「大介さん! 帰ってくるのは、明日の夜だって……」  大介さんはまじまじと私たち二人を見つめたあと、ため息をついてからぼそりと呟いた。 「帰りの飛行機、早いのに変えたんだけど。メッセージ送っても電話しても反応ないからここで待ってた。……余計だった?」  まるで自嘲するように小さく笑って、ため息まじりに呟くから。

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑥

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑤

          「どういうこと?」 「理名、自分から好きにならないと、付き合わないっていうからさ、こっちからは動けないじゃん? だからさりげなく好意がありますアピールしつつ、祐希に『コクられたけど、他に好きな女いる』って話をさりげにしたわけ。祐希と美貴がつきあいはじめていたから、美貴経由で理名にまで流れるってわかっていたから。で、理名の危機感と期待感を煽った」   確かにそんな話を美貴から聞いて、まさに焦った記憶がある。 「その話、聞き覚えがある! しかも二人くらいから告白されたって聞

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ⑤

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ④

          「健史、ありがとう。そうだね。変わらないよね」  健史はちょっと照れたように笑ってビールをごくごく飲んだ。彼はお礼を言われたり褒められたりすると、居心地が悪そうにする。そんなところも変わらない。 「ふたりはさそれでいいかもしれないけど、それぞれの恋人はそんな関係を知ったら、やっぱり落ち着かないというか、気になるんじゃない?」  祐希くんがそう言うとすかさず美貴が嬉しそうにツッコミをいれる。 「私にそういう人がいたら、気になる?」 「うーん。やっぱり気になるよね。元カ

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ④

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ③

          「じゃ、久しぶりに四人揃ったから、乾杯!」  健史があっさりした調子でそう言うと、皆でビールジョッキを傾けかちんと重ね合わせた。 健史の横顔をちらりと見る。以前日本酒バーで会ったときの、ヒヤッとするような鋭い感じがなくてホッとする。  私は行かない。そう何度も断ったのに、折角四人揃ったんだから少しだけでも来てよ。美貴と祐希くんには電話でそう口説かれ結局、中目黒にある小さなバーにつれてこられて、テーブルを四人で囲んでいた。 「俺、理名ちゃんと会うの超久しぶりだ。一年ぶり?

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ③

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ②

          「理名が、彼のことを大好きなのはよくわかったけど。それで? 謎の美人が気になるってどういうこと?」 「……うん。所属のゲーマーさんと一緒にいたにも関わらず、私にだけ聞こえるように、大介さんによろしくって言ってたの」  思い出してもため息がこぼれた私を見て、美貴が笑った。 「電話で聞いちゃえば良かったのに。あの女、誰なのって。会って顔を見て話を聞きたいなんて言うから、悶々とするんだよ」 「だって……。顔を見なきゃわからない。大介さんがどんな気持ちなのか。だから会うまで聞

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ②

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ①

          「この人が理名の新しい彼氏? ちょっと私の周りにはいないタイプだなあ」  大学時代からの一番の親友、美貴が、スマホで見せた大介さんの写真を品定めするようにじっと見る。以前行ったフレンチの店でとった写真。写真はあまりすきじゃない。そう言い張る大介さんに頼み込んで撮らせてもらったもの。穏やかに笑っている大介さん。お気に入りの写真だ。寂しいときや不安なとき、いつも見ていることは美貴には内緒。絶対からかわれる。   久し振りに二人でご飯でも食べようという話になり、目黒の洋食屋さん

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第12話 切なくさせる人 ①

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第11話 いとおしいひと ⑤

          「ごまかしてないよ? 本気で言ってる」 『……ずるいよ、大介さん。優しい声で、そんなこと言って。何も言えなくなるじゃないですか』  拗ねたような小さな呟き。もし目の前いたら、口を尖らせて俺をじっとみているに違いない。あの大きな瞳で。ぎゅうっと理名を抱き締めたくなった。けれど今は側にいない。だから代わりにそっと携帯に語りかける。 「いや。狡いとか狡くない、とかじゃなくて。本当にそう思ってる」  数秒の沈黙のあと。理名がはあ、と大きなため息をついた。 『大介さんて、そん

          【長編】とてつもない質量で恋が落ちてきた・第11話 いとおしいひと ⑤