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【15】選ばれるために、選択してきた人生だった
私は私の選択を、『選ばれるために』してきたのかもしれない。
***
小学6年生の時。
大好きな女の子の友達が2人いた。
彼女たちはとても明るくて、一緒にいると楽しくて、
男女関係なく盛り上がれるタイプのムードメーカーだった。
私は彼女たちと3人で過ごす時間が嬉しかったけれど、
次第に2人は、私以外の子と3人で過ごすことが増えていった。
ただ、私じゃないあの子と喧嘩をすると、
今までの空白の時間がなかったかのように、
楽しそうに私に声をかけてきた。
私が実は昼休みにひとりで図書室に通っていたり、
トイレでチャイムが鳴るのを待っていたことなんて、
彼女たちだけじゃなく、クラスの誰も知りはしなかった。
それでも私は、彼女たちに選ばれたかった。
2人があの子の気分の時、私はひとりで過ごし、
2人があの子の気分じゃない時は、私が一緒に過ごした。
あ、でもね、
6年生の秋頃から、たまたま図書室で会ったクラスメイトと意気投合して、
彼女たちとは離れられたってこともあったんだ。
その子といる心地良さと安心感を感じた時に、
どうして私は今まで彼女たちに選ばれたかったんだろう…
って馬鹿らしくなって、
そういえばこれは、記憶の中から抹消していたなぁ。
***
中学1年生の時。
両親から大きな告白をされた。
当時は、その事実を誰にも言ってはいけないとされて、
本当は抱えきれないものを必死に抱えながら
笑顔で悟られないように武装した。
だけど、結局選ばれなかった。
選ばれたのは、私じゃなかった。
悲しかったけれど、
もっと悲しんでいる人達が目の前にいたから、
悲しんでばかりもいられなかった。
泣いてわめきたかったけど、
泣いてわめいたって現実は何も変わらないことを知っていた。
勇気を出して本音を伝えてみても、
受け止めてくれる人なんてどうせいないんだと痛感した。
それからの人生は、本格的に、
『誰かに選ばれるために』
自分の言動を選択するようになっていたのだと思う。
***
それから私は大人になった。
成人式の翌年、21歳で結婚をして、22歳で母となった。
大人になり、妻となり、母となり、社会人となったのだ。
大人として批判されない言動を、
妻として選ばれ続けるための言動を、
母として認められるための言動を、
現代社会に適合するための言動を、
常に考えながら生きるようになっていった。
『自分が今どう感じたのか』
感情を味わいきる前に、
『自分が今どう振る舞ったらいいのか』
を考えるようになっていた。
***
長女が生まれてからは、
『相手が今どう感じているのか』に関して、
ものすごく敏感にセンサーが働くようになっていた。
幼少期からわりと敏感な方で、
人の気持ちや本音を感じ取りやすかったけれど、
産後のアンテナの張り方はえげつなかった。
泣き声や表情からも、相手の要望をくみ取ろうと必死だった。
分からない時には本を読んだり、ブログを読んだり、
子育ての正解を一生懸命に探し、試行錯誤してきた。
だんだん何かに頼らなくても、
自分の感覚を信じられるくらいになっていた。
ただし、その作業は実はとても労力のかかることだった。
疲れ果てて夫に甘えたかったけれど
夫が仕事で疲れ果てて帰ってきたら、
温かいご飯とお風呂を用意し、笑顔で夫の話を聞いた。
ひととおり話してスッキリした夫に
今度は私の話を聴いてもらおうと話し始めると、
夫は「へぇ。その話、長い?」とスマホを開いた。
「そっか。疲れているよね。ごめんね。」と
私は話すのをすぐにやめて、やっと寝た娘が起きないようにおんぶしながら、夫が食べ終わった食器を洗い始めた。
あぁ、この頃に戻れたらなぁ。
「私も疲れちゃったんだ。」って言えたら良かったのにね。
「旦那にこんなこと言われたんだけど!」ってママ友に愚痴れば良かったね。
どうしてあの時、物分かりのいい子になってしまったんだろう。
誰にも助けを求めなかったんだろう。
***
なんてね。
当時は無意識だったけれど、
今なら分かるよ。
過去の経験から、また傷つくのが怖かったんだと思うんだ。
選ばれなくなることが、怖かったんだと思うんだ。
嫌われてしまうくらいなら、
嫌われないための選択をする方がマシだから。
本音を口に出して、もしも受け止めてもらえなかったら、
もっと傷つくことを知っているから。
「相手の嫌なところじゃなくて、良いところを見よう!」
「相手は変えられない。変えられるのは自分だけ!」
「笑う門には福来る!よし、笑おう!!!」
何を言われても、
何が起きても、
ポジティブに、機嫌よく、笑顔で過ごそう!!!
そうやって飲み込んだ感情は、
積もり積もって、どこかに封印されていった。
***
それでもね、いつか気付く時がくるんだよ。
いや、『気付かされる時がくる』といっても過言じゃない。
私の笑顔の奥に潜んでいた悲しみや寂しさを
教えてくれた人がいて、引き出してくれた人がいて、
全部聴いてくれた人がいて、愛してくれた人達がいた。
ひとりだけじゃなくて、何人もの人達が関わってくれて、
時には通りすがりなのに親身になってくれたりもして。
少しずつ解放の扉は開いていき、
ある瞬間に気付かされたんだ。
あぁ、ずっとずっと、
『選ばれるために、嫌われないために、選択してきたんだ』って。
その瞬間、私はもう、
元の自分には戻れないのだと確信してしまった。
限界だったんだろうね。
涙とともに溢れ出したその想いを、
また体内に戻すことは難しかった。
怖いけど、もうその選択はしない。
これからは、
『自分が今どう振る舞ったらいいのか』
を考えるよりも先に、
『自分が今どう感じたのか』
って感情に注目するようにしていく。
***
まだまだ過去の思考癖がひょっこり出てくると思うけれど、
だんだん慣れていくんだと思う。
慣れていった頃には、
今の怖さや、選択基準は忘れていってしまうんだろうな。
周りの人達も、
私がこんなに注意深くてビビりで我慢強かった時代があったなんて、
信じなくなっていくんだろうな。笑
「え?この、もちゃちゃんが?!嘘でしょ?!笑」
って笑われちゃうんだろうな。
そんな未来が近いことも、
もう分かってるんだ。
だからね、
こうして変化の過渡期の今、
記録に残しておくよ。
いつかの私のために。
誰かの気付きのために。
今の私が、ブレないために。
***
まずは、起きたことに対しての
自分の感情や感覚を確かめてって、
そのうちね、
積もり積もってどこかに封印されている、
今まで飲み込んだ感情たちも
ひとつひとつ解放していこうと思う。
結構、地道で根気のいる行程だと思うけれど、
今まで抑え込んできた想いや、
無かったことにしてきた感情たちが
ふわっと消えていくように。
ひとつひとつ、
丁寧に見ていこうと思ってる。
この時間や経験を
必ず活かすと決めている。
というか、活かされちゃうんだろうな。
自然とね。
選ばれるための、
嫌われないための、
選択はもうおしまい!
大丈夫。
私なら、大丈夫。
あなたなら、大丈夫だよ。