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籠の鳥

私きょうは眠らなかった。
5限で飛ばされた記憶をたぐる。

揺れる朝陽に灯されて歩いた通学路、髪に絡まる風、動かない時間、変わらないでいてほしかったのは私、冷たくて、おもいだした一月。

歩道橋は飛び降り防止のためか網で囲われていて、私は籠の鳥になった心地で空を見上げた。
格子を抜けた夕焼けはゆらゆら燃えていた。

またね、を残して背を向けた笑顔の行方が、ずいぶん後になって頭をかすめた。

空を見上げて地の確かさを踏みしめる。 

本当のところ、鳥にもなれない私なのだから

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