最近読んだ本の話 vol.61
「最近読んだ本の話」の第61弾です。八重桜が満開になって、ツツジも満開に近づいています。そろそろバラが咲き始めるかもしれません。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、乗代 雄介『掠れうる星たちの実験』
サリンジャーの戦争体験と柳田國男の恋。終生秘められた「実験」の記憶から、文学への態度において不思議なほどに似通う二人が追い求めた〈生きた「もの」〉を透視する驚異の批評。
第162回芥川賞候補作『最高の任務』に続く〝阿佐美家サーガ〟の特異点「フィリフヨンカのべっぴんさん」を含む書き下ろし/単行本未収録の掌編9本(総120枚)、実感に向かって書くこと、〈生きた「もの」〉の痕跡が「残される」ことをめぐる書評28編を併録。 -Amazonより引用-
この本の目次を一目見て「めちゃめちゃ面白そう!」と確信しました。1編目は村上春樹さんの本が紹介されていて、私が最近読んだばかりの本だったので「ああっ!」と思いました。同じ本を読んでもこんなに感じ取ることは違うのだ、と今さらながらに思いました。2編目はサリンジャーの本の紹介で、その本は乗代さんの小説に登場していて読んでみたくなって読んだ本だったので、また「ああっ!」と思いました。
サリンジャーと柳田國男の共通するところが検証されていたり、様々な本の書評や、書き下ろし作品など盛り沢山の内容です。この本を読めてよかった!という気持ちと、私の知識が足りなさ過ぎて理解が追いつかないもどかしさを感じました。もっと読んでもっと考えないと!
2、パオロ・ジョルダーノ『天に焦がれて』
毎年夏になると、祖母が暮らす南イタリアのスペツィアーレで過ごす14 歳のテレーザ。ある日、祖母の家の近所に暮らす三人の少年と知り合い、テレーザは、そのうちの一人、ベルンに一目惚れする。夏休みのたびに彼らと遊び、17 歳の夏、とうとうベルンと結ばれる。だが翌年の夏休み、テレーザは祖母から、ベルンが他の少女を妊娠させたと聞いて──。
ベルンとテレーザの、20年にわたる愛憎と執着の物語。 -Amazonより引用-
読んだことのない作家さんだったので、興味を持って読みました。主人公の14歳のテレーザは、毎年夏休みに訪れるスペツィアーレにある祖母の家で、隣の農園に住む3人の少年と出会います。その内の1人・ベルンに一目惚れをして、毎年夏に隣の農園に出かけて一緒に過ごしますが、17 歳の夏とうとうベルンと結ばれます。翌年の夏休みにテレーザは祖母から、ベルンが他の少女を妊娠させたと聞き、ベルンを探しますが会うことができず、スペツィアーレを訪れなくなって…。その後15年の月日が経って、テレーザは3人の内の1人・トンマーゾから真相を聞く場面につながりますが、会えなくなって5年後にベルンとテレーザは再会して農園で一緒に暮らしたりもします。その農園では自然農法が行われていて、『わら一本の革命』という本が出てきて心臓が飛び出そうなくらい驚きました。その本を私に教えてくれた人のことを思い出して、この物語が他人事とは思えなくて、こんなに遠く離れた日本でそんな風に思う読者がいるなんて著者は思ってもみないだろうなあ。著者はどうしてこの物語を書こうと思ったんだろう?過去に出会った思い入れのある人がモデルになってるのかなあ、と気になって、他の作品も読んでみたくなりました。
3、島口 大樹『オン・ザ・プラネット』
「終わったのかな」「なにが?」「世界?」
同じ車に乗り込んだぼくら四人は、映画を撮るために鳥取砂丘を目指す。
注目の新星が重層する世界の「今」を描く、ロード&ムービー・ノベル。
「これからぼくらが話すことは、人類最後の会話になるかもしれない。
そうやって考えるとき、皆は何を話したい?」
記憶すること、思い出すこと、未来に向かって過去をみつけ直すこと。
現実と虚構の別を越えて、新しい世界と出会う旅。 -Amazonより引用-
不思議な語り口で、物語の中の現実と虚構は境目があいまいで、こんな風にはなかなか書けないです。どういう物語になっていくんだろう?と興味を持って読み進みました。主人公の思考が次から次へと移り変わっていって、その過程が丁寧に描写されていますが、私が考えるのが追いつきません。後半に著者が登場します。え?そういうことだったの?と思ったりしながら、独特の世界に迷い込んだみたいな、でもこれが現実であってもおかしくないような、不思議な体験ができた物語でした。
今週は「最近読んだ本の話」を書くことができました。最近なかなか読むのが進まないのですが、ゆっくりでもぼちぼち読んで書いていきたいです。最後までお読みくださってありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?