最近読んだ本の話 vol.19
「最近読んだ本の話」の第19弾です。予想をはるかに上回る早さで梅雨入りしてしまい、ますます家にいる時間が長くなりそうですが、読書するにはいいんだろうか?今週も最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、アントニオ・タブッキ『他人まかせの自伝――あとづけの詩学』
パリのカフェの小さなテーブルで、ふと耳元によみがえった亡き父の声。それは夢で聴いた声であり、そこからある物語が生まれた──。現代世界文学の旗手として注目される著者が、自作を手がかりに創作の契機を綴ってゆく。フィクションと現実を行き来するように語られるエッセイは、それ自体ひとつの作品として豊かな味わいをもつ。 -Amazonより引用-
アントニオ・タブッキさんは、名前は聞いたことがあるけど読んだことはなかった作家さんです。小説を読む前にエッセイを読みました。気になることが数多く書かれてあって、「人間の声」の話だとか、「日記」や「書簡」の小説についてなど読みごたえがありました。実際に書かれた小説の創作秘話が書かれていると思って読んでいたら、「訳者あとがき」に次の言葉が書かれていました。
気の早い読者なら、タブッキ自身によって創作秘話が明かされるとでも合点してしまいそうな文章がならんでいる。〈中略〉
だが殊更に小説の虚構性にたいするこだわりをみせる作家にとって、小説作品の背後に潜む思想や逸話、風景や絵画や写真に音楽といった素材は、小説という器に虚構性を付与され顕在化されていないかぎり、存在しないに等しい。
私は気が早かった!創作秘話のようだけどフィクションでもあり、この本も手の込んだ創作なのだった。すごいなあ。
2、酉島 伝法『るん(笑)』
スピリチュアルと科学が逆転した、心の絆が生み出すユートピア・ニッポン! 結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続いていた。解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる。……「三十八度通り」 平熱は38度で、病気の原因はクスリを飲むこと。お祈りですべての病気を治す世界で繰り広げられる、誰もが幸せなディストピア。『皆勤の徒』『宿借りの星』で日本SF大賞を2度受賞した期待の星による、連作小説集。 -Amazonより引用-
酉島 伝法さんの新刊だ!と思わず手に取りました。「三十八度通り」「千羽びらき」「猫の舌と宇宙耳」の3篇が収録されています。「三十八度通り」を読み始めてすぐ、そのスピリチュアルな世界が普通になっている状態に怖ろしさを感じました。いや、でも私はよく「免疫力アップのために!」というような話を、家でも職場でもスタエフでもnoteでも話していたりするので、気を付けなくては!と少し思いました。酉島さんのセンスはすごいです。情報量の多さとその組み合わせのバランス感覚、圧倒されます。
3、ミュリエル・スパーク『ブロディ先生の青春』
ジーン・ブロディ先生は誇り高く、ロマンティックで生徒たちの憧れの的。授業は型破りで、校長とは反りが合わない。先生のお気に入り「ブロディ隊」も学院中から特別な目で見られた。ブロディ先生は二人の男性教師と親しく、多感な年頃のブロディ隊は、先生の恋と性に興味津々、想像を逞しくする。ブロディ隊であることは誇りであり、みな先生を崇拝していた。だが、先生の指導は次第にエスカレートし…。20世紀最高の青春小説、待望の新訳決定版! -Amazonより引用-
女子校を舞台にしたキラキラした青春っぽい話なのかな、と思い読み始めて、最初の方は確かにそうだったのだけど、途中からどんどん雲行きが怪しくなります。ブロディ先生を慕っていたブロディ隊の一人が、先生を裏切ることが早い段階で読者に知らされていて、それが誰なのかも明かされているので、彼女は何をするんだろう?と、不安を感じながら読み続けることになります。ブロディ先生は自分のお気に入りの生徒たちをすごく信頼していろいろなことを話したり、劇場に連れて行ったり、いい先生なんだけど途中からおかしくなっていくのか、元々そういう性格なのか、だからといって裏切られるのはなあ、と少し悲しい気持ちになりました。
今週も書くことができました。読むのはなかなか追いつかないですが、書くのは楽しいです。読んでいる途中で「このことを書こう」と思っていて書けたり、書けなかったりします。読むのを中断して書いてみればいいのかもしれません。今度試してみます。最後までお読みくださってありがとうございました。